第二十四話 「幻想箱6 HOPE」
ジョーカー編も長くなって来ました。しかしまだ予定している展開があるので、もう少し続くと思います。
第三フロア
二人はクイーンの能力に苦しめられていた。
ゼルの体には、限界が近付いていた。
これまでの闘いの傷は、全てアデムの薬で応急処置されていたが、完全に回復したわけではない。
逆に、痛みを感じなくなった分余計に体を酷使してしまったのだ。
そして、クイーンの能力によりルーナとルードが現れた。
二人が偽物なのかは分からない。そのため、うかつに手が出せない。
アデムの方を見ても、随分苦戦しているようだ。
自分にとって大切な人間と殺し合いをする。この上ない絶望だった。
ルーナのムチは、神出鬼没。ダンバー武道祭で一度闘っているとはいえ、慣れるのは難しかった。
雷を纏ったムチは、ルードを目掛けて突き進む。
ゼルはレオの力で何とか防いでいるが、そう長くは持たない。
ゼルはレオの鎖部分を利用して、ルーナを縛り付けようとするが、そう上手くはいかない。
(くそ・・・、ルーナを止めるには本当に殺すしかないのか・・・。)
ゼルには焦りが現れ始めていた。
一瞬油断した。
雷がゼルの腹にクリーンヒットする。
ゼルはそのまま地面に倒れ込む。
(駄目だ。コイツがもし本当のルーナで、心を操られているんだとしたら、うかつには手がだせねえ。だけど、このままだと負けちまう。)
不意に、ゼルの記憶が蘇る。ライブ島を出発する前に持ってきた本。
あれには、じーちゃんが編み出したレオの七種類の技が書いてあった。
その中の一つに、確かこんな状況で有効な技があったような・・・。
ゼルは立ち上がる。
ルーナはルードを狙おうとしていたが、ゼルが起き上がったのを見て攻撃を止めた。
どうやら、殺す優先順位を変更したようだ。
ムチをくねくねと動かし、ゼルを襲う!
ゼルは、レオを前に突き出したまま動かない。
突然、レオの炎がこれまで以上に燃え盛る。
炎はレオから分離して、宙に浮く。
まるで、ルーナから見を護る盾のように。
ルーナの姿は段々煙になって行き、そして消えた。
「あら?今何をしたのかしら?」
クイーンは眉をピクリと動かす。
「この技はシールドフレイム。敵の魔力を吸収して、破壊する。成功率の低い技だったんだけど、やっと使いこなせるようになったな。この技で消滅するって事はやっぱりただの幻覚なんだな。」
ゼルはアデムと闘っている女性、ミリーもシールドフレイムで消した。
「どうだ?これで形勢逆転。もうお前の技はネタが割れた。遠慮なくぶっ飛ばせるな!」
アデムはゼルの所に近付いてきた。
「ありがとう。また君には助けられたよ。さあ、クイーンさん。残りはあなた一人だよ。」
アデムはニッコリ笑う。
「・・・。もう、私の負けよ。十分楽しませてもらったわ。」
クイーンは懐からナイフタイプの魔石を取り出す。
「おい、アンタ!言ってることとやってることが違うじゃね−か!」
「これは、違うわよ!このナイフの能力は治癒。あなた達の傷を治してあげるわ。」
どうやら、斬った物の傷を癒す効果が備わっているようだ。
ゼルとアデムの傷はみるみるうちに完治した。
「あんた、いいのか?こんなことしたら、ジョーカーに何されるか・・・」
「そろそろここも潮時ね。私は政府で働くのを辞めるから、別に構わないわ。」クイーンは言う。
「あなた達なら、ジョーカーを倒せるかしらね。直接見れないのが残念だけど、結果が楽しみね。」
ゼルはクイーンに質問した。
「一体、ジョーカーの能力は何なんだ?昨日闘った時、俺には何が起きたのか理解出来なかった。」
「教えないわよ。そんなことしたら、勝負がつまらなくなるでしょ。ただ、ジョーカーのことばかり考えていては駄目よ。」
クイーンは四階に続く階段を指指す。
「次のフロアに控えているのは研究所の中でも一、二を争うほどの実力者、ジャックとキングよ。」
「キングって・・・。何か強そうな名前だな。」
「ええ。しかし、本当に恐ろしいのはキングよりむしろジャック。何にせよ、この二人には気をつけることね。」
クイーンは窓に近付いて行く。
「あなた達とは、またどこかで会いたいわね。」
クイーンは窓から飛び降りる。
「クイーンさん。掴みどころが無かったけど、悪い人じゃ無かったね。」
アデムは言った。
「許せないのはジョーカーだ。人の命をゴミみたいに弄ぶ。」
二人は四階へ足を進める。
ジョーカーとの決戦の前に、強敵が立ちはだかる!
次回 ダブルバトル!