第四十三話 「ランジ対カーネロ」
用語の読み方 救世の魔石
ホークの部下の一人、カーネロと遭遇してしまったゼルとランジ。
ランジがカーネロと闘うことに。
「危なかったらサポートしてやろうか?」
ゼルが聞く。
「いらねーよ。こんな雑魚に、負けることなんてねえからな。」
「アンタ、ムカつくな。俺の力は、ホークに認められたぐらいなんだぜ。」
カーネロは日本刀のような形をした魔石を発動した。
「コイツの名前は影切り。炎だろうが雷だろうが、コイツに斬れないものは無い。」
ランジはそれをじーっと見ている。
カーネロはランジが魔石を発動しないことに疑問を抱き、なかなか攻撃に踏み出せないでいた。
「おい、何やってんだお前!早く魔石発動しろよ!」ゼルはランジの態度にイラッとした。
「今思ったんだけどよ。この程度なら魔石使わなくても勝てるんじゃね?」
今の発言がカーネロを怒らせたようだ。
「どこまでも俺を馬鹿にした野郎だな。後悔させてやる!」
カーネロの姿は消え、一瞬でランジの懐に入った。
無駄のない素早い動きだ。
しかし、ランジはそれをひらりと避け、カーネロの刀を掴んだ。
「遅いな。魔石の力にかまけてばかりで、肉体の鍛練疎かにしてるんじゃねーか?」
カーネロはランジの驚異的な身体能力に驚き、逃げるように距離を置いた。
「今ので調子に乗るなよ。俺は三割程度のスピードでしか動いていなかった!」そうは言うものの、カーネロの額は汗でびっしょりだった。
(ランジ・・・強い!魔石無しでここまで闘えるなんて・・・。)
味方であるゼルですら汗をかいた。
カーネロは再び消えた。
今度はランジの背後に現れる。
しかし、ランジの姿も消えた。
カーネロは何が起きたのかすら理解出来ず、息を飲んだ。
「はあ、はあ。なんだこれは・・・。」
地面にたたき付けられるような衝撃。
ランジがカーネロの後頭部を殴ったのだった。
「つまんねえ。やっぱり部下レベルじゃ相手にならねえな。ホークを呼んでくれば、命だけは助けてやる。」
しかし、カーネロは首を左右に振る。
「ここにホークはいない。今はリデューのクソ野郎がしきってやがるよ。」
ランジとゼルは目の色を変えて驚いた。
リデュー。
ゼルにとって最大の敵だ。祖父のレオを殺し、旅に出るきっかけを作った人物。
「おい・・・アイツがこの城にいるのか?」
そう言ったのはゼルでは無くランジだった。
「ランジ・・・。お前もリデューを知ってるのか?」ランジは頷く。
「アイツは本当にムカつくな。政府で最も身内に嫌われている人間じゃねーか?」
カーネロは語る。
「まあ、それを知ったところでお前達はリデューには会えない。なぜならここで俺に殺されるからな。」
カーネロは魔石・影切りを振り上げる。
「コイツが俺の最大の攻撃だ!」
カーネロは垂直に刀を振り下ろす。
「悪夢斬り!」
ランジはついに額につけていた魔石を発動した。
カーネロの影斬りは粉々に砕けた。
「コイツが俺の救世の魔石だ。」
巨大な斧。
まるで蟹のハサミのような形をしている。
「コイツの名前はキャンサー。土属性の斧だ。今のは、キャンサーの能力で刀を粉々に風化させたんだ。」
カーネロはぺたりと地面に倒れ込んだ。
「貴様ら・・・。覚えておけ。いずれ後悔させてやる!俺を敵に回した事をな!」
カーネロはゼルとランジに背を向けて逃げるように走り出す。
「逃がすか!」
ゼルがレオを発動した、その瞬間−。
カーネロは何かにぶつかる。
上を見上げたカーネロは恐怖に顔を歪めた。
「てめ・・・え。」
カーネロは巨大な刀に叩き潰された。
カーネロはかろうじて生きてはいるようだが、意識は無く重傷だ。
「てめえ・・・。」
ゼルは立っていた男を睨む。
「くく・・・。弱い奴は何をやっても弱いままだな。この城の警備は俺とミカンだけで大丈夫だってのによ。」
燃えるような赤い髪。
ニメートルはあると思われる、巨大な身体。
武器の大きな剣は前にゼルが見たものとは違うようだ。
「リデュー!」
ゼルとランジはほぼ同時に叫ぶ。
「久しぶりだな、坊主!ジョーカーを倒したみてえだな。」
リデューは敵と会ったというのに、どこか嬉しそうだ。
「・・・そして、ランジじゃねーか!」
リデューは剣をランジに向けた。
「俺はお前を憎んできた。自分の快楽のためだけに、自らの妻を殺したてめえをな!」
ランジは感情にまかせて叫ぶ!
「俺はてめえを倒すぜ、親父。」
次回 絶望の序曲