第三十一話 「タウロスの弱点」
あと1話(もしくは2話)でジョーカーとの闘いが終わります。
「私の力は貴様達の想像を遥かに越える。」
ジョーカーは自分の周囲を闇で囲む。
「私は何もしない。煮るなり焼くなり好きにしろ。」
「随分余裕だね。だけど、そういつまでも余裕ではいられないよ。」
アデムはジョーカーを覆っている闇に刀を刺す。
「何だ・・・これは・・・。」
風の刀は、形を保てなくなり、消滅していく。
「闇の力は分解。それは風も例外では無い。」
アデムの身体に闇の剣が突き刺さる。
「があああっ!」
アデムは意識を失った。
「弱すぎる・・・!」
ルーナはダンバー武道祭でゼルに見せた魔法を使おうとしていた。
月を隠している雲から、雷鳴が轟く。
「なるほどな。あの雲はお前が魔術により作りだしたわけか。」
雷がジョーカーの身体に落ちる。
「この程度か。」
ジョーカーの身体は闇になり、落雷を避けた。
「・・・そんな!」
「これで分かったか。私と私の持つタウロスの力が。」
ゼルは、意識があるのか無いのか、自分でも分からなかった。
(ルーナとアデムが闘ってるのか・・・。俺も加勢してーけど、もうそんな力は残ってねー。)
ゼルは指一本動かすことが出来ないほどに衰弱していた。
(まだ旅が始まって、そんなに経ってないってのに・・・。俺はこんな所で死ぬのか。)
まぶたが重い。
僅かに見える視界には、ルーナが闇の刀に斬られる瞬間が映っていた。
(おいおい!情けねーなあ!あんな雑魚相手に負けるってのか?)
ゼルの頭に、突然声が響いた。
(誰だ?)
(分かんねーのか。俺はお前にとって無くてはならない存在だってのに。)
(意味分かんねえ。)
(まあ、そのうち分かるかもな。とりあえず、俺の生命力をお前に分けてやるから、もうちっと頑張ってみろよ!)
「結局、私に敵う者などこの世にはいないのだ!くははははは!」
ジョーカーは高笑いをあげる。勝利を確信しているのだ。
ルーナは立ち上がる。
「・・・ほお。ここまで傷ついて、まだ闘うのか。」
「私は、諦めない!私を闇から救ってくれた人だってまだ諦めていないはずだから!」
「その男は今、闇の力の前に敗れ去った。私は奴の満身創痍の状態からの攻撃を一発くらっただけなのだぞ。」
ジョーカーはルーナのもとに歩み寄る。
「そして、お前が死ぬことによって全ては終わるのだ!」
ジョーカーは闇の剣を振り下ろす。
ジョーカーの動きは止まった。
「まだ生きていたのか。」
そこには、ゼルの姿。
「俺はまだ死ねない。俺の勝利を信じてくれてる奴らがいるのに、おちおち死ねるか!」
ゼルはバーストのエネルギーを溜める。
「同じことの繰り返し。貴様には学習能力はないのか。」
「見つけたぜ!お前に攻撃をあてる方法。」
ゼルはレオを投げる。
レオは二つに分離した。
「・・・ダブルバーストか。全く芸がない。」
右側のバーストが発射された。
「闇になれば意味は無い!」ジョーカーが闇になろうとしたその瞬間!
ゼルはバーストが闇で避けられたのを確認した瞬間、バーストをもう一発放った。
「ガハッ!」
バーストはジョーカーに命中した。
「やっぱりな。お前が闇に慣れるのは一瞬だけ。最初に攻撃が当たった時だけだろ。一度闇になったら一度もとの姿に戻らなければいけない。攻撃できるタイミングはごく僅か!お前に一度攻撃をあてて、もとの身体に戻るまでの時間だ!」
ジョーカーはバーストが当たった胸を、押さえている。
「よくもやりやがったな!ガキの分際で!」
「お前は絶対に倒す!俺の全てを賭けて!」
そうは言っても、ゼルの身体もかろうじて立ち上がっている状況。
謎の声の主に生命力を分けてもらったといってもほんの僅か。何とか闘える程度にしか回復していないのだ。
「私は貴様を許さん!貴様もリデューと同じ位むかつく男だ!」
ジョーカーは闇の剣を地面に突き刺す。
「手加減はしないぞ!この攻撃を破れるか!」
地面から闇エネルギーが湧き出てくる。
「人間が持つ負の感情。私はそれを具現化して攻撃に使えるのだ!」
(あと一撃!あと一撃だけ与えればアイツは倒れる!次の一撃に全てをつくせ!)
頭の中から声が聞こえる。
地面から現れた闇は、一つになり、巨大な闇玉になる。
「今までの闇玉とは違う。貴様の体内に侵入したあと、脳や中枢神経を支配し、生ける屍として私の部下になるのだ。」
ジョーカーの身体は、がくがく震えている。
「お前だってかなり反動がきてるじゃねーか。止めるなら今のうちだぞ。」
「誰がやめるか!私は私を侮辱した貴様らを許さない!」
闇玉が飛んでくる。
ゼルは、目を閉じて深呼吸をした。
「ダブルバースト!!」
二つの刃が闇玉を切り裂く。
そしてそのままジョーカーに直撃した。
「がはああああっ!」
ジョーカーは動かない。
ゼルは祈った。
(頼む!これで終わってくれ!)
ジョーカーは、タウロスを持ち上げた。
「これだけは使いたくなかったが・・・止むをえないだろう。」
「そんな・・・。」
ゼルは肩で息をしている状態。身体もボロボロだった。
「救世の魔石の真の力を見せてやる!」
次回 獅子の技