第三十話 「闇の恐怖」
もう少しで、ジョーカーとの闘いが全て完結します。
ジョーカーのタウロスの真の力。それは、自分自身を闇にすることだった。
「ゼルさん、分かりましたか?あなたが私に勝てない最大の理由が。」
ジョーカーはタバコを吸っている。
(落ち着け!冷静に考えたら全ての攻撃が効かないなんてありえねーだろ。もし、本当にそんな力があったら幹部レベルのわけがねー!とっくに天下とってるっつーの。)
ゼルはレオを降る。
「あなたも分からず屋ですね。私にはあなたの攻撃なんて効かないんです。」
ジョーカーの周りに闇属性エネルギーが発生する。
闇は棒の周りに集まっていき、剣の形を作った。
「あなたを剣で殺す。そのことがリデューにとって最大の屈辱でしょうねぇ。」
「リデューだと?」
「ええ。私はあの男が嫌いなんですよ。あの程度の実力で政府の不死鳥と呼ばれているのが理解出来ない。あなたのような子供に負けたあの男が!」
ジョーカーは闇の剣をにぎりしめる。
「私はあの男に絶望を与えたい!あの男が救世の魔石を持っているのが許せない!」
ジョーカーの闇の剣の色がどんどん邪悪な黒になっていく。
「闇属性の力は憎しみ・妬み・敵対心。それら負の感情により強くなっていく!」
「っつーか随分一方的な恨みだな。アイツがお前に何かしたわけでもないんだろ?」
「黙れ!ガキ!」
ジョーカーの態度は豹変する。
「存在自体が気にくわない。そういう人間もこの世にはいるのだ!お前のようなガキに何が分かるというのだ。」
ジョーカーは一瞬でゼルのもとに来る。
闇の剣で斬られた。
血はでないが、さっきまでの闇玉の痛みが強くなったようだ。
「ぐああ!」
「闇の剣は斬った相手の精神を喰らう。肉体的外傷は無いが、精神的外傷は相当な物だろう。」
ゼルは痛みを堪えた。
(絶対に弱点はあるはず・・・。無敵の力なんてあるはずが無い!)
「闇の剣を通じて貴様の痛みが伝わってくるぞ!」
ゼルはレオを投げる。
「焔龍!」
レオは二つに分かれ、炎の斬撃がジョーカーに襲い掛かるが、ジョーカーの身体は闇エネルギーに変わり、無効化される。
(弱点はあるはず・・・。)
ジョーカーはゼルの目の前にまでワープしてくる。
「影という闇が有る限り、貴様は私から逃れられんのだ!」
ゼルは闇の剣に斬られた。「ぐあああああ!」
ゼルの身体は限界だった。一度痛みを消し去る薬を飲んだのに、これほどのダメージが来ているのだ。
足元もふらついている。
「くそ。傷もほとんど無いのに・・・。」
「やはり、救世の魔石を使おうが、小僧では駄目だな。真の使い手が手にしてこそ、真の力を発揮出来る!」
ゼルはレオにバーストのエネルギーをためる。
(まだだ。まだ、チャンスはあるんだ!諦めるな!)
「まだやるのか。私には効かないと言っているだろう。それでもお前は。」
ゼルはバーストを放つ。
ジョーカーは完全に余裕だ。
「がはああああっ!」
ジョーカーは声をあげる。何と、ゼルの攻撃が命中したのだ。
「な・・・、何故だ!私の闇の力が何故・・・。」
ゼルにも、何が起きたのか分からなかった。
「そうか・・・。先程貴様が吸収に失敗した闇の力!あれがかすかに貴様の体内にエネルギーとして残っていたのか!私の闇と同化することによって、私にダメージを与えたと言うわけか。」
ゼルは膝を床についた。
息が荒い。
意識もかろうじて保っている状態だった。
「しかし、今のバーストで闇の力は使いきったであろう。つまり、今度こそ貴様の勝機は消えたということだ!」
ジョーカーは闇の剣の周りに闇を纏わせる。
「この一撃で貴様は命を落とす。闇は貴様の体内に侵入して、身体中の器官を破壊しつくすのだ。」
ゼルはゆっくりと立ち上がる。
「俺は・・・がふっ!お前を許さねえぞ。」
「ほざいていろ。貴様にどう思われようが構わない。」
ゼルはひそかにバーストのエネルギーを溜めていた。
ゼルはバーストを放つ。
しかし、闇になったジョーカーにはなんの効果も無かった。
「言っただろう。先程はたまたまだ。もう私に攻撃が届くことは無い。」
ジョーカーは闇の剣を振り下ろす。
「があああああああああ!」
ゼルはそのまま倒れた。
「所詮、私の前に敵などありはしない。まぐれとはいえ、私に一撃を与えたことは評価してやろう。」
その時だった。
ジョーカーの背後に、アデムが立っている。
しかも人間の姿で。
「ゼル君が命をかけてるんだ。僕だってがんばらないとね。」
アデムの右手には風の刃の刀。まだ効果は持続しているようだ。空は曇っている。雲が月を覆い隠したせいで、アデムはもとに戻れたのだ。
「アデムが復活したか。しかし、一人で何が出来ると・・・、」
「一人じゃ無いよ。」
ガラスを破壊して、ルーナが飛び出てきた。
「私の大切な仲間をよくも・・・。絶対に許さないわよ。」
ジョーカーは言った。
「救世の魔石を持っている小僧でさえこのざまだったのだ。貴様らなど相手にならんわ!」
「どうかな?僕だって、やれば出来るよ。」
「あなたの行為は最低よ!」
まだ希望の火は消えていない!
アデムとルーナは、ジョーカーに刃を向ける!
次回 希望