第十一話 「決勝戦」
これからは、天下イチ!と交互に投稿していきます。
決勝戦会場。ゼルは、ステージにあがった。
観客からは、声援があがる。ゼルの顔も、思わずにやけた。
「ついにこの時が、やって来ました!!今回のダンバー武道祭も、数々の名場面を生み出してくれました!いよいよ、最終試合が始まります。」
「今回、注目されているのは、ゼル選手!!初参加にして、決勝戦まで勝ち残った強者です!!」
再び、観客から声援があがる。
「対するは!!・・・っ。ルーナ選手です・・・。」
ゼルの時とは一転、観客から罵声があがる。
「魔女が何しに来たんだー!!」
「ひっこめー!!悪魔!!」異様な光景に、ゼルは息を飲んだ。
「あなた・・・!!ここまで来るなんて、よっぽどお暇なんですね。」
ルーナは、周りの声が聞こえていないかのように、しゃべる。
「俺は、君の力が必要だ。救世の魔石の一つ、アリエスはお前が持っているのか?」
ゼルは、ルーナに問う。
「アリエスは、ここには無い。」
ルーナは、語り始めた。
「私は、兄と二人で森で暮らしていた。世間からは、軽蔑の目で見られていたけど、それでも幸せだった。」
ゼルは、無言でルーナの話しを聞いている。
「兄さんは、アリエスを護っていた。あなた達、レオの後継者のために。ある日、政府の人間がアリエスを狙って襲撃してきた。そして、アリエスは奪われて、兄さんはホークという男に・・・。」
ゼルの記憶から、ホークという男が引っ張り出される。確か、リデューとの闘いを止めた入れ墨の男だ。
「私は、政府とホークを恨んだ。だけど、それ以上に許せないのは、あなた達、レオの子孫!!」
ルーナはゼルを指差す。
「あなた達がもっと早く来てくれたら、兄は命を落とす事はなかった。兄さんは、表には出さなかったけど、ずっと苦しんでいたのよ!!私はあなたを・・・殺す!!」
ルーナは本心からゼルを憎んでいるようだ。
(コイツ・・・。兄が殺されたショックで、正しい判断ができなくなっちまってる・・・。だけど・・・、俺に責任が無いとは言い切れないか。)
ゼルは奥歯を食いしばる。
「私は、もしかしたらホークがこの大会に出るかもしれないと思って出場していた。だけど、もう一人の恨むべき存在が出場するとは思わなかったわ。」
ルーナはゼルを睨みつけた。
「それでは、決勝戦開始!!」
審判の合図と同時に二人は動いた。ゼルは、この闘いに勝利することで、ルーナに間違いを気づかせようと考えた。
ルーナは、指にはめた指輪型の魔石を発動する。赤い光と共に、魔石は刺の着いた魔石に変化した。
「この鞭の名前はアイアンデビル。アリエスを持つ前に、練習用に使う鞭よ。」
鞭はくねくねと曲がり、ゼルの体に巻き付いた。動きが読みづらく、避けるのが難しい。
「グアアッ!!」
刺がゼルの体に食い込む。「呆気ないわね・・・。死ね!!」
ゼルはとっさにレオの炎を自らの体に放つ。
「な・・・!!何を・・・!!」
鞭は、どろどろと熔けていく。
「これで、お前の武器は無くなった!」
ゼルは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「魔石を熱で溶かすとは・・・。これが救世の魔石の力か。」
ルーナも、驚きを隠せないようだ。
「しかし、これで私を倒した気になるのはまだ早いわよ。見せてあげる。私が魔女と呼ばれるもうひとつの理由。」
ルーナの足元に、突如光が走った。
すると、ルーナの手元には失ったはずのアイアンデビルがあった。
「どういう事だよ・・・。」ゼルは唾を飲む。
「物質再生と物質作成。アリエスの一族の中でも、一部の者しか使えない特殊能力よ。物質再生は、壊れた物の時間を巻き戻し、元の状態に直す物。物質作成は、異国の魔法でいう属性攻撃を制限無しで出せるもの。」
ルーナの地面から、雷が発生する。
「最も、私が使えるのは雷属性だけだけど。」
観客からは、再び侮蔑の言葉が発せられる。
「魔女の力なんて卑怯だぞ!!」
「魔法の理を無視している!!」
「へっ!!すげーな。それなら、俺も手加減しないで済む。」
ルーナは、ゼルの以外な反応に驚いた。ゼルも、この力を見たら、ルーナを軽蔑の目で見るものと思っていた。しかし、実際は軽蔑と言うより尊敬の目といった感じがする。
「それなら、こっちも凄いの見せてやる。」
ゼルは、レオに力を込める。すると、レオは今までと違った感じの炎に包まれる。
炎は形を作っていく。まるで龍のようだ。
「島を出る前、じーちゃんの倉庫から、レオの極意みたいなのが書いてある本を見つけたんだ。それによると、レオには七種類の技があるらしい。練習してもなかなか使えなかったんだけど、頑張って一つだけ覚えた。それがこの焔龍だ。」
ゼルがレオを投げると、鎌の部分が二つに割れた。
ルーナはかろうじてよけたが、あと一瞬遅れていたら危なかった。
「今の、龍が口を開いた見たいだろ。これなら、負けないぜ。」
ゼルとルーナの因縁の闘いは続く。
次回 決着!そして・・・。