第三話 「獅子」
冒険物のはずなのに、全然冒険が始まりませんねw すみません。 あと数話で、プロローグ的な物が終わりますので、それが終わったら、冒険がスタートします。
「全く・・・。心配して来てみれば、こんな状況になっているとはのぉ。」
突然現れ、クレイモアを簡単に弾いてしまったレオを見て、リデューもゼルも、唖然としている。
「じーちゃん、何で俺がここにいるって分かったんだ?」
「馬鹿者、何年お前と一瞬に暮らしていると思っとるんじゃ。お前の考えていることなど、手にとる用に、分かる。」
「ゴメン、じーちゃん。俺・・・。」
「何故お前が狙われているのかも分かっている。前に、ワシが前にやったお守りをもっているな。」
「ああ・・・。」
ゼルは、ポケットから、小さな水晶を取り出した。
「ゼル、お前は、あの大剣で斬られたはず・・・。しかし、その割に出血が少ないじゃろ。」
「そういえば・・・。」
「それは、魔石の扶助効果の一つで、緊急防御が働いたからじゃよ。」
「コイツが・・・。魔石なのか?」
リデューが嬉しそうな笑みを浮かべる。
「くくく・・・。やはり、救世の魔石はガキが持ってやがったか。」
「うむ・・・。だが、持たせるべきではなかったと後悔しておるよ。これを持っていなかったら、孫はおぬしに狙われることは無かったわけじゃからのぉ。」
レオは、自分の髭をいじりながら、落ち着いた様子で話す。
「しっかし・・・。じーさん。あんた何者なんだ?クレイモアを弾いた技術といい、一般人が持っているはずのねえ救世の魔石を所持していることといい、ただ者じゃねーだろ。」
「ワシの名前は、レオ・エアリアルじゃ。」
リデューの瞳孔が、大きく見開いた。
「ありえねえ!!レオってのは、魔石開発の第一人者!!400年前の、兵器暴走の時の人間だ!!今、この時代に生きているわけがねぇ!!」
「その通り。ワシは、本来四百年前の人間じゃ。この時代にタイムトリップしてきたのじゃよ。来なくてはならない理由があってのお。」
ゼルは、話の内容が理解できず、口をぽかんと開けている。
「まあ、お前が本当にレオ・エアリアルかどうかなんて俺には関係がねぇ。俺の目的は、ガキの救世の魔石を回収すること。そして、それを邪魔する奴をぶった切ることだ。」
「そんなことはさせぬよ。製作者として、悪しき者に魔石を使われるのは、心が痛むのでのぉ。」
そういってレオは、棒をかまえる。右手を先端部に添え、左手で後ろの部分を支える。突きの構えだ。
「そいつ、何て名前の魔石だ?クレイモアを弾くってのは、そう簡単に出来ることじゃないぜ。」
「これは、魔石などではない。ただの鉄製の棒じゃ。」
「なにぃ?ただの棒で、この俺のクレイモアを弾いたってのか?」
「ああ。この棒には、特別な能力などは一切無い。ワシの能力によって、その剣を弾いたのじゃ。」
「お前の能力?老人に、そんなすげー力があるとは思えね−が。」
「ワシは、闘いに一生を捧げなければならない運命のようじゃ。だからこそ、自分の作った武器で人を傷付けたく無かった。ワシは、可能性を求めて、はるか東の国に向かったんじゃ。そして、新たな力を手に入れた。仙術をのぉ。」
「仙術?確か、習得することができれば、自分の肉体を極限までパワーアップ出来るってやつか・・・。面白い。」
「ワシは、魔石の力に頼り、自らの肉体を磨くことを疎かにした、愚か者には負けぬぞ。」
レオがしゃべり終わったと同時に、両者は動き出した。
リデューは、クレイモアを、レオに向かって、思い切り振り下ろす。レオは、それを難無くかわす。そして、棒をリデューに向かって突いた。
そこには、リデューの姿は無かった。レオは、とっさに、背後を向く。クレイモアにたたき付けられ、レオは、吹き飛ばされる。
「じーちゃん!!」
「どうやら、スピードは俺のほうが、上のようだな。」
レオは、起き上がった。
「小手調べと思ったが、なかなかやるようじゃな。これでは手加減は失礼か。」
「何?今のは、手加減してたせいで負けたみてーな言い方だな。」
「ああ。その通りじゃよ。」そういった次の瞬間、レオの姿が消えた。
リデューの体が宙を浮いた。
「はあ、はあ、これでどちらが上か分かったじゃろ。今の一撃には、相当な力をこめた。もう、指一本動かせないはずじゃ。」
普段以上のレオのすごさにゼルは驚いていた。
「じーちゃんって、こんなに強かったのか・・・。」
「はあ、はあ、さて、帰るぞ、ゼル。家で全て教えてやる。いずれは知らなければならないことじゃからな。」
「待てよ・・・。」
突然の声に、ゼルもレオも驚いて後ろを向く。
「はあ、はあ、ばかな・・・。まだ、動けるというのか。」
そこには、傷だらけのリデューが立っていた。
「俺は、政府特殊部隊の中でも、一、ニを争うくらいの生命力の高さでよぉ。不死鳥のリデューなんて呼ばれてんだ。そう簡単には倒れねーよ。」
リデューは、クレイモアを強く握った。
「お前も一発技を使っただけで、ずいぶん息が切れてるみてーだが。」
「はあ、はあ、やはり、年には勝てんよーじゃ。もう一発が限界のようじゃのぉ。」
「そいつはいいな。俺は、取っておきを使わせてもらうとするか。」
「じーちゃん、その体で、大丈夫なのか?」
「ゼル・・・。ワシにもしもの事があったら、全ては隣の家のルードに任せてある。お前は、ワシの後を継ぎ、平和な世界を、作ってくれ。」
リデューが動いた。レオも反応するが、明らかに動きが遅い。
クレイモアが、レオの下腹部に突き刺さった。
レオは、ゆっくりと倒れる。
そして、そのまま動かなくなった。
「じーちゃん!!」
ゼルが、レオのもとへと駆け付けた。
「なあ、じーちゃん!!嘘だろ!!じーちゃんがこんなことで死ぬわけねー・・・。」
ゼルは、言葉を失った。
レオの心臓は、既に停止していた。
「どうやら、じーさんは、死んだようだな。さて、救世の魔石を渡して貰おうか。」
「・・・。」
「渡さねーと、殺すぞ。」
「・・・コイツは、俺のじーちゃんが命を懸けて守ろうとした物だ。何だか分かんねーけど、お前なんかにゃ渡せない。」
ゼルは、ゆっくりと立ち上がった。
「俺は、お前をたおす!!」ゼルの手に握られている救世の魔石が光を放った。
次回 ゼル対リデュー