第二十一話 「幻想箱3 RUSH」
魔石紹介 パンドラボックス−ジョーカーの魔石。自分の思い通りのタワーを創れる。しかし、巨大なタワーになればなるほど、精神力が必要とされ、扱いが難しい魔石である。
運よく(?)罠から脱出出来た二人。残す敵は、エースただ一人だ。
「いいかアデム!あいつは殺すな!ジョーカーのせいでこうなっちまっただけ!コイツに罪は無いんだ!」ゼルはアデムに注意を促す。
「分かってるよ。とりあえず、気絶させないとね。」
エースは急に動かなくなった。今まで暴れていただけに、何かが妙だ。
「?コイツ、急に動かなく・・・!」
ゼルが近付いた所、エースは口から光線のような物を発射した。
光線はゼルの肩を貫く。
ゼルは膝地面についた。
「なんだ、コイツ・・・。こんな事も出来るのかよ。」
ゼルはゆっくり起き上がる。
「許せない!人間を、こんな風に改造してしまうなんて。」
アデムは刀を鞘にしまう。
「ゼル君!コイツは強い!だが、必ず弱点はあるはずだ!それを見つければ・・・。」
アデムの元にエースが突進してきた。この巨体のタックルをまともにくらったら、一撃で終わりだろう。
アデムは鞘から刀を引き抜き、そのままエースの体を斬った。
もちろん、殺してしまわないように威力は弱めてあるが。
「高速の剣、抜刀術を知らないのかい?この風属性の刀、虎鉄があれば、神速の剣に昇華する。」
しかし、エースの姿は消えていた。
「な・・・!確かに手応えはあった!エースはどこに行ったんだ?」
ゼルの体が宙に浮き、数メートル先まで吹き飛んだ。ゼルは何が起こったのか理解出来ていない。
「なんだ・・・。今の衝撃は・・・。」
エースは離れた位置に立っている。
「アイツ・・・。今何をしやがったんだ?」
アデムはエースに向かって走り出す。
しかし、またエースの姿は消える。
「まさか・・・。これは!」
アデムは刀を前に突き出し、防御の構えをとった。
刀に衝撃が走る。
アデムはそれを受けきれずに地面に倒れてしまう。
「やはり・・・。ゼル君!エースが何をしたのか分かった!エースは・・・」
アデムが何かを言おうとした時に、三度エースの体が消えた。
「ゼル君!この技を意識して防ぐのは不可能!己の感覚に頼るんだ!」
「感覚に頼るったって・・・、ガハッ!」
ゼルの顔面に衝撃が走り、体が吹き飛ぶ。大木に体が衝突し、勢いは収まった。
「いいか、ゼル君!僕達はあの巨体から、てっきりエースは動きが鈍いパワーファイターだと思い込んでいた!しかし、実際の奴の長所は、爆発的な脚力による、目にも止まらぬ超高速移動なんだ!」
エースの体が消える。
攻撃に入る前兆だ。
「どうすりゃいーんだよ。いくら相手の特徴が分かったって、対策が立てられなきゃどうしようもねーぞ!」
ゼルはレオの鎌の部分で何とか防ごうとしている。
狙われたのはゼルだった。レオにエースの拳(と思われる)が激突した。
炎が掻き消されてしまう。「駄目だ・・・。俺のレオにエースを止める術はない。アデム、お前はどうだ?」
アデムはしばらく考えた後言った。
「僕の技に、一つだけエースを倒せそうな物がある。ただし、リスクも伴うよ。」
エースが消える。
「何でもいいぜ!俺に指示してくれ。」
アデムはゼルの耳元で何かを囁く。
「分かった!少し待ってくれ!」
ゼルはアデムが立っている位置とは反対側に走り出す。
ニメートルほど走った所で、ゼルの体は吹っ飛ばされた。
「・・・駄目か!それじゃあもう一回・・・、」
ゼルは再び走り始める。
エースが姿を消す。
風切り音が聞こえる。
おそらく、これでトドメをさすつもりなのだろう。
ある程度で走った所で、ゼルは停止した。
「・・・この辺だな。」
ゼルの脇腹に衝撃が走る。今までとは比べものにならないダメージだ。
ゼルは何回もバウンドして地面に倒れた。
エースが今度はアデムを倒すため、構えた瞬間−。
エースの腹にエネルギー弾のような物が命中する。
「があああああああああ!」エースは大きな叫び声をあげたあと、立ったまま動かなくなった。
「僕の技の一つ、閃。唯一の遠距離技なんだけど、一直線上にしか使えないんだ。そこでゼル君に囮になってもらって、技が当たる範囲におびき寄せたのさ。」
アデムはゼルの元に歩みよる。
「大丈夫かい?最後の一撃は、かなり威力がありそうだったけど。」
「悪い。ここに来る前にくれた薬、もう一個くれ。」
傷がひどい部分に塗ると、大分痛みが退いた。
「それを使いすぎるのは、よく無いよ。痛みは軽減されるけど、傷は少し治るだけだから。」
ゼルは立ち上がる。
「へっ!もう全快だぜ!次のフロアに進もうぜ!」
かくして、二人は次のフロアに進むのだった。
パンドラボックス五階。
ジョーカーがいるフロア。
ルーナは透明なガラスの中にいた。意識は無いようだ。
「ジョーカー。あいつら、以外とたいしたことないんじゃねーか?一階であんなに苦戦してるんだぜ。」
ジャックは言う。
「あなたも、早く指定位置につきなさい。キングもクイーンも、すでにして準備出来ているのですよ。」
ジャックは面倒臭そうにハイハイ、と言うと部屋の入り口のドアの辺りまで歩いていった。
「俺の出番も無いんじゃね?次のフロアには、スペードがいるんだろ?」
2階−
階段をのぼってすぐの所に、と書かれていると扉がある。
二人はアイコンタクトをとった後、扉に手をかけた。
次の闘いも、熾烈を極めるものになるだろう。
次回 暗闇の闘い