5→神さま
……俺は意識を失ったのだろうか。
まるで夢の中にでもいるような、不思議な浮遊感が俺を襲う。
前にも、一度感じたことのある感覚だ。
たしか、一度目に死んだ時だったかな?
ああ、そうなると、俺は異世界でも死んだ訳か。
そんなことを考えていると、不意に全身を殴られたような痛みを感じた。
「ッ!! いってぇ、死者は敬えって親に習わなかったか?!」
「お?まだ残ってたのか。380人か、これで全員かな」
聞き覚えのある声がする。
そこに居たのは、俺を転生させた神様だった。脚を組んだ状態で空中に浮いている。
状況はまだ把握できていないが、少なくとも俺は死んでいるのだろう。
周りを見渡すと視界に入るのは人、人、人。380人と言ったか?
こんな中に一人、遅れてやって来た事もあってか俺に視線が集まっている。
ざっと顔ぶれを見てみるが、知ってるやつはいなさそうだ。
いや、一人いるか……
「よお神。18年ぶりか?」
「えっ、誰?」
忘れられていた。
「君が誰かは知らないけど、じゃあ気をとりなおして、ルール説明といこうか。何処まで話したっけ?」
何で覚えてないんだよ。
お前が俺を転生させたんだぞ。
まぁそれは置いといてとしてもだ。
神が顎に手を置いて考える仕草をしているが、「何処まで」ではなく最初から聞いてないんだか。
「おい神。何処までと言うか最初から聞きたいんだが」
「生憎、僕も一人一人に時間をかけているほど根気もよくないしね。代役に説明させるよ」
そう言って指を鳴らすと俺の目の前に無機質な人形が召喚された。
ーーん?この人形、何処かで見たか?
召喚の完了を確認すると神は俺以外の者に対して説明を続ける。
何処かで見たことのありそうな人形を目の前に考えていると、人形が先に喋り始めた。
「ご質問は何でしょうか」
何というか、s○riみたいだ。
「えっと、それじゃあ……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幾つか質問をし終えた俺は現在、神の説明に耳を傾けていた。
俺が人形にした質問の答えを簡単にまとめるとこうだ。
まずここは、神域、又の名を次元の狭間と言って、神が世界を調整する為の場所らしい。
そもそも世界には異世界と呼ばれる別空間や、平行世界と呼ばれる亜空間などの様々な世界軸があるらしい。
次に、俺やここにいる全員が、例の化け物逹に殺されてここに来たらしい。 ここにいるのはその中でも神が助けることの出来た魂の一部なんだと……状況から見るにここは少し怪しいがな。
最後に、今から神が異世界に召喚してくれるのでそれにあたっての説明をしている所らしい。
ちなみに、一つの世界には容量が決まっているらしく、ここにいる全員を10人ずつに分けて他の世界へ送るらしい。
…………一回目に会った時の記憶が正しければ、俺の知っている神はだいぶ性格が悪かった筈だ。
俺のスキル〈真眼〉だって、「どんなスキル欲しい?」って言われて「死に戻り」って答えたのに「んじゃ、それ以外にしとくわ」だとよ。
お世辞にも良いとは言えない性格だ。
少なくとも今の状況に誰も違和感を感じていないみたいだが、奴は何かしらの行動を起こしてくるだろう。
一応警戒はしておくか。
ちなみに人形は俺が質問を終えると地面に沈むように消えていった。