第八話 「ダンバー武道祭」
補足 魔石は二百万〜五百万コインとお高いが、持っている人は多い。
ゼルは、ダンバー武道祭の会場のコロシアムに到着した。受付が三名いる。コロシアムは出場者と観客で相当賑わっていた。
「この大会に出場したいんだけど。」
受付の女性に話し掛ける。「それでは、この用紙に氏名、年齢、出身地をご記入ください。」
ゼルは言われた通りに書きこんだ。
「それから、こちらの誓約書にもご記入をお願いします。」
「誓約書?何の?」
「この大会では、負傷者はもちろん、ごくまれに死者も出るんです。私達、主催側は責任を一切負いかねますので、責任は自分でとる、という旨の誓約書です。」
やはりおかしい。
何故彼女は、こんな危険な大会に出場するのだろうか。
「書いたよ。」
「はい、確認致しました。ライブ島出身のゼル様ですね。第二控室で待機していてください。じきに係の者が伺いますので。」
ゼルが控室に入ったのを見計らって、受付の女性は、どこかに電話をかけた。
「・・・もしもし。ダイオ様ですか?・・・はい。確かに書類にはゼルと書いてあります。本人で間違いないかと。はい、お待ちしております。」
女性は、笑みを浮かべた。
第二控室。ゼルが入ると、既に十数名の出場者達が、待機していた。
「おい、ガキ。なんだその格好は。ここは遊び場じゃないんだぜ。」
一人の男が、話しかけてくる。
確かに、控室の戦士達は、全員、鎧などの戦闘に適した格好をしている。
「よろしく。俺の名前はゼルっていうんだ。悪いけど、今回の優勝は俺が頂くぜ。」
それを聞き、男は、眉間にシワを寄せた。
「俺は、お前みたいなタイプのガキが一番嫌いだ。もし、お前と当たったら、骨も残らないくらいに叩きのめしてやる。」
「おっちゃん。それは俺のセリフだぜ。」
そう言い終えた瞬間、係の男性が入って来た。
「え〜と・・・。ガーバ様とゼル様、試合の準備をお願いします。」
ガーバというのは、今さっきまでゼルと話していた男のようだ。
「へっへっへっ。一回戦の相手がこんなガキとは、俺もついてるなあ。」
会場には、たくさんの観客が訪れていた。もしかしたら、ゼルの出身地、ライブ島の総人口より多いのではないだろうか。
「それでは、次の試合を始めます!!」
審判が叫ぶ。
「続きまして・・・。ダンバータウン出身、ガーバ選手対ライブ島出身、ゼル選手の試合です。」
「ガーバって毎回ベスト8にのこってる奴だろ?」
「なんだあのガキ・・・。あんなひょろひょろの体じゃ、五秒も持たないな。」観客は口々に叫ぶ。
「分かっているとは思いますが、魔石等の使用は自由ですので。・・・・・・試合開始!!」
審判がそういった瞬間、両者は手に握っていた魔石を発動した。
ガーバの武器は、巨大な斧だった。
「がはは!!これが俺のゴールデンアックスだ!!お前の魔石は、使い手に似て、華奢な武器だなあ。」
「御託はいいから、かかってきなよ。あんまり吠えると、弱く見えるぜ。」
ガーバの脈が、浮き立つ。「そんなに死にたいのかあ!」
ガーバは斧を振る。
しかし、ゼルのレオ(鎖鎌)の鎖が斧に巻き付き、動きを止めた。
慌ててガーバは斧を引こうとするが、ぴくりともうごかない。
「!!馬鹿な!!俺の超怪力でも・・・。」
「終わりだぜ、おっさん。」
レオは炎を放った。ゴールデンアックスは次第に赤くなっていき、熔けた。
「馬鹿な!!魔石が熱で溶けるなんてことが・・・。」
レオは、ガーバの顔をおもいっきり殴った。
ガーバはそのまま、地面に倒れる。
「・・・。え?えーと、ゼル選手の勝ち!!」
審判もにわかには信じられないようだ。
一気に歓声が上がる!!
「すっげー!!何なんだあのガキ!!」
「・・・ま、まぐれだろ?あんなガキが、ガーバを倒すなんて、ありえねえ。」
「それでは、ゼル様。まだ次の試合まで時間がありますので、再び控室で待機していてください。」
しかし、ゼルはあの少女の事が気になったので、別のブロックの試合も見に行く事にした。
隣のブロックに彼女はいた。彼女の試合は今終わった所のようだ。
「ナーバ選手対ルーナ選手の試合・・・。ルーナ選手の勝利です!!」
ルーナ。それが彼女の名前のようだ。
「ひっこめ〜!!」
「魔女がこの神聖な祭にでるな〜!!」
ブーイングの嵐。相当嫌われているようだ。
「なあ、いわれっぱなしでいーのか?」
ゼルはルーナに話しかける。
「あなた・・・。この大会にでてたんだね。」
ルーナはゼルを睨みつける。やはり、相当嫌われているようだ。
「わたしは、あなたを許さない。もし、あなたと試合で当たったら、殺すつもりでやるから。」
そういってルーナは去って行った。
やはり、彼女の憎しみを解くには、まだまだ時間がかかるようだ。
次回 準決勝戦