第三十三話 「闇は消えない」
ジョーカー編次回で終わりです！
(この殺気！奴がこのガキに力を貸したとでも言うのカ！)
タウロスの額に汗が流れる。それだけ、レオの力を恐れているのだ。
(大丈夫ダ！俺は成長しタ！奴の力など恐れる必要はない！)
ゼル自身、自分の身体に沸き上がる不思議な力に驚いていた。
(スゲエな。これなら、アイツを倒せる！)
しかし、ゼルが受けているダメージも決して少なくない。
短期決戦が望ましい。
(タウロスの闇の力も攻略方法は分かってる！倒すのはそう難しいことじゃない。)
タウロスは闇の剣を頭上高く振り上げる。
フロア内にいくつもの闇が出来た。
「この技は攻略できまイ！俺はこの闇のワープゲート内を自由に移動できル！」
ゼルは精神を落ち着けた。(奴がゲートから出てきて俺に攻撃を仕掛ける僅かな時間がチャンスだ・・・。)
「思い出したゾ！レオに唯一足りないのはスピード！速く動けないお前では、この技は絶対に避けられなイ！」
タウロスはワープゲートに入る。
ゼルは、辺りを見回して、どこから攻撃がきてもいいようにしている。
タウロスは、ゼルの右方向から姿を表した。
闇の剣を振り下ろす。
(勝っタ！)
タウロスは自分の勝利を確信した。
しかし、そこにゼルの姿は無い。
「な、何が起きタ！奴はどこに消えタ！」
タウロスの背後にゼルはいた。
「獅子の爪。」
左手の爪でタウロスを引っかく。
その瞬間、タウロスは炎に包まれた。
「ぎゃああああ！熱イ！貴様！」
タウロスは床で転げ回って、必死に火を消そうとしている。
「レオのスピードは確かに速くねーな。だが、俺のスピードにレオのスピードを上乗せしたんだ。」
「つまり、今のはお前自身のスピードにレオのスピードがプラスされたのカ！」
「ああ。これで終わりだ！」左手の爪が巨大化する。
ゼルはレオと融合したことにより、力、スピード、防御力、精神力の全てにおいてパワーアップしていた。
爪がタウロスに刺さる。
「がはああああっ！」
タウロスはそのまま床に倒れ、動かなくなった。
ゼルも、そのまま床に倒れる。
「やべえ・・・。身体に力が入らねえ。」
指一本動かない。
ルーナが目を覚ました。
「あ！アイツ倒したんだね！」
ルーナはゼルの所に駆け寄る。
「大丈夫？」
「動けねえ・・・。」
「ま、そりゃそうだよね。あれだけ闘ったんだから。」
「つーか、お前もあの剣で斬られたろ。なんでぴんぴんしてんだよ。」
「ホントだ・・・。何でだろ。」
ゼルとルーナが和やか(？)に会話をしているその時！
何者かがタウロス(ジョーカー)の近くにいた。
「あ！あなたは！」
ルーナはその顔をみて驚く。
ゼルも、その人間の顔を見る。
その人間はナッツ。
バナナタウンに来る途中、怪しい店を経営していた悪徳商人の少年だ(十四話参照)。
「久しぶりっスねえ。ゼルさん。ルーナさん。あんた達の後をつけてきて正解でしたよ。」
ナッツは魔石の姿に戻ったタウロスを掴んだ！
「ナッツ！そいつに触るな！何が起きるか分からねえ！救世の魔石は使い手を選ぶんだ！」
「この塔にいる敵は全てあんたとそこのお兄さんが倒してくれたっス。ジョーカーとの闘いはヒヤヒヤしたっスが。」
ナッツは聞く耳持たずだ。
「止めろ、ナッツ。救世の魔石に触れると・・・。」
突然、タウロスが光を放つ！
「な、何スかこれは！うわああああ！」
闇が発生して、ナッツの身体を包んでいく。
闇は、形を作り甲冑姿の騎士が現れた。
「ぎゃははは！馬鹿なガキダ！救世の魔石をお前ごときが扱えると思ったのカ！」
右手に闇の剣を持った騎士。
「その喋り方・・・お前、まさかタウロスか？」
「タウロス！あんたナッツに何したの！？」
「ジョーカーの身体に憑依した技とはわけが違ウ！ガキの身体を基盤として、俺の姿を作りだしたのダ！」タウロスは誇らしげに言う。
「お前、本当に救世の魔石なのか！？ナッツは何もしてねえだろ！」
「世界を救うなんてのは俺の性にあわないんダ！俺は自由に行かせてもらうゼ！」
タウロスは窓に近づく。
「力をつけたら、俺は再びお前達の前に現れル！その時はもう一度勝負ダ。」
タウロスは窓から飛び降りた。
「ゼル！どうしよう、ナッツが！」
ルーナは焦っているようだ。
「アイツは確かにいい奴とは言い難いけど、根っからの悪人でもねーだろ！それなのに、タウロスの野郎は・・・。」
ゼルは怒っていた。
「待ってろよ・・・。ナッツ。いつか、絶対に助け出してやるからな。」
ゼルは何気なくジョーカーの方を見た。
ジョーカーの姿が無い。
「な・・・！ジョーカーの奴、どこに行きやがった！？」
「まさか・・・アイツも逃げちゃったの？」
ジョーカーの姿は無い。
タウロスを失ったとはいえ、相当な実力者。
とり逃してしまったら、後々何をしでかすか分かったものではない。
「クソ・・・。これじゃ何もかわらねーじゃねーか。俺は・・・がふっ！」
ゼルは意識が朦朧としてきた。
「ゼル！ねえ、ゼル！」
ルーナはゼルの身体を揺する。
ゼルは薄れゆく意識の中で、何かを見た。
それは、夢か、幻か。
それは分からない。
二人の男が対峙している。
「俺は、お前を探して世界中を回った。」
緑髪の男が言う。
「お主には、本当に済まぬことをした。お主が大切に思っている者を、奪って・・・、」
緑髪の男は黒い棒をマントで顔を隠した男に向ける。タウロスだ。
(コイツは、ジョーカー？)
「それが分かっているなら、死んで償え！」
緑髪の男はもう一人のマントを払いのける。
ゼルは、その顔に見覚えがあった。
「じーちゃん？」
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