第二十八話 「人狼」
今回いつもより少し短くなってしまいました。
突如アデムの身体に異変が現れた。
その姿はまるで人狼。
ジョーカーと闘う前の最後の試練が始まった。
「どういうことだ!アデムはどうなってるんだ?」
「彼はかつて私の実験により狼と融合したのですよ。失敗により満月の夜にしかその姿を見せてくれませんがね。」
アデムは苦しそうにうめき声をあげている。
「彼は理性を失った化け物。あなたに襲い掛かりますよ。もっとも私には危害を加えないようにしてありますがね。」
ゼルは眉間にシワを寄せた。
「何だと。それでアデムはお前を倒そうと思っていたのか。」
アデムはゼルに襲い掛かってきた。
「私はあなたの戦闘力は評価しているんですよ。しかし、仲間との戦闘には弱い。」
アデムの爪は鋭く、そこら辺の剣よりは切れ味がありそうだ。
ゼルはアデムをなんとか気絶させようとする。
「どうしました?先程から避けてばかりで。それでは絶対に勝てませんよ。」
アデムの爪がゼルの肩に食い込む。
「ぐああ!」
「あなたの力なら勝てない相手でも無いでしょう。どうしたのですか?」
ゼルは腕力でアデムを払いのける。
「エネルギーは溜め終えた。威力は抑え目にするから勘弁してくれよ。」
ゼルはバーストを放つ。
しかし、光線はアデムの口の中に吸い込まれた。
「な・・・、バーストを喰っただと?」
アデムの口からバーストが発射される。
バーストはゼルに直撃した。
「か・・・はっ!」
ゼルの身体は火傷だらけになった。
「さあ、さあさあ!早くアデムさんを倒して下さい!」
ゼルはレオに再びエネルギーを溜めようとする。
「があああっ!」
アデムは二足歩行から四足歩行に切り替える。
「野性の状態に近付いて来ましたか。これは面白い。」
「面白いだと?人の命を何だと思ってやがる。」
ゼルは負傷した肩を押さえている。
「だって、人と動物の融合ですよ!これを応用すれば最強の人類だって作りだせる!」
ゼルはエネルギーが溜まりきったのを確認する。
(まだ、撃たねえ!さっきのカウンターをくらっちまう。チャンスをまたねーと・・・。)
アデムの爪と牙によるコンビネーション攻撃をぎりぎりの位置でかわす。
ゼルはレオを極力使わないようにしていた。
チャンスは出来た。
アデムは大振りの一発を外し、隙を作った。
「行くぜ!」
ゼルはレオをアデムの腹に押し付ける。
「バースト零距離発射!」
バーストの力でアデムはそのまま地面に倒れた。
「これで今晩の間は目を覚まさないだろ。」
ゼルは一旦レオを魔石に戻す。
「考えましたね。バーストのゼロ距離バージョンとは。」
ジョーカーは立ち上がる。「これを使ってください。」
ジョーカーはゼルに薬を渡す。
ゼルがそれを負傷した肩に塗ると、出血はおさまった。
「いいのか?俺は敵なんだぜ。」
「構いません。瀕死のあなたと闘うよりも、全力のあなたと闘った方が楽しいでしょう。」
ジョーカーは魔石を発動する。
黒い棒。
「そいつがジャックの言ってたタウロスってやつか。」
「ええ。あなたも救世の魔石を持った人間と闘うのは初めてなのでしょう。見せてあげますよ。力の差を。」
ゼル対ジョーカー。
二つの救世の魔石が激突する!
次回 ゼル対ジョーカー