第十七話 「ジョーカー」
初の一日に二話投稿です!あと、気付いたらユニークアクセスが千人を越えてました!ありがとうございます!
日はすでにくれ、月が光り輝いている。
ゼルは、自分がアデムに協力するべきかどうか、悩んでいた。
ルーナにどうするか尋ねた所、素っ気なく行かないと言われた。
ゼルは少し黙ったあと、ルーナに言った。
「なあ、ルーナ。やっぱりいこうぜ。政府はお前にとっても敵だろ。」
しかし、ルーナはゼルを睨んだ。
「それなら、勝手にいけば。あの自己中な人間の言いなりになってね。」
ルーナの言い方に、ゼルはイラッとした。
「何だよその言い方。俺は誘っただけだぜ。つーか、何でお前はそんなにピリピリしてるんだよ。」
「私はアデムが大嫌いなの!私の兄さんは、救世の魔石を守る仕事を誇りに思っていた!なのに、あいつはただ自分の勝手な考えで一族を抜けた!考えが気にくわないわ。」
ルーナはかなり怒っているようだ。
「家を継ぐかどうかなんて、強制されるもんじゃねーよ。お前の方こそ、自分の考えと俺の考えが違うだけで、なんで怒っているんだよ。自己中なのはお前の方だろ!」
その一言が、ルーナを余計に怒らせてしまったようだ。
ルーナは、自分のかばんを抱え、部屋の入口に行く。「おい、どこに行くんだよ!」
ゼルが、それを呼び止める。しかし、ルーナはドアのとってに手をかけた。
「あなたのことを信じて、ダンバーを出た私が馬鹿だったわ。私はあなたに協力するのをやめる!」
ルーナはそういって、部屋を出て行った。
「何だよ・・・。アイツ。」ゼルは呟いた。
ルーナは、暗い道を歩いている。
後悔していた。何であんなに怒ってしまったんだろう。
謝りに行くのも気まずい。行くあても無く、とぼとぼと歩いている。
「こんな時間に、どこへ行くんだい?」
アデムが木陰に立っていた。ルーナはアデムを睨む。アデムを嫌っているのは事実だった。
「どこに行こうと、私の勝手でしょ。」
ルーナは、素っ気なく答えて再び歩き出す。
「さっきのケンカ、聞こえたんだけどね。」
アデムはニコニコしている。ルーナは、その態度が気に入らなかった。
「本当に、僕は嫌われてるみたいだね。君みたいなかわいい子に嫌われるなんて、ちょっとショックだな。」
ルーナは黙っている。
「それじゃあ、僕の話をしたら、少しは機嫌を直してくれるかな。」
三年前−
カプリコーンの後継者がこの世を去り、新たな後継ぎを決めなければならなかった。
最有力候補だったのは、アデムの兄。知能、戦闘力共に彼に敵う者はいなかった。
後継ぎ決定の日−
誰もがアデムの兄が後継ぎになると思っていた。
しかし、実際に選ばれたのはアデムだった。
何故、アデムが選ばれたのか。真実を知るのは長老ただ一人。
アデムは、自らがカプリコーンの使い手になれることを誇りに思った。
しかし、アデムの兄は自分が選ばれなかったことに怒り、アデムを憎んだ。
そして、度々刺客を使って、アデムを殺そうとしてきた。
ある日、アデムは一族を抜けた。
救世の魔石を守るという使命を、兄に託して。
「正直、あの時の兄貴は見てられなかった。僕は、これ以上兄貴を苦しませたくなかったんだ。」
話し終えると、アデムは再びニコニコした。
「僕のこと、少しは分かってくれたかな?」
少し間が開く。ルーナは、アデムに頭を下げた。
「ごめんなさい!そんなこと知らなくて!」
アデムは地面に座った。
「君は、明日の闘いに参加するのかい?」
「ええ!ゼルにも謝らないと。それじゃあ、失礼します。」
ルーナがそういった瞬間だった。
突如、黒い影が三つ、ルーナに襲い掛かる!
ルーナは雷魔法で対抗しようとするが、反応が追いつかない。
アデムが右手の薬指にはめている魔石を発動し、刀を出現させる。
目にも止まらぬ速さで黒い影を斬った。
黒い影は地面に倒れる。
黒い影の正体を見定めようとしたルーナは思わず息を飲んだ。
その生物は頭は狼だが、体はトラのようなしま模様。さらに肩には白い羽が生えていた。
「この生物はまさか・・・。避けてルーナさん!」
暗闇から新たに生物が現れる。その数およそ三十。
全匹が、色々な動物を混ぜ合わせたような姿をしている。
アデムは刀を構える。
ルーナもムチを出現させる。
今度は、暗闇から人が現れた。その姿は、サーカス団のピエロ。
アデムは息を飲む。
「久しぶりだな、ジョーカー。」
アデムは刀をジョーカーに向ける。
「あなたは誰です?私は、あなたのような人物を知らない。ただ、研究所を襲撃しようという輩がいると知り、ここに来ただけ。」
ジョーカーの周りには、とてつもない殺気を放っていた。常人なら気を失うかもしれない。
「本当に覚えていないのかい?僕は、お前のくだらない実験の失敗作で生き残りさ。」
「分かりませんね。今までには数え切れないほどの実験をしてきましたからね。しかし、私は失敗作は全て処分してきた。生き残りなどいないはずですが。」
アデムの額には汗が湧き出ている。アデムが恐れるほどの人物らしい。
「あいにく、僕は生命力が強くてね。何とか君の悪趣味な研究所から脱出したわけさ。」
「アデムさん。失敗作って何の話?」
ルーナはアデムに尋ねる。
「僕が一族を抜けてすぐにね、この街を訪れたときに研究員に捕まっちゃったんだ。そして、くだらない実験に付き合わされた。僕はあの時は弱かったから、無駄な傷を負ったけどね。もう負けないよ。」
「さて、あなた達が我等の敵ということは分かりました。」
ジョーカーは口笛を吹く。それが合図となって、動物達は二人に襲い掛かる。
「さて、この生物達は、私の魔石で作った下僕達です。十分に楽しんでください。」
ジョーカーとの闘いの火蓋が切って落とされた。
次回 卑劣なジョーカー!