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第五十八話 「激突四 死者の街」

この世界には、ラジオやテレビ、映画等は存在します(テレビ、映画に関しては白黒の物が多いですが)。今回少しだけそのことに触れたので、補足しておきました。

ゼルはゆっくりと目を開ける。

頭がぼおっとして、意識がはっきりしない。


自分の身体がロープで縛られているのに気が付くまで、少し時間がかかった。


「何だよ、これ・・・。」


辺りはごつごつした岩が一面に広がっている。

壁と壁の幅は狭く、洞窟の入り口と同じくらいだ。


「一体、ここはどこなんだ?」


ゼルは何とかズボンのポケットに手を入れようとした。

ポケットに入っているレオを使えば、ロープを解くことが出来るだろう。


身体をくねらせて、何とかポケットに手を入れることに成功した。


「え〜と・・・。」


ポケットの中を探す。


「・・・あれ?無い!」


ポケットの中には何も入っていなかった。


「そうだ!ザクロ老師との闘いでそのまま気絶したんだっけ・・・。」


ゼルの額を汗が流れた。


恐らく、ザクロ老師に敗れた後、誰かにここまで連れてこられたのだろう。

最悪、レオはあの場所に放置されている可能性もある。


「くそっ!レオがねーと、どうしようも無いじゃねーか。」


ゼルはロープを岩に擦りつけて、何とかほどこうとした。

しかし、結び目は固くそう簡単にいく物では無い。


足音が聞こえる。

次第にこちらに向かってきているようだ。


(誰だ?俺をここまで連れて来た奴か?)


誰かがこちらに向かってくる。

顔がだんだん認識できるようになるにつれて、ゼルの血の気は引いていった。


「っ!ぎゃああああああああ!」


ゼルは叫ぶ。

こちらに向かってきた人物は、思いも寄らぬ姿をしていたからだ。



ホラー映画などによく出てくるゾンビ。

ゼルの所まで来た人物は、まさにゾンビそのものだったからだ。


「・・・っ!」


ゼルは、ホラー映画が得意な方では無い。

暗い部屋で一人で見るなんて絶対に出来ないタイプだった。


そんなゼルの前に、ゾンビが現れたのだ。

もう一回気絶してしまいそうだった。


「・・・まあ、驚くのも無理は無いか・・・。こんな姿ではな。」

ゾンビは悲しそうな顔をして、呟く。


「っ!てめえ!な、な、何なんだ!」

ゼルは恐怖で上手く舌が回らない。

初対面でいきなりゾンビに話しかけられるのだから、相当な勇気だが。


「ワシの名は、エスデ。このクラムス洞窟内にある、死者達の街、ラクドの長じゃ。」


ゼルは、耳を疑った。

「死者達の街って、まさか・・・。」


「ああ。人口は七百人程。ワシと同じ姿をした者達が暮らしておるよ・・・。」

ゼルは、吐きそうだった。

「ゾンビって・・・、本当にいるのかよ。」


ゾンビのエスデはニッコリと笑う。

とても死者とは思えない。

「ああ。生前、何かを成し遂げられなかった者達の強き魂は、死してなお、現世に留まる。この洞窟は色々な要因があり、死者の魂が集まりやすいのじゃ。」

エスデはしんみりと言う。

「何かを成し遂げられなかった・・・。」


「ああ。ワシは、政府に家族を殺された。酔っていた兵士にナイフでな・・・ワシは、その後反政府組織に入った。家族の敵を討つために・・・。」


「そうだったのか・・・。」

どうやら、このゾンビは悪者では無さそうだ。


「ワシは死んだ。十八年前の三月十二日に・・・。ワシは悔しかった。このまま何もできないまま死んでいくのか・・・。」


「・・・。」


「ワシの肉体は滅んだが、魂は消滅しなかった。むしろ、死ぬ前より強くなっていた。ワシは魂だけで世界を回った。どこへいっても政府が関わる争い事ばかり。その末に辿りついたのがこのクラムス洞窟なのじゃ。」


ゼルはエスデの話を聞きながら、決意していた。


もう、このような人々は出さないようにしよう・・・。


そのためにも、早くこの闘いを終わらせなくては。


「ワシは、それからここで死者による反政府組織を立ち上げた。全ては、君達のような政府の人間に罰を与えるために。」


「は?今、何て?」


ゼルは聞き間違いかと思った。

今、エスデはゼルが政府の人間だ、というような事を言った気がした。


「だから、君達政府の人間に罰を与えるのだ。」


やはり、聞き間違いでは無かった。


「ちょっと待てよ!アンタ勘違いしてるぞ!俺は政府の人間じゃねえ!」


エスデは、ゼルを睨む。

先程の笑顔が嘘のようだ。

「嘘をつくでない。もし君が政府の人間で無いというのなら、こんな物を持っているはずが無かろう・・・。」


エスデはゼルに何かを見せ付ける。


それは、レオだった。


「お前が持っていたのか・・・。」


「ワシは救世の魔石を知っている。これは普通の魔石では無いだろう。ほとんどの救世の魔石は政府の手に渡っていると聞いたからな。」


「それは俺のじーちゃんがくれた物だ!」


ゼルは必死に反論する。


ゼル自身が敵であるはずの政府の人間なのではないかという疑惑をかけられているのだ。


「仲間達もすでに捕らえた。その内の一人も救世の魔石を持っていたからな。ますます怪しい。」


「そいつはランジっていって、反政府組織のメンバーなんだ!」


エスデはため息をついた。

「いまいち信用できんぞ。君達の処遇は明日までに決める。覚悟しておくのだな。」



シャッターのような物がゼルとエスデの間に降りくる。


ゼルは牢屋に閉じ込められる形になっている。


ゼルの叫びも届くことは無く、エスデは姿を消した・・・。


次回予告 罰

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