第二十七話 「幻想箱9 FINAL」
今話のゼル対ジャック、本当はもっと長くするつもりだったんですが、その後の展開のことを考えて少し短めにしてみました。 ただ、話の長さはいつも通りですよ。
ゼルとジャックの闘いは長引いていた。
二人の今のところの闘いはほぼ互角。両者共に決定打が与えられずにいた。
ゼルはゼルを天井に向かって打ち上げた。
「お前、何してんだ?」
ジャックは聞いた。
「宣言する!俺の次の一撃でお前は負ける!」
ゼルは自信ありげに言った。
「何ぃ?一撃で俺を倒すだと?」
天井に投げられたレオは空中で停止している。
レオが突然光を放った。
光はレオの中心に集まっていく。
「ものすごい量のエネルギーだ。俺を一撃で倒すってのもあながち冗談じゃ無いか。」
「レオの七ツの技の一つ、バースト。コイツはめちゃくちゃ威力が高いんだけど、エネルギー溜めるのに時間がかかるんだ。だから、その隙に俺に攻撃すりゃアンタの勝ちだぜ。」
ジャックは大笑いした。
「ギャハハ!面白いガキだな!俺が姑息な手が嫌いなのが分かったのか?面白いから、俺も全力で対抗するぜ!」
ジャックの体がみるみるうちに赤くなっていく。
「俺は、ジョーカーの野郎に肉体改造をしてもらった!」
ジャックの筋肉は肥大化していく。
「コイツを敵に見せるのは随分久しぶりだな!誇りに思え!」
二人は自分のエネルギーが溜まるのを待つ。
長い沈黙の後、二人はほぼ同時に動いた。
レオからバーストが放たれる。
バーストは炎のエネルギーの塊のような物らしい。
光線のように一直線にジャックを狙う!
対するジャックはバーストに拳を入れた。
どうやら、バーストをゼルに弾き返す作戦らしい。
二つの強大な力がぶつかり合った衝撃で、フロア内の壁に亀裂が走った。
ゼルのバーストの方が一枚上手だった。
ジャックはバーストの直撃を受けて体が吹き飛び、壁に体を打ち付けた。
対するゼルは無傷。
「俺の勝ちだな。」
ゼルは拳を上にあげる。
「ふっ。お前やるなあ!俺が負けるなんて随分久しぶりのことだ。」
ジャックは床に尻をついた。
「早く行った方がいいぜ。アンタの連れの剣士、先にジョーカーの所に行ったみたいだぜ。」
「分かった。お前ってジョーカーの手下だけど、悪い奴じゃ無いみたいだな。」
ゼルは階段をのぼろうとする。
「そうだ!待て。俺を倒した褒美をくれてやる。」
ジャックはゼルを呼び止める。
「褒美ってなんだよ。変な物はいらねーぞ。」
「ジョーカーの能力について知りたくないか?」
ジャックは言う。
「教えてくれるのか?」
「ああ。お前らの勝ち目は限りなくゼロに近いんだ。これくらいいいだろ。」
ジャックは一息ついて話始めた。
「ジョーカーの持っている救世の魔石はタウロス。闇を司る魔石だ。」
「闇?どういうことだ?」
「タウロスは闇属性の棒。能力は振った所に闇を引き起こす、という力なんだが奴は自分自信を闇に変えることもできる。」
「・・・意味分かんねえ。つーか何だよそのラスボスじみた能力は。」
「俺だってそこまで詳しいわけじゃねーよ。一回だけジョーカーと手合わせした時に見ただけだ。俺の知っている知識で言うと、闇の中に引きずりこまれた物、又は者は分解されちまうってこと。それと、奴は自らの影をも自在に操れるってことだ。」
「ますます分かんねえ・・・。弱点は何なんだ?」
「そんなことまで分かってたらとうの昔に俺が倒してるよ。」
ゼルは呆れた。
結局、ジョーカーの能力が闇であるということが分かっただけだ。
「考えてても仕方ねえ!弱点は闘ってる最中に見つけるしかねーな!」
ゼルは階段をあがっていく。
パンドラボックス最終フロア−
と書いてある。ゼルは勢いよくその扉を開けた。
「ジョーカー!ルーナはどこ・・・!」
ゼルは目を疑った。
傷だらけのアデムが倒れている。
ジョーカーは椅子に腰掛けていた。
「ゼル君・・・すまない・・・。」
「てめえがアデムをこんなにしたのか。」
ジョーカーは頷く。
「いかにも。ただ、少々弱すぎてつまらかったですがね。」
ゼルの耳にルーナの声が聞こえる。
「ゼル!アデムさんが!」
ゼルが声のする方を振り向くと、そこにはルーナがいた。
透明なガラスケースのようなものの中にいる。
「ジョーカー!ルーナを離せ!」
「それは無理な相談ですね。勝負は賞品が無いとつまらない。」
ゼルの怒りは頂点に達していた。
「俺に負けたら、ルーナを解放すると約束しろ。」
「もちろん、そのつもりです。それが、賞品というものだ。」
ゼルはジョーカーに気づかれないようにバーストのエネルギーをためていた。
バーストを放つ!
光線はジョーカーの体を貫通した。
しかし、ジョーカーの体は黒い気体のような物になった。
「私には効きませんよ。何せ闇ですから。」
ジョーカーは不敵な笑みを浮かべる。
「それより、そろそろですよ。上を見てください。」
ゼルは上を見た。
このフロアには天井がついていなかった。
満月が見える。
「?これがどうしたんだよ。」
ゼルは理解が出来ない。
「アデムさん。思い出しましたよ。あなたのこと。そして今日は満月だ。」
アデムの体は震えている。
「おい、アデム。お前どうしたんだ?」
「逃げる・・・んだ・・・早く!」
アデムの体が少しずつ大きくなっていく。
爪は伸び、牙も生えてくる。
体中に毛が生えてきた。
「ゼルさん、あなたにはこの男と闘って頂きます。」
変化したアデムの姿はまるで狼男のようだった。
「アデムさんは満月の夜だけ人狼に変化するんですよ。」
次回 人狼アデム