第四十五話 「ゼル対リデュー!?」
今回、予想外の方向に話が進みます。
「おい、レオ!相手は救世の魔石だぜ!力を貸せ!」ゼルはレオに語りかける。
(相手は、リーブラのじいさんか。いいだろう。力貸してやらあ!)
炎の足。
炎の爪。
獅子から発する炎はゼルの身体に融合した。
この状態になると、身体能力が著しく上昇する。
「コイツにジョーカーは手も足も出なかった!もう、お前に勝ち目は無いぜ!」
リデューは冷笑した。
「力の差を見せてやる。」
リデューは剣を構える。
(おい、レオ!アイツの時間操作は厄介だぜ!どうするんだ?)
(大丈夫だ。あの力は、一度につき、一つの物体しか時間操作出来ない。つまり、連続攻撃は通用するって事だ!)
ゼルはレオの指示通りに鎖鎌を投げる。
「前に闘った時から進歩してねーじゃねーか。」
鎌は二つに分裂した。
「何!?」
さすがのリデューも驚きを隠せないようだ。
「焔龍。」
二つに別れた鎌はそれぞれリデューを切り裂いた。
驚いて、時間操作をするタイミングを失ったようだ。
「んだよ、呆気ない。コイツが俺が倒したかった男か?」
リデューは剣を強く握りしめる。
「うるせえよ。俺は実力の半分も出してねえ。」
リデューは剣を振り下ろした。
ゼルは、それを炎をまとった腕で防いだ。
「肉弾戦といくか。」
ゼルの拳がリデューの腹に入る。
「ごふっ。」
リデューが呻き声をあげて後ずさる。
そこにすかさず二撃目が入った。
「がはあっ!」
リデューは膝を地面につける。
「どうだ。これが俺とお前の力の差だ。」
リデューはそのまま地面にたおれた。
(?何だ・・・。いくら何でも呆気なさすぎねーか?)
リデューはピクリとも動かない。
(おい、ガキ。コイツリーブラじゃないぜ。)
レオは言った。
(何?それじゃあ、コイツは・・・。)
リデューの身体は煙に包まれていく。
「やはり、気付かれましたか。」
女性の声がする。
煙が晴れると、そこに倒れているのはリデューでは無く、木でできている人形だった。
「な・・・何だこれは!」
ゼルは何が起きているのか理解出来なかった。
「それは、私の魔石によって動いていた仮のリデューさんにすぎません。」
ゼルやルーナと同じくらいの年齢の少女が立っていた。
「はじめまして。私の名前はミカンです。」
ミカンと名乗る少女は笑みを浮かべる。
「私の魔石はドール。人形を自由に操れる力です。そして今のは、憑依人形。人形の中に、リデューさんの魂が入っていたのです。人形の身体では、ランジさんは倒せても、ジョーカーさんを倒したあなたには勝てなかったみたいですね。」
(どおりで違和感があると思ったぜ。時間操作を使ったのも最初の一回だけだったしよ。)
レオは言う。
「それで、リデューの本体はどこにいるんだ?」
「それは、明かせません。今リデューさんは政府の誰にも居場所を明かしていないのですから。」
ミカンはリデューだった人形をかばんにしまう。
ゼルはレオをミカンに向ける。
「リデューは何を企んでやがる。政府の命令を無視してどこかに遊びにいってるのか?」
ゼルは半分怒りながら喋っている。
「あの方は力を求めているのです。それはとても、大切なこと。」
そういってミカンはこの場から立ち去ろうとした。
「おい、待てよ!」
ゼルはミカンを呼び止めようとした。
(やめとけ。アイツ、ジョーカーとほぼ同じレベルの実力だ。勝てる保障は無い。)
こうして、コフル城の攻防は意外な結末を迎えた。
この闘いは、後に大きな意味を持つ。
北の地、バイン山。
二人の男が雪の積もった山道を歩いていた。
一人はリデュー。
もう一人は、やせ細った中年の男性だ。
「リデューさん。」
二人の目の前に、ミカンが現れた。
「ん。ミカンか。速いな。ホークの手下の野郎共は、みんなやられちまったのか。」
「はい。ボルノ氏はすでに奪われたと思われます。」ミカンは状況を一通り説明した。
「なるほどな。俺も一応負けたってことで、政府での立場はさらに悪くなるな。」
リデューはあまり気にしていないようだ。
「まあ、収穫はありだ。各地で強い奴らを探した所、中々すごいのが集まったぜ。何よりすごいのはコイツ、マギーだ。」
マギーと呼ばれた男性はルーナに頭を下げる。
「我輩、マギーと申します。あなた方のお力になれるように頑張ります。」
随分丁寧な挨拶だ。
「コイツは、数年前の無差別殺人鬼で、一時期は一日十人殺してた。他にも、続々と強い奴らが集まったぜ。」
リデューは嬉しそうに語った後、ぽつりと呟いた。
「あのガキとはいずれ闘いたいな。」
ミカンは言う。
「もう少し時間が経ち、時期が作戦を実行しましょう。」
「ああ。より強い奴と闘うには、世界の頂点に立つ必要がある。そのために、政府の総帥を殺してやる!」
リデューがゼルとの闘いを避け、仲間を集めていた理由。
それは政府のトップ、総帥を殺すためだった!
果たして、どうなるのか・・・。
次回 次なる進路