第六話 「少女」
もう一人の主人公、ルーナの初登場です。心情の変化を、上手く表現出来るように頑張りたいです。
ダンバータウン。機械の開発に力をいれており、近代的なイメージがある一方、街の外れは廃れており、怪しい雰囲気をかもしだしている。
ダンバータウン西部。そこには、誰も訪れようとしない森があった。その森には、かつて世界を滅ぼそうとした、破滅の魔法使いの末裔がいるとの噂になっていた。
これは、ゼルが到着する、八年前のこと−
一人の青年が立っていた。片手には、ムチのようなものが握られている。そのムチが、白い光を放った。 光は、近くの大木までのびていき、命中した。ミシミシと言う音を立て、大木は倒れて行った。
「すご〜い!お兄ちゃん♪」近くにいた七、八歳位の少女が青年に話しかける。二人とも、茶色がかった髪に赤い瞳だ。おそらく兄妹なのだろう。
「さっ。ルーナ。帰ろうか。夕飯の支度をしなくてはいけない。」
歩きながら、少女は兄に聞いた。
「お兄ちゃんって、なんでいつもムチのお稽古してるの?」
「俺達の先祖が、すごい人だってのは、知ってるだろ?その人達が果たせ無かったことを、一族が果たさないといけないんだ。このアリエスの後継者がね。」
「よく分かんないけど、お兄ちゃんもすごい人なんだね、♪」
少女は、ニッコリと笑う。「俺は、レオって人の子孫が来たら、一緒に闘いの旅に出ないといけない。きっと厳しい旅になる。その時は、悲しいけど、お前と別れなければならない。」
「わたしも一緒に行く!!あの力を使えば、わたしだって、強いもん!!」
青年は、少女を抱き上げる。
「ルーナは優しいんだね。俺は、出来ればお前には普通の暮らしをさせてやりたい。普通に、街で暮らせるように、してやりたい。レオの子孫が、来てくれさえすれば・・・。政府を倒せさえすれば・・・。」
「いいよ。お兄ちゃん。この森で、お兄ちゃんと一緒に暮らせれば・・・。」
少女の名はルーナ。魔石研究員の一人、アリエスの子孫だ。ダンバータウンの森で、兄のカヤのと二人で暮らしている。彼等は、街の人から迫害を受けているため、人が訪れることの少ない森に住んでいるのだ。魔石研究員は、政府の罪の押し付けにより世界を滅ぼそうとした魔法使いとされ、辛い思いをしてきた。しかしカヤは、それを自分の使命と考えていた。
兄妹の住んでいる小屋からは、おいしそうな匂いがする。カヤが料理を作っているのだ。
「お兄ちゃん。レオの子孫っていつくるの?」
「ほら。やっぱり普通の生活が送りたいんだろう。」カヤは笑った。
「ち、違うもん!!ただ、ちょっと気になっただけだもん!!」
ルーナは口をぷくーっとふくらませ、むきになって反抗した。
「いつ来るんだろう・・・。おじいちゃんの代も、父さんの代も来なかった。しかし、近い将来来てくれると信じているよ。」
「どーゆー人何だろうなあ。楽しみだなあ。」
不意に、玄関の方からノックする音がした。ここを誰かが訪れることはまず無いので、二人は驚いた。カヤは扉を開ける。
そこには、小太りでスキンヘッドの男が立っていた。「あんたがアリエスの子孫かい?」
「失礼ですが、あなたは誰ですか?」
「オイラが誰だろうと、あんたにゃ関係ないだろ。オイラは、あんたの持つ救世の魔石を頂きにきた。」
「なるほど。政府の人間か。ルーナ!!アリエスを投げろ!!」
「ほう。素直だな。渡してくれるのかい。」
「そんなわけあるか!!」
カヤは、魔石の力を発動する。みるみる魔石は、ムチへと姿を変えていく。「なんだよお。闘うってのか?言っとくけど、オイラはつえーぞ。」
カヤは、ムチを振った。 白い光が男にヒットする。「なるほど。雷のムチか。それがアリエスの力。だがオイラにはきかねえ。こんな時のために、帯電スーツを着ているからな。それにオイラの相撲の技が加われば、最強だ!!」
「なんだ・・・。魔石すら持たせて貰えないしたっぱなのか。」
「ふふふ・・・。オイラにはこの素晴らしき肉体がある。魔石など必要無いのだよ。」
再び、カヤはムチを振る。「きかん!!」
男は叫んだ。しかし、ムチは雷を発さず、男の腹に当たった。
「ふっ。僕も、効かないと分かっている技を何度も使うほど馬鹿ではないさ。効かないと分かっていれば、それなりの闘い方がある。」
「お・・・の・・・れ・・・。」
男は意識を失った。
「さあ!!行こうルーナ!!コイツより強い奴が来る可能性がある。今日は、離れた所で野宿だ。」
「うん。分かった。」
ルーナとカヤは、手を繋いで走って行った。
しばらく歩いた所で、カヤは立ち止まった。
「どうしたの?お兄ちゃん。」
そこには、男が立っていた。その男は、とても悲しい目をしていた。
「お前も政府の人間か?さっきの奴より、比べものにならないほど強いようだが・・・。」
「我が名はホーク。貴様の持つ救世の魔石を頂きに来た。」
「お兄ちゃん・・・。あの人・・・怖い。」
「大丈夫だから、少し下がってろ。」
カヤがアリエスの力を発動しようとした、その時だった。
血が飛び散る。カヤは、地面に倒れていた。
「え?お兄ちゃん?」
ルーナは、カヤの所にかけよる。
「お兄ちゃん。ねえ!!お兄ちゃん!!」
「無駄だ。心臓を狙った。」「うわあああああん!!」
ルーナは大声を出して泣いた。
「俺は、任務に無い殺しはやらん主義だ。生きれただけでも、幸運と思え。」
そう言って、ホークは去っていった・・・
これが、八年前の話。
その後彼女は、ゼルとの出会いによって運命が変わっていく・・・
次回 二人の出会い(今回、前回の予告と違う話になっちゃいました。)