赤木図書館へようこそ
──さあ行きましょうか、なんだかどこかの城門についてるような重そうでどでかい扉でございましょう、それにこの図書館をぐるりと囲む鉄壁の塀──どんな魑魅魍魎がやってくるかもしれませんから。なにせここは思念の世界、物質界とはちょっと違う。強い結果を張らないと、赤木館主の人生全てが記録されたアカシックレコードを悪用されてしまいかねません。
──この扉をどうやって開けるのか?
へっへっへっ…学芸員の私、古沸妖こそがその鍵です。今はお客様以外に周囲に何の気配もいたしません、今が開けどきささ開けますぞ、えい!
古沸妖が思念を送ると滑らかに、2メートルはある重厚な扉が開いた。観音開きしたその先に、ゴシック様式のお城の全容が現れた。
早く早く入ってくだされ、ささ、お客様、魑魅魍魎が来ないうちに、邪念を持った魂が匂いを嗅ぎつけないうちに、そうそうそれでいいです。それじゃ閉めますぞ、えーい。
──────
──では、こちらのテーブルへ、中はシンプルかつ上品な調度品でしょう、こちらのソファーに座って…。
そうそうごゆるりとお座りくだされ。
おや気がつきましたか、そりゃそうですよね、私の背丈の倍はある絵画ですから。
見たこともないほど美しいでしょう?
よく見ておきなさされ、但し、現世で目が覚めたら忘れてしまいますがね、どうにもこうにもこの世界の美しさは人間の脳みそだと処理能力の限界を超えてしまうそうでね、処理しきれないのだそうです。
でもお客様は今魂です、魂は決して忘れる事がないですのでご安心を──お客様のアカシックレコードに記録されたものは決して消える事はありません。
じゃあこの図書館で聞くことも全て現世で忘れてしまうのかって?
いえいえ、今からお客様に語るのは、宇宙なんてこんなもの、だったら現世で頑張れると思えるような些細な事です。
館主によると宇宙についてなんて高校時代までの勉強でとっくに誰もが学んでしまう、そう難しくないものなんです。だから、現世に戻っても忘れる事はないでしょう。
──ただねお客様、おそらくお客様の想像を超えた理解の仕方が出てきます、というか、なんて言いますか、そうそう「ぶっ飛んでる」
へっへっへっ…それがピッタリな表現でございましょう。
──どうか現世の常識というモノを一度お捨てになって聞いてください。
さて妄想宇宙論の始まり、始まり。