第十話 「炎と水」
少しの間放置してしまい、申し訳ありませんでした。
目の前がぼやける・・・。何かがチカチカ光っている。
回りの空気が変わる。
あいつの攻撃が来る!!
避けないとやばい・・・!!
「グハアっ!!」
体に雷属性の針が刺さる。鈍痛が体を走った。
「威力は抑えてある。俺が殺したいのは魔女ただ一人。無関係の者の命まで奪いたくはないからな。」
ガローネはゼルのもとへ歩み寄っていく。
「降参しろ。これ以上やってもお前に勝ち目は無い。お前の参加目的は知らないが、命を張ってまで貫き通す物ではないだろ。」
ゼルはゆっくりと起き上がる。さすがに雷攻撃が効いているらしい。
「ふざけんな。人を殺そうとしている野郎がいて、それを黙って見てられるわけがねーだろーが。」
ゼルの瞳に光が戻ってくる。
「これは・・・。一体なんだ?」
ゼル自身、何が起きたのか、理解できないようだ。
「なるほど・・・。恐ろしい能力だ。」
ガローネがつぶやく。
「お前、何が起きたのかわかるのか?」
「お前の持っているその鎌。普通の魔石とは違うらしいな。どちらかというと、我々の魔法に近いようだ。」
「どういうことだ?」
「炎属性の特性は、ただただ大きな破壊力。その鎌から放出された炎は、お前の雷の毒を破壊、つまり解毒したということだ。」
ゼルはレオを見つめる。
「やっぱりすげーんだな。コイツ。」
ガローネが口を開いた。
「考えが変わった。お前も魔女と同じく、あってはならない力を持っているようだ。お前も殺すことにしよう。」
ゼルは呆れる。
「ホントに自己チューな奴だな。お前。」
「なんと言われようが構わん!!お前は消えなければいけない存在なのだ!!」
ガローネは足でフィールドに何かを書いている。
「魔法陣という物を知っているか?特殊な紋章の上で魔法を発動すれば、性能を何倍にも増幅できるのだ。」
ガローネが手を差し出すと、地面から水が沸き上がってくる。水は一点に集まり巨大な水の球になった。
「この水玉の中に入ったものは、たちまち水圧でぺしゃんこになるだろう。」
ゼルは後ずさる。
「くくく・・・。逃げることに意味はないぞ。これほど巨大な水の球を避けるのは不可能。逃げ道は無い。」
「・・・。仕方ねーか。逃げるのは止めだ。」
ゼルはつぶやく。
「生きるのを諦めたか。まあ、この状況では、どうしようもないだろうがな。」
「・・・。ちげーよ。その馬鹿でかい水をぶっこわすんだよ。」
ゼルはレオを力強く握る。既に、覚悟はできていた。水は、徐々にゼルに迫ってくる。
「壊す!?その小さな鎖鎌でか?無駄だ!!どれほどの密度だと思っているのだ!!」
ガローネは笑い飛ばす。
「俺は信じているんだよ。このレオと、自分自身の力をな。」
水が後数十センチまで迫った所で、レオを突き出す。
「その距離から一体何をしようというのだ!!」
観衆が、ガローネの勝利を確信したその時だった。
水が大きな音を立てて小さくなっていく。水蒸気も発生した。
「なんだ・・・。一体何が起きたというのだ!!」
「炎をぶつけて蒸発させてやったんだよ。」
ガローネの背後には、ゼルが立っていた。
ゼルは、ガローネの後頭部を素手で殴る。ガローネは地面に倒れた。
「蒸発だと・・・。そんな馬鹿な・・・。」
「俺もまさか出来るとは思わなかったからな〜。やっぱりスゲーよ。この鎌は。」
ガローネは悔しそうに歯を食いしばる。
「最後の一撃、何故素手だった。何故、鎌を使用しなかったのだ。」
ゼルの脳裏にリデューが浮かぶ。
確かに、レオを使っていればより確実にガローネを倒せただろう。しかし、不意打ちで使ってしまったら最悪、命を奪ってしまったかも知れない。
そうしたら、自分も祖父を殺したリデューと同類になってしまう。それだけは嫌だった。
「別に。ただ、俺の気まぐれだよ。」
ガローネの問いに、笑ってそう答えた。
「準決勝第一回戦!!勝者はライブ島出身のゼル選手です!!」
こうして、ゼルは決勝戦を迎えた。
数時間後。
ゼルは決勝戦のステージに立っていた。対するは、魔石研究員の一人、アリエスの子孫、ルーナだ。
二人の闘いが、いよいよ始まる。
次回 ゼル対ルーナ