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おめでとう

明日から高校生活がはじまる


期待していないと言えば嘘になるが、

それ以上に漠然とした不安が大きいのも

また事実


果たして自分は

新しい環境に適応出来るのか


陰キャ、コミュ障、

俗にそう言われる類に

含まれていることの自覚はあるが


それだけではない

何かメンタルの病ではないか、

そんな風にも最近は思えて来る



そう言えばついこの間、

高校の合格発表があったばかりなのに


こちらは長い間、

受験勉強に時間を費やして来たというのに

合格が決まってから入学までは

あっという間、

あまりにあっけない


こちら側の労力、かけた時間と

決まってからの時間に大きな落差を感じる


真剣に取り組んで来たこちらに対して

向こうはあくまで事務処理と言う事なのだろうか



高校の合格発表があった日、

合否の結果を中学校に

報告しに行かなくてはならなかった


静かな三年生の校舎、

おそらくまだ誰も登校して来ていないのか、

それとももう個別に報告を終えて

順次とっとと帰って行ったのか


いつもの教室


誰もいないのかと思い

開いている前の扉から中を覗き込むと

そこには三人組みの女子グループが居た


俺はそいつらのことが好きではなく

向こうもまた俺のことを好きではないだろう

そういうのはお互いに分かるものだ


中学生のくせに妙にませていて、派手で

大学生の彼氏でもいそうなタイプ


私生活では化粧をしていると噂だし

こいつらはいわゆるビッチだろうと

俺は内心決め付けていた


それでも俺も高校に受かったばかりで

浮かれていたのかもしれない



「おめでとう」


そう聞こえたので

俺はつい返事をしてしまった


「……あ、ありがとう……」


しかし、それは当然

俺に向けられた言葉ではなく

後ろの扉から教室に入って来た

クラスメイトの男子に向けられたもの


当然、女子三人組みは

こちらを見てキョトンとした顔をしている


俺は恥ずかしさのあまりに

そのまま何も言わず

足早にその場を後に立ち去った


自分でも顔が熱くなっているのが

自覚出来る程に恥ずかしい



なぜこの女子グループから

自分が「おめでとう」と言われると思ったのか?


普段露骨に嫌っている態度をみせていたのだから

そんな祝いの言葉が贈られるはずはないのに


そんな相手すら祝福してくれるような

本当は根が優しい女子だとでも思っていたのか


普段は敵対していても

こういう時はお互いに

祝福し合うものだとでも思っていたのか、

そんなに優しい世界だとでも思いたかったのか


そもそも俺は、誰かに祝われたかったのか

誰かに「おめでとう」と言って欲しかったのか

否、誰かにではなく

みなに「おめでとう」と言って欲しかったのか



明日は高校の入学式だと言うのに

そんなことばかりが頭を過る

まるで過去に生きているかのように


いつもそうなのだ


これまでの人生、

少なからず楽しいこと、

嬉しかったことだってあったというのに、

そんなことはこれぽっちも思い出せない


いつも記憶に蘇るのは

失敗した時のことばかり

嫌な思い出ばかりなのだ


なぜあんなことを言ったのか?

なぜあんなことをしたのか?

思い出しては恥ずかしくて

憂鬱になって死にたくなって来る


過ぎたことをいつまでも

くよくよ悩むなという人もいるが、

それも少し違う


別に悩んでいる訳ではなくて

勝手に脳裏に蘇って来るのだ


取るに足らない些細なことに限って

忘れたくても忘れられない



これは、本当に何も起きることなく、

ただ時間だけが積み重なって、

灰色に塗り潰されて行く

残酷な物語。


そう、症状を詳しく話すから……

もし知っている人がいるのなら


この拗らせた病気の名前を

誰か教えてくれないか?






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