8→裏
光の消えた魔法陣は薄っなっていき、やがて消えた。
「えっ?不発?」
どこかの誰かが皆の思いを代弁して呟いた。
皆の視線は神に集まる。
「おい、失敗か?ならもう一度発動させればよくないか」
「…………。」
ほとんどの人が困惑の表情を浮かべる中で質問が挙がったが、神は何の反応も見せない。
ーーいや、よく見ればかすかに頬が上がっていた。笑っているのか?
俺は違和感を感じて〈真眼〉を発動させる。
すると、1人。フードを被ったやつが集団を抜け出して離れていく。
集団の中に眼を向けると、そこに本来なら居るはずのないものが混じっていた。
ーー人形。 俺の質問に答えてた奴に似ているが、顔がのっぺりとしていていくつもの目が頭部にある。
うずくまるような体勢でいる為か誰も気付いていない。
「なんだあいつ……」
数は9体。魔法陣の数と一致する。
どうも嫌な予感がしたので、少し人形から離れておく。
丁度その時、神が口を開いた。
「ふぅ。準備は整ったみたいだね」
準備……あの人形のことだろうか。
というか、まだ誰も気付いてないのか?
神は笑みを一層深くして戸惑う俺たちにこう言い放った。
「これより、ゲーム参加の為の選別を開始しまーす!」
皆、状況を理解できていないような顔で神を見上げている。
そして、事が起こる。
召喚された9体の人形の頭部にある眼の全てがカッと見開かれた。
ポカーンとしているやつらをおいて、体勢を低くしながら目立たないようにできるだけ遠くへ離れる。顔見知りのやつもいなかったし、別に、他人に教えてやる義理もない。
それにしても……
「何か裏があるとは思ってはいたが……やっぱ、猫被っていやがったか」
これまでの事が全部嘘か?
そうなると、自分が神だと言うのも疑わしく思えてくる。
……まあ、そこはいい。仮に神だとして、神は何がしたいんだ?
そんな事を考えていると、神は再び口を開く。
「選別、つまりだ。君達の生きる権利をふるいに掛けさせてもらう」
「生きる権利?」
「難しく考えなくていい。僕の出したお題をクリアして生き残ればいいだけさ。もちろん、報酬だって用意させてもらうよ。装備だったり、蘇生だったりね。
そして、君達が賭けるものは、命。
失敗したら死亡が前提のゲームってのが乙だね♪」
神が話している間にも、人形の形態が変わっていき、背中からは触手が伸びてきた。
ーーどこかで見たと思ったら、あいつ、街を荒らしてた奴じゃん?!
というか、あんな化け物がいるのになぜ皆、気がつかない?考えられるのは認識阻害系統の魔法くらいか。
「じゃあ、改めてゲームを始めよう。最初のお題だ」
一呼吸置いて、満を持したようにこう告げる。
「生き残れ、簡単だろ?」
ガッグ、グ、ガアアァァァアアアア!!!!!
その一声と同時に、例の化け物が一斉に動き出した。