和美、幽霊を見つける。の巻き
〇八幡小学校正門前(朝)
八幡小学校は住宅街に建つ四階建ての都内では大きい学校。
和美と佐藤は八幡小学校前のバス停でバスから降りて小学校の正門に立っている。
和美の声 「結局私が受けた仕事は小学校の夜間警備だった。通常夜間警備は夕方四時から夜の十時まで となっているのだが、なぜかこの学校では機械警備に切り替えるとセンサーが誤作動してしまい セットができない状態らしい。なので私は夕方から朝までの勤務となる、なんと素晴らしい!」
佐藤 「宮崎さん、ここが勤務地の小学校です。昨日も行ったとおり手旗とライトを返して欲しかった ら、ちゃんと声を出して喋るんですよ。分かりましたか?」
和美はスッ、と目をそらす。
佐藤 「分かったな!?」
佐藤は和美の頭を上から掴み自分に向ける。
和美 「ビ! ・・・・・・はい、はい!」
和美は佐藤に頭を掴まれたままコクコクと頷くと、佐藤は頭から手を離す。
佐藤 「よし、それとー、あ・・・・・・その荷物は何だ。物干し竿みたいな奴」
和美は背中に佐々木小次郎の如く長い棒一本と短い棒二本を背負っていた。
和美 「フッ……」
ニタ~~と笑う和美
佐藤 「あ、やっぱ今の無し。さ、行くぞ」
スタスタと歩き出す佐藤。
和美 「あっ」
佐藤の右足に抱き付く和美。
佐藤 「こら、離せっ」
和美 「う~~~}
佐藤は足を振るが和美は離れない。
佐藤 「分かった、ちゃんと聞く、聞くから離せ」
和美はパッと手を離す、そしてニコーッと笑うとイソイソと棒を組み立て始めた。
佐藤 「ったくー、何を作るつもりなんだかー。んー、灰色の棒を十字に組んでーほう、小さな滑車だ なぁ。それにヒモを通してー背負うのか?」
和美は十字に組んだ物干しざおを戦国時代の足軽のごとく背負うと、リュックから猫が丸丸一匹入 りそうな横長の箱を少し前に出してベルトに固定し、その箱に左右二本ずつと真ん中に一本、滑車を 通した紐をフックで繋いだ。
佐藤 「お前それって……、マストか?」
和美はコクリと頷くと、マストの天辺に付いた紐に護衛艦旗(日章旗)を箱から取り出してフック に付けると思いっきり下へと引っ張った。
滑車がシャー―ッ、と音を立てると護衛艦旗が佐藤の目の前にはためいた。
佐藤 「まさか、今度は信号旗で会話しようとしてるのか?」
和美は又腰に付けた箱を開ける。そこには旗の数字0から9までと、AからZまでの旗が綺麗に並 べられて収まっていた。
和美はその中からアルファベットのチャーリー(C)の旗を左側のフックに付けてヒモを引くと、 和美の左肩から30センチ上ぐらいに小さな旗がはためいた。
因みにチャーリーは肯定と言う意味。
佐藤 「・・・・・・」
佐藤は無言で和美に手を伸ばす。
和美はサッ、と身を引くとチャーリー旗を降ろす。そして素早くユニホーム(U)とオスカー (O)の旗を繋げて揚げた。
佐藤 「入港禁止・・・・・・、近付くなてぇことか? もういい! 職員室に行くぞ」