第五十話 「封印された力」
そろそろ、話を急展開させていこうかと考えています。ただ、終わる予定は全くありません。ラストは一応考えてありますが、そこまでいくにはかなりの時間がかかると思います。どれくらいかかるか分かりませんが、これからもよろしくお願いします。
赤い皮膚。
いつものゼルは消え、悪魔のような姿をした人間が立っている。
「キサマ、魔石を隠し持っていたのか!どのような魔石だ!」
アルフォンは羽を広げ、突進してきた。
羽に触れてしまえば最後、身体をばらばらに刻まれてしまう。
しかし、ゼルは臆する事なく羽を掴んだ。
「な・・・んだと!」
ゼルはそのまま羽を引きちぎった。
「まだ、この身体に慣れてねえんだよ!技の練習台になってくれ!」
それは、いつものゼルの声では無かった。
(まさか・・・これは伝説の・・・。)
アルフォンには、この現象について思いあたる節があった。
伝説の四聖獣。
ある一族のみが操る事が出来る神獣だ。
伝説によると、一族の長に値する四人が体内に四聖獣を封印することでその力を使えるようになるらしい。
今のゼルの状態は四聖獣の一体、赤鬼の力を使用した状態に酷似している。
「お前は何者なのだ・・・、あの話は伝説では無かったのか!」
羽を失ったアルフォンは闘う術が無い。
敗北を認め、死を覚悟していた。
「俺は赤鬼。一時的にコイツの身体を借りている。」ゼルは低い声で話す。
「・・・俺を殺すか。」
アルフォンは身体を広げ、攻撃が来るのを待った。
「殺さねえよ。」
「え?」
意外な返答にアルフォンは困惑した。
「俺は殺しはしねえ。これでも神の使いなんでな。」ゼルはそういいながらアルフォンに手をのばした。
ゼルは、闇の中にいた。
進めども進めども、出口は見えない。
ここがどこなのか分からないが、前にも来たことがある気がする。
(ゼルル・・・。今回は魔石も無くさすがにやばそうだったんで助けてやった。お前はレオの力だけでは無く、俺の力も学ばなくちゃならねえ。)
心に響く声。
最初はレオかと思ったが、違うようだ。
(お前は誰だ?)
ゼルは声の主に尋ねる。
(それを知りたくばクラムス洞窟に向かえ。そこで、お前の真実を知る人物との出会いがある。それが神からのお告げだ。)
(何で、今教えてくれないんだよ!)
(自分で探さなくては、意味が無い。いいか。今、世界は混沌に近づいている。それを止められるのは、お前だ。)
(意味分かんねーよ!混沌ってのは政府に関係あんのか?)
少しして、再び声がした。(いや、政府よりもっと恐ろしい。)
(それって一体・・・!)
(あまり長時間ここにいるのは良くねー。話が出来るのは、ここまでだ。次に会うのはお前が全てを知ってからだ!)
ゼルは目を覚ました。
部屋は、散乱している。 正面にはアルフォンがいた。気絶している。
(一体何があったんだ・・・。それに、今の夢は・・・。)
分からない事だらけだった。しかし、声の主は一体何を伝えようとしていたのだろうか。
「はっ!忘れてた!オッサンを追わねーと!」
ゼルは勢いよく部屋からでていった。
ウルフは馬に角が生えた生物に乗り、ゆっくり進んでいた。
「あっ!やべえ!ランジから救世の魔石奪うの忘れてた!」
ウルフは頭を掻きむしる。
「ま、いいか。後で取りに行けば。」
突然、ウルフの前に二人の人間が立ち塞がる。
バリーとルーナだ。
「・・・二人だけか?何百人とか連れて来ると思ったが。」
「君だってたった一人。私とルーナさんだけでも大丈夫だと判断したんだよ。」バリーは言う。
「お前達馬鹿じゃねえか?俺はお前達のチーム最強のランジを倒したんだぜ!」ウルフは大笑いしながら、馬から降りた。
三人はほぼ同時に魔石を発動する。
「・・・、武器が現れないということは何か特殊な能力を持った魔石ですね、バリーさん。」
ルーナは言う。
「ああ。どんな力か分からない以上は、うかつに近づかない方がいいな。」
バリーはダガーを構えながらウルフと距離を置く。
「とりあえず、君のムチで攻撃してくれ。」
バリーはルーナに耳元で囁いた。
ルーナは指示通りにムチを降る。
ムチはウルフの顔面に命中した。
しかし、ウルフは無傷。
「コイツが俺の魔石の力だあ!」
ウルフはムチが当たった所を掻く。
(どういうこと?確かにムチは命中したのに・・・。)
バリーは再びルーナの耳元で囁いた。
「今度は僕が飛び掛かるから、隙をついてムチを頼む。」
「な・・・、危険すぎます!それなら私が・・・」
ルーナが言い切る前にバリーはウルフに飛び掛かった。
ウルフはバリーの腕を掴む。
「ぐあっ!」
バリーの腕は金になっていた。
(何かを金にする力!それで私の攻撃を防いだんだ!それなら・・・!)
ルーナはムチに電撃を放ち、投げる。
今度もムチは、ウルフの顔面に当たった。
ウルフの身体を電気が流れる。
(やった?)
しかし、ウルフは無傷。
「惜しかったなあ!物理攻撃がだめなら属性でっつー着眼点は良いんだけどよお!俺の金の技に雷は無効なんだよ。」
ウルフはバリーの身体を投げ飛ばす。
バリーは地面にたたき付けられた。
両足も金にされてしまったため、うまく動けないのだ。
バリーはウルフの背後を見て、合図をするかのように片手を上げた。
そこには、数十人の天空騎士団の隊員。
一斉に持っていた銃を発射した。
全弾命中。
「やったか・・・?」
しかし、ウルフは生きていた。弾が命中した背中は金になっている。
「二人で来たって、嘘だったのか。不意打ちなら、何とかなると思ったか?あてが外れたな。身体に何かがぶつかれば、自動でその部分は金になる。ほんの一瞬で変換できるから、最小限のダメージですむのさ。」
ウルフは大声を出して、笑う。
ブルー教の教祖、ウルフ。かつてない強敵に、どう立ち向かうのか!?
次回 まだ、ウルフの話が続きます。