第二十ニ話 「幻想箱4 DARK」
新しい作品の方、考えています。救世の魔石の更新が疎かにならないように、頑張ります!
一階で強敵・エースを倒したゼルとアデム。
ジョーカーのいる最上階まで、あと三フロア。
暗黒の間と書いてある扉を開け、中に入る。
そこは、暗闇だった。光が全く無い。
入ってきた扉は、鍵がかけられたかのように、固く閉ざされている。
「この中で、次のフロアへ繋がる階段を見つけるのは至難の技だね。」
壁を手探りで歩き出す。
常人なら、暗闇で発狂してしまうかも知れない。
「何だ?ここも壁だ。もしかすると、このフロア迷路みたいになってるのか?」
二人は、こまめに言葉を発することで、はぐれてしまうのを防ごうとした。
ゼルは、レオを発動して、炎で辺りを照らそうとする。
しかし、炎はつくものの、周りは明るくならない。
「クソッ!なんか仕掛けがしてあるな。」
ゼルは舌打ちをする。
「ふっ。やっと来たか。エースとの闘いに、随分手間取ったようだな。」
何者かの声が聞こえる。
しかし、暗闇では相手の詳しい位置までは確認出来ない。
「俺の名はスペード。ジョーカー様の部下の一人で、このフロアの番を任されている。」
音が反響する。
ゼルは手探りでスペードを捜す。
「無駄だ。この暗闇では、お前達はまともに闘えないだろう。」
「な・・・、君には僕達の動きが見えているのかい?」
「もちろんだ。俺はジョーカー様から夜行性の獣の目をいただいた。お前達の動きなど、簡単に確認できる。」
金属音がする。状況は掴めないが、スペードが何かをしているようだ。
「俺の魔石はナイフショット。見た目は銃だが、弾は風属性のナイフ・・・と言ってもお前達には分からないか。」
ゼルはレオを正面に構えて、体の向きを動かし続ける。相手の攻撃がどこから来るか分からない以上、こうするしか手段は無い。
「残念。その程度の知恵では、ナイフショットをかわす事は出来ないぞ。」
風の音がする。
ナイフが、ゼルの足元をかするのが分かった。
「ほお。運はなかなか良いようだ。」
一方アデムは声で相手の位置を予測しようとしていた。しかし、慣れないことをいきなり行うのは限界があった。
「このフロアでお前達はくたばり、救世の魔石は政府の物になる!」
ナイフが飛んでくるのが感覚で分かる。
頬をナイフがかする。
後数センチずれていたら首が危なかった。
暗闇では、相手に攻撃をあてるのは至難の技。スペードほどの達人ならなおさらだった。
「ぐあっ!」
アデムが声をあげる。
「どうした?アデム!」
アデムの代わりにスペードが答えた。
「ナイフが足に命中したのさ。足が使えない剣士なんて恐ろしくないな。」
ナイフは短い感覚で飛んでくる。直前まで来た所を、感覚でかわすしか無かった。
「なかなかやるな・・・。このナイフをかわすとは。普通の状態でやったらとても勝てないだろう。しかし、この暗闇ならば話は別だ。」
しかし、何発かは命中していた。出血こそ少ないが、そう何発も堪えられる物ではない。
また、神経や身体に疲れが見え始めていた。
どちらにせよ。そう長い時間は闘え無いだろう。
しかし、現状を打破する術は無かった。例え出鱈目に技を放ったところで、当たる確率は高くない。
それに、アデムに当たってしまう危険性だっつある。ゼルは慎重になり、なかなか行動に移せなかった。
しかし、そう悠長なことも言ってはいられない。
このままでは、負けるのは必至だった。
「さて、今度は十六連射だ。全てをかわしきれるかな?」
ナイフ独特の風切り音。
ナイフがすぐ近くにまで迫っていることを表していた。
ゼルは覚悟をした。
あえて避けず、体を突き出した。
ナイフが体に刺さった。
ゼルはゆっくりと倒れる。しかし、実際は体をギリギリで反らしていたため、ナイフは直撃せず、傷も擦り傷程度だった。
「ふっ。死んだか。剣士の方も動けないようだし、二人まとめてジョーカー様の元へ持って行くか。」
スペードはゼルが動かないのを見て、死んだと思い込んだようだ。
スペードの足音がする。音は段々近付いてくる。それと共に、笑い声もした。
スペードの足音が止まった。しばらくの沈黙の後、スペードがゼルの体に触れた。
その瞬間、ゼルは右腕を動かす。
レオはスペードの腹に刺さった。
「グハア!」
スペードは声をあげる。
鎖を使い、スペードの体を縛り付けた。
「もう終りだぜ、スペード。これでお前に逃げ道はなくなった。」
ゼルはスペードを思い切り殴り飛ばした。
明かりがついた。
スペードは、地面に倒れて気絶している。
アデムは薬を足に使用していた。
「このフロアは君のお手柄だね。僕は何も出来なかった。」
アデムはニッコリと笑った。
この男には緊張感という物が無いのだろうか。
ゼルは呆れてしまった。
「さて、次のフロアへ行こう。あんまりモタモタもしていられないしね。」
パンドラボックス三階−
扉には、と書かれている。
この後、二人を真の絶望が襲う!
次回 究極の選択!