第二十六話 「幻想箱8 POISON」
魔石紹介 パンドラボックス−魔法の塔を創ることが出来る魔石。使用者の精神力が必要とされ、大きい塔になるほど精神の疲労が大きくなる。
アデムはジョーカーの部下の一人・キングと闘っている。
剣の実力はアデムの方が僅かに上。
しかし、キングの魔石、ポイズンブレードの前に窮地に立たされる。
「腐って死ぬというのは想像出来ないだろ。俺はジョーカー様に盾突くハエ共を、このポイズンブレードで消してきた。」
アデムは考えていた。
キングを倒す方法を。
(あの剣だけでなく、アイツに接近しただけで体が溶けてしまうのか。思った以上に厄介な能力だな。攻撃を与えるなら遠距離技か。)
「見せてあげるよ。風の力を。」
アデムは言った。
「ほう。風の力か。見せて貰おう。」
アデムは刀を構える。
「風神剣!」
刀の周りが竜巻のような物に包まれる。
アデムは突きの構えをとった。
「風神剣は、風の力を刹那のスピードで打ち出す!まともにくらったら体が粉々だよ。」
アデムは竜巻をキングの方向に向かって飛ばした。
衝撃が走り、キングがいた辺りには砂ぼこりが起きている。
アデムが虎鉄を魔石の形に戻そうとしたその時。
アデムは後ろから何かに斬り付けられた。
同時に、体が焼けるような痛みに襲われる。
「思ったより効いてないな。お前は少し耐性があるようだが。体が燃えるみたいだろ。」
キングは多少負傷しているものの、ぴんぴんしていた。
「何でだ。風神剣をくらってその程度の傷の訳が無い!」
「確かにたいした威力だな。直撃していたら危なかったかも知れない。だが、刹那の速さというには少しばかり速さが足りないみたいだ。」
キングの周りのオーラは時間が経過するごとに毒々しさを増しているようだ。
「そう言えば、救世の魔石には風属性の刀があったな。その刀からの風神剣なら、俺を倒せていたかもしれん。」
キングはポイズンブレードを持ち上げる。
「悪いが、俺はジョーカーやジャックほどは闘いが好きじゃねーんだよ。そろそろ終わらせてやるぜ!」
キングはポイズンブレードを降る。
毒のオーラがキングの体から分離して、飛んできた。「そんな攻撃方法もあるのか。」
アデムは刀で防ぐ。
「これならどうだあ!」
毒のオーラの乱射。
アデムは何とか防いでいる。
「防いでばっかりでいいのか?次第に溶けていくぞ!」
その通りだった。
刀はジュウジュウ音をたてている。刃の部分は少し欠けていた。
突如、アデムの体に違和感が起きる。
体がプルプルと震え出す。
「何だ?もう限界なのか?」キングもアデムの異変に気がついたようだ。
「もう、そんな時間か。これは急いだ方がいいか。」
「時間?何の話だ?」
アデムは震える右手を左手で押さえ付ける。
「この部屋に窓が無くて助かったよ。アイツが現れないで済む。」
キングはアデムの言っていることの八十パーセントも理解できない。
「意味の分からないこといいやがって。この部屋に窓があったらどうなってたっつーんだよ。」
キングは毒のオーラを放つ。
刀は毒の力に耐え切れずに折れてしまった。
「どうだ!これでお前は戦闘手段を失ったって訳だ!」
アデムは落ち着き払っている。
「・・・そうでも無いよ。リスクは大きいが、闘うことが出来る。」
アデムは折れた虎鉄の柄を握る。
「風神よ。大いなる風の力を我に与えたまえ。」
失った刃が再生していく。
しかし、刃は透明だった。「これが風の禁忌の技、風神創造。風を思い通りに使用できるんだけど、救世の魔石以外の刀でやる場合にはリスクとして風神に寿命を数年差しださなければいけないんだ。」
「ふ・・・。しかし、所詮は刃が戻っただけ。先程と何も変わらないぞ。」
キングはほくそ笑む。
アデムはキングに刀を向けた。
「そうでもないよ。僕は君に負けない。」
アデムは走り出した。
「ふっ!俺の周りには毒のオーラが発生しているのだぞ。それは自殺行為だ!」
アデムはキングのオーラに触れれ手前で刀を突き出す。
刀はキングの体に突き刺さる。
「ガハッ!何故・・・何故刀が溶けない!」
「風が溶けるわけが無いだろう。君のポイズンブレードの力はもはや僕には通用しないんだよ。」
アデムはキングの喉元に刀を押し付ける。
「僕の勝ちだよ。おとなしくしてもらおうか。」
キングは刀を払いのける。
「まだだ!ポイズンブレードの能力が通用しなくても、まだ剣がある!」
「君はさっき剣術では僕に劣るって自分で認めてたじゃないか。負けると分かっていてまだやるのかい?」
「俺も剣士だ!敵に背を向けて逃げるような真似はしない!」
キングは剣を振り回す。
毒のオーラはむやみやたらに力を消費しないためだろうか、抑えてある。
キングの剣術の腕は中々の者だったが、アデムには及ばなかった。
ポイズンブレードが床に落ちる。
「ぐ・・・。俺には、剣を握る握力も残されていないようだ。俺の負けだ。」
「君もなかなかだったよ。」アデムはその場に倒れる。
「さっきお前の体が震えていたが、何があったのだ?」
キングは聞く。
「今日の月はきれいだろうね。」
アデムは言う。
「ああ。今日は満月だからな。だが、それがどうしたのだ。」
「満月の夜は駄目なんだ。体の中のアイツが暴れ出す。」
(アイツ?誰のことだ?)
キングはそれ以上は聞かなかった。
「気をつけろ。この先にいるジョーカー様の力は想像を絶する。本気でやらねばまず勝てない相手だ。」
「ご忠告どうも。だけど僕は負けるつもりは無いよ。」
アデムは階段の前までたどり着いた。
「ゼル君。悪いけど先に行かせてもらうよ。僕には時間が無い。」
アデムの風の刀はまだ継続している。
果たしてジョーカーを倒せるのか!
次回 ゼル対ジャック