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第五十七話 「激突三 実力の差」

「これでどうだあ!」


レオの炎がザクロ老師の身体を包む。

「ぐおおおおお!」

ザクロ老師の身体はすでにボロボロだった。


「パイシーズの真の力見せた方がいいんじゃねーか?このままだとあんた、確実に負けるぜ。」

ゼルは余裕があった。


恐らく、この老人はジョーカーより弱いのだろう。


しかし、ザクロ老師の顔は、いたって冷静。

今の状況が予定調和だと言わんばかりだ。


「・・・よかろう。後悔しても知らんぞ。パイシーズの力。」


ザクロ老師は地面にパイシーズをめり込ませる。


次の瞬間。


パイシーズは光輝いた。

ザクロ老師の身体も輝き出す。


(大地からの力・・・。)


心の中に響く声。

恐らく、これがパイシーズの声なのだろう。


地面に突き刺さったパイシーズは、一本の木へと姿を変えた。


「これが、パイシーズの本当の姿じゃよ・・・。」


ゼルはあまりの衝撃に立っているのがやっとだった。

ザクロ老師の身体からは信じられないほどの魔力があふれ出している。

先程までのザクロ老師からは感じられなかった力だ。

「どういうことだよ・・・。」

ゼルには何が起きたのか分からなかった。


「パイシーズには地面から、あらゆる力を吸収する力がある。その力をワシに伝達しているのじゃ。つまり・・・」


ザクロ老師が右手をかざすと、すさまじい炎が発生した。


「いくら力を使っても疲れることは無いのじゃ。」


ゼルはザクロ老師と距離を置いた。

(やべえ・・・。コイツ、魔法を使えるのか!)


一瞬にして、ザクロ老師の周りは火の海と化した。


ゼルも、炎の中へと飲みこまれていく。


「がははは!愉快、愉快!救出の魔石を持っていようが、貴様は所詮経験の浅いガキなのだ!」

ザクロ老師が大きな笑い声をあげた時!


炎の中から何かが飛び出した。


「なるほど・・・。炎には炎で、か。」


ゼルの身体を、レオの炎が包んでいた。

火傷などの外傷は一切ない。


「まさか、これほどの魔法が使えるなんて思わなかったぜ。だけど、レオの炎なら、そんなものは関係ないな。」


ザクロ老師は両手を前に突き出す。

「ほう・・・。そうかね。ならば、これはどうだ?」

両手から発生する炎。


徐々に大きくなっていき、形が出来ていく。


それは龍。

炎は龍の姿になった。


「なんだ・・・。それ。」


「これが、パイシーズの素晴らしい点の一つ。魔法を生物の形に変化することが出来るのじゃ。」



ザクロ老師を除いた政府の一行は、何も無い一本道を進んでいた。


「・・・どうやら、こちらが安全な道だったようだな。」

ホークは呟く。


「そういえば、お前の部下の少年は、どうしたんだ?見当たらないが。」

ミリーは、辺りを見回しながら、そう言った。


確かに、少年は消えていた。


しかし、ホークは黙って前へと進み続ける。


「迷子になった子供など、気にかけている暇は無い。先へ進むぞ。」



「ひゃ〜っはっは!厳しいねえ。ホークさん。」


そこには、青髪に右目に眼帯をつけた男が立っていた。


八光の一人、カイザン。

ジョーカーの親友だった男だ。

ジョーカーを殺したリデューや、そのきっかけとなったゼルを憎んでいる。


「総帥が待っている。封印を解くのは、お前の得意分野だろ。」


「本当に、その封印を解けば総帥の力は完全となるのか?」

ホークは目を細める。


「ああ。そうすれば、あの方はさらに強くなる。」

カイザンは何度も首を縦に振った。


一瞬、空気が震えた。


「お?ザクロのじーさん、パイシーズの力をフルに使っているな!」


ホークはため息をついた。

「この洞窟、崩れないだろうな?何にせよ、レオの少年は死んだか・・・。」




ゼルは、何が起きたのか分から無かった。

上手く呼吸が出来ない。


「どうじゃ?思いしったじゃろ。実力の差を。」


ゼルは身体を必死に起こそうとするが、指一本動かせない。


「拍子抜けじゃの。ジョーカーを倒したと聞いたから、どれほどの強者かと思ったが・・・。」


ザクロ老師は、歩み始める。


「その傷では、まず助からないであろうな。放っておいてもじきに死ぬ。」


ザクロ老師の姿は消えた。



ゼルは、夢を見ていた。


ベッドに二人の赤ん坊が寝ている。


「これが、パルナ様の残したお子様ですか。」


二人の男が赤ん坊の寝顔を見ながら話をしている。

一人はゼルの祖父・レオだ。


「ああ。」

三十代くらいの男性が、頷いた。

髪の色は黄色。

整った顔立ちだ。


「可哀相なのは弟のこの子だ。鬼の力を受け継ぎながら、一族に生きられぬのじゃからな・・・。」


男は、涙を流した。


二人の赤ん坊は、これから自分達に降り懸かる運命を知る由も無く、無邪気に眠っているのだった。




複数の黒い影が、ゼルに忍び寄る。

「・・・ひどいケガだな。このままでは命に関わる・・・。」


「先程の奴らの仲間かもしれん連れていけ。」


ゼルは抱え上げられ、どこかに連れていかれる。


次回予告 連れていかれた先

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