第三十六話 「天空騎士団」
最近、話がごちゃごちゃしてきました。分かりづらかったらすみません。
カンパル地方、聖域の門から少し離れた川のほとり。
そこに、ゼルとルーナ、そして反政府組織・天空騎士団と名乗る二名の男が座っていた。
「改めて自己紹介します。私の名前はバリー。こちらがポーキー。それぞれ天空騎士団の二番隊隊長と四番隊隊長を勤めているよ。」
「俺達に、何の用だ?」
バリーは腕を組む。
「僕達の組織には君達の力が必要だ。手を貸して欲しい。」
バリーの顔は真剣だった。
「力?いきなり何いってんだよ。」
「我々の指導者が政府に拘束されてしまった。これでは世界は奴らのいいなりだ!」
「そうさせないために私達は旅をしてるんだよ。」
ルーナは言う。
ポーキーは大笑いした。
「たかが二人で何ができる!?政府の力を見くびりすぎだぜ、てめーら。」
ルーナはむっとした。
「私達は指導者を助けたい。そのためにも、私達の作戦に参加してほしい。」
「ちょっと待った。そもそもお前らは、なんで俺が救世の魔石を持っていることを知っているんだ?それに、俺がお前達の指導者を助けて何のメリットがあるんだ?」
バリーは少し考えこんだあと、口を開いた。
「・・・仕方ないな。一番隊隊長の所に来てもらおう。」
聖域の門より少し北。
そこには大きなテントがあった。
天空騎士団の文字とロゴマークが入っている。
「この中に一番隊隊長・ランジがいる。詳しい話は彼に聞いてくれ。」
ゼルとルーナはテントの中に入る。
赤い髪の青年。
左手に杖を握っている。
アクセサリーのように額に魔石をつけている。
「おお。よく来たな!ゼル。ルーナ。」
赤髪の青年は笑う。
「お前、何で俺達の名前を知っているんだ?」
青年は眉一つ動かさずに話す。
「ククク。そんなことか。簡単だ。俺が持っている救世の魔石の能力だ。」
「あなた、救世の魔石を持っているの!?」
「ああ。救世の魔石の一つ、キャンサー。戦闘の際の武器としての能力の他に、一種の占い的能力も兼ね備えている。」
「すげーな!便利な能力!」ゼルは感嘆の声をあげる。
「所でよ、おめーら。取引といこうぜ。俺らの指導者を助ける作戦に参加してくれたら、とっておきの情報をくれてやる。」
「とっておきの情報?」
「救世の魔石の一つ、そしておそらく、政府の奴らが血眼になって探しているであろう物のありかだ。」
ゼルは驚いた。
「お前がありかを知っているのか?」
「ああ。俺の情報は半端ねーぜ!ただ、そこは危険がありすぎるんでいかねーだけだ。」
青年は笑みを浮かべる。
「そう言えば、自己紹介がまだだったな。俺の名はランジ。天空騎士団の一番隊隊長を勤めている。」
ゼルとルーナはそれぞれランジと握手をかわす。
「俺達、お前達の指導者を助ける作戦を手伝うよ。」
「そうこなくっちゃな!それじゃあ、明日作戦を話す。今日はこのキャンプ地で身体を休めてくれ!」
ランジはゼルとルーナにキレイに輝く石を渡す。
魔石では無いようだ。
「それはメモリオン。人の記憶を封じてある石だ。それに俺の記憶が入ってるから、見ておいてくれ。」
二人はテントを出る。
「・・・めんどいけど、俺がお前らの手伝いすることになってるから。」
ポーキーは本当に面倒臭そうに言う。
「天空騎士団ってのはどういう組織なんだ?反政府組織ってことしか分からないけど。」
「天空騎士団ってのは、指導者ボルノさんを中心に政府を倒そうとしてるチームだ。六の戦闘部隊と一の諜報部隊からなっていて、戦闘部隊にはそれぞれ隊長がいる。」
ポーキーはやや早口で説明した後、大きなあくびをした。
「ボルノさんって私達が会おうとしてた人だよね。」ルーナが言う。
「コイツはいいな。ボルノを助け出せば、政府の情報と救世の魔石のありかが一気に分かるってわけか。」
ポーキーはランジのいるテントに入ろうとした。
「眠いから、俺は寝るぜ。テントは一番西のやつを使え。あと、明日までにメモリオンを見とけよ。」
夜−。
ゼルとルーナはメモリオンを握りしめた。
その瞬間、以前にも感じたことのある奇妙な感覚がゼルに訪れた。
(これって、あの変な夢の時みたいな−。)
一人の小さな少年が立っている。
見た目は三、四歳といった所だろうか。
おそらく、ランジの幼い頃だろう。
ランジは、父と思われる二十代くらいの男と手を繋いでいる。燃えるような赤い髪だ。
(?この、どこかで見た覚えが・・・。)
ランジの父は誰かと話をしている。話相手の顔はぼやけて見えない。おそらく、ランジの記憶があいまいになっているからだろう。
「済まないな。私にはこの子がいる。救世の魔石は渡すが、あなたの力にはなれなそうだ。」
ランジの父は深々と頭を下げた。
「・・・うむ。仕方あるまい。ワシにもこの子と同じくらいの年齢の孫がいる。気持ちはよく分かる。」
顔がぼやけていてよく分からないが、おそらく老人だろう。
「ワシは、必ず政府を止めねばならん。そのために、孫を故郷において来てしまった。しかし、ワシは退くわけにはいかん。」
「すみません、力になれなくて。レオさん。」
その瞬間、男の顔がはっきり見えるようになった。
ゼルの祖父、レオだ。
次回 作戦会議(予定)