第四十二話 「ルーナ対グリウ」
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ポーキーはガーボンに、バリーはイトラーにそれぞれ勝利した。
残る敵はホークの部下二人と、リデューとその部下ミカン。
ルーナは魔術師グリウと対峙していた。
「政府の人間を何人も倒している少年、ゼル。その仲間に魔術を使う少女がいると聞いた時から、手合わせしたいと思っとった。」
グリウはしみじみと言う。
「魔法を使う才能がある人間は千人に一人程度。その中で修業に耐え抜き、力を手にしたのならおぬしも選ばれし者なんじゃろう。」
ルーナは魔石ムチ、アイアンデビルを発動する。
「私は雷の魔法を使うわ。」
「雷か。わしは土の魔法を使う。」
グリウは右手を振り上げる。
「大地はワシの味方じゃ！」
突然床が盛り上がる。
そして、大砲のような物が現れた。
「アースキヤノン！」
大砲からは土の砲弾が発射される。
ルーナはムチをぴんとのばした。
「サンダースラッシュ！」
雷の斬撃波。
雷は砲弾に命中した。
しかし、雷は消滅してしまった。
そのまま砲弾はルーナに直撃した。
「きゃああ！」
多少スピードは落ちていたものの、当たったことに変わりはない。
「おぬしの雷の魔法ではわしの土の魔法にはいささか相性が悪いようじゃのう。」
全ての技には相性がある。雷にとって土は最悪の相性。
まともに攻撃をすることも難しい。
「次は、コイツでどうじゃ？」
グリウの足は地面に沈んでいく。
「・・・何それ。」
ルーナは砲弾が命中した脇腹をおさえながら言う。
「大地魔法、サルベージ。地面の中を自由に泳ぐ事が出来る魔法じゃ。」
グリウは完全に地面に沈みきった。
「地面に潜るなんて、卑怯な魔法・・・！」
ルーナにはどうしようも無かった。
「・・・大地魔法、アースクエイク。」
地面が揺れはじめる。地震だ！
「く・・・これじゃまともに立てない。」
ルーナは膝を地面につける。
「揺れの範囲を最小限にしぼった地震。これでおぬしはまともに戦えぬ。」
グリウはルーナの背後に現れた。攻撃を当てるために。
ルーナはとっさに背後に雷を放つ。
「ぬおっ！」
その途端、揺れがおさまった。
「く・・・。揺れにより正常な判断は出来なかったはず。一体どうやって・・・。」
グリウの衣服は炎をかぶったかのように焼け焦げている。
「揺れで視力も聴力もまともに使えないから、直感に頼ったの。」
ルーナはさらっと答える。
(直感だと？そんな器用なことが出来るとは・・・。たかが小娘と思い、油断した。)
グリウは再び地面に潜る。しかし、身体が上手く動かない。
(雷の効果で神経が多少マヒしてしまったか。)
グリウは勝負を長引かせては自分に勝ち目の無いことを悟った。
一方ルーナは気配でグリウを探し出そうとしていた。しかし、地面の中にいる相手を捜し出すことなどそうできることでは無い。
グリウが地面から姿を表した。
ルーナの反応は一瞬遅れた。
圧縮された土の弾丸を受け、ルーナは意識を失った。
「くくく・・・。ワシの勝ちじゃ！イトラーとガーボンは負けてしまったようじゃが・・・まあいいじゃろ。」
グリウは勝利の喜びを噛み締めたあと、ルーナに近づいた。
「さて・・・。後片付けといこうか。」
次の瞬間。
グリウの身体は宙を浮いた。床に身体を打ち付け、呻き声をあげる。
グリウがとっさに辺りを見回すと、そこには気絶したはずのルーナが立っていた。
ルーナの目の色がいつもと違う。
優しい栗色の瞳が、燃えるような赤へと変化していた。
「まさか・・・。それはアリエスの・・・。」
グリウはかつて書物で読んだ一つの興味深い内容を思い出していた。
伝説の空間魔法。
魔法の基本である八属性にも、時空魔法や神魔法などの特殊魔法にも属さない最強の魔法。
その魔法を使えたのは世界でただひとり。
魔石の研究員で魔法使いでもあったアリエス。
アリエスは時空魔法を使う時だけ、瞳の色が赤に変化したという。
ルーナもアリエスの子孫であるなら使える可能性はある。
(まさか・・・。同じ魔法使いであるワシと接触したことによって、奥深くに眠っていた力が目覚めたのか！)
「この技はお兄ちゃんが死んだあとに使えなくなった技なんだけど・・・。再び使える時が来るなんて思わなかった。」
ルーナの瞳が輝いた。
次の瞬間、グリウの身体は倒れこんだ。
グリウだけでは無い。
近くの鎧も、絵画も、全て倒れていく！
「空間魔法の基本技。重力変化。これであなたは立ち上がれないわ。」
グリウはすでに気絶していた。
「・・・勝った。」
ルーナもそのまま倒れこんだ。
一方、ゼルとランジは城のかなり奥まで到達していた。
「ふー。ジュリアはどっかに行っちまうし。なんでウチは団結力がないのかね〜。」
いきなり、手裏剣のような物が飛んでくる。
ゼルとランジは完全にそれを見切り、攻撃を弾いた。
「やるねえ〜。さすがだよ。」
痩せた体の男。
「俺の名前はカーネロ。言っておくが、ホークの部下の中じゃグリウの次、二番目に強いぜ。気をつけな。」
ランジは前に出る。
「ワリイ、ゼル。ちょっと見ててくれ。コイツは俺がすぐに倒す。」
ランジ対カーネロ。
ついにランジの能力が明らかに？
次回 ランジ対カーネロ、そして・・・。
