「ゾクッ」とする話
短編 ~居酒屋~
これは、僕がアルバイトをしていた、
とある居酒屋のお話です。
僕はいつも通り、1人で店の開店準備をしていました。
「おはようー」
「おはようございまーす」
他のスタッフもやって来たので、適当に挨拶を済ませて、開店のためにラジオをつけ営業を開始しました。
ただ、今日はラジオの調子がどうも悪くて営業中にたまに途切れたり、勝手にチャンネルが切り替わったりしていました。
「まぁ、古い店だからしょうがないなぁ
オンボロだし」
「ですねぇー」
と、スタッフと言い合いながら営業していました。
その日は、土砂降りの雨で、雷もなっていたので
それも相まって、誰もその事を気に止めませんでした。
それ以外にも、倉庫の壁に掛けてある掃除用具が、落ちたり
人の視線を感じた気がしたり
一瞬、洗い場の電気だけ消えたりもしましたが
「うわっ、幽霊の仕業じゃね?
怖っ!!」
と、言いながら
内心では、この店古すぎだろ、、、程度にしか思っていませんでした。
営業時間が終わり、手早く締め作業をし
ていた時です、、、
トイレの掃除をしている時一瞬だけ視線を感じた気がしました。
御手洗の時にたまに感じる勘違いの様なものだと思ったのですが、
思い返して見ると、その日の営業は少しおかしな事が多かった。
それを思い出した途端に怖くなってきました、、、
締め作業を終えたスタッフ達もバラバラと帰って行ったので
僕も帰ろうと思ったのですが
トイレの電気を消し忘れていたようで、
中に人が居ないかだけ確認し
電気を消し、店を出ようとした瞬間
「コツ」
小さな物音が聞こえた気がしました。
きっと、気の所為だと思いながらも
視界の端に映る時計を確認すると、
針は、深夜2時を指していた、、
その瞬間、言い知れぬ恐怖と
その日で1番強く視線を感じてしまった、、、
僕は、恐怖で足が竦んでしまったのですが、とっとと店を出ようと動いた瞬間、
「カチャンッ」と鍵を落とした反動で思わず振り返ってしまったんです、、、
でも、後ろには誰もいませんでした
「、、、っはぁぁぁぁ」
僕は、大きなため息と共にとてもホッとしました。
そして、きっと天気が悪いせいで
変に敏感だったんだと思い、
セキュリティのロックを掛けて
店の鍵をかけました。
そして、顔をあげた瞬間、、、
店内の天井から、逆さになった髪の長い女性がこちらを見ていました
「っ!」
僕は、声にならない声を上げ
必死に走って帰りました。
その日、僕はそのアルバイトを辞めました。
後に、お祓いもしてもらいましたが
僕は、なんともなく安心しました。
でも、
あの時の視線は全て後ろじゃなくて
上から、ずっと、見られていたんじゃないかと思うと怖くてたまりません、、、
[完]
いかがだったでしょうか?
少しは、「ゾクッ」としましたでしょうか?
涼しくなっていたら幸いですm(__)m