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あなたの常識がくつがえる「学芸員古沸妖の妄想宇宙論」  作者: 赤木 爽人
6.人はなぜ生きるか?
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ある少女との出会い[5]

 それなのにお母さんは穏やかな表情を崩さず、まるでその質問がされることが分かっていたように──話し始めた。

「◯◯ちゃんはお腹の中で水頭症を発症し、頭蓋骨の中に髄液がたまり、脳が上手く発育しないで生まれてきました。

 通常水頭症の赤ちゃんは生まれて間もなく亡くなるそうです。でも、この子は12歳まで生きています。

 奇跡以外のなにものでもないと、お医者様は仰ります。

 外見はこれといって異常は見られないのに、一人じゃ何もできません話す事も食べる事も、見る事も聞くことも、手足や首を動かす事も、脳を使って考える事も…。

 私も生まれて間もない頃は、この子と一緒に死のうと何度も何度も思いました。こんな体に産んだ自分を責めました、何度も責めました。

 でもこの子は成長を続けました。

 自分で呼吸し、自分で心臓を動かし、体内の器官は全く異常がないそうです。

 勿論たくさんの方々に助けられました、本当に感謝しています。

 そして少しづつですが口から入れた食べ物を、胃に入れる事ができるようになりました。

 12年かけてようやくできるようになったんです。


 ──凄く嬉しい!


 健常な子供を見ていると、正直羨ましくもなりました。

 何でうちの子が…でも、普通の事がどんなに素晴らしくどんなに奇跡なのか?

 この子は身をもって教えてくれています。

 それに生理も始まりました。

 人間の根底を司る生殖機能が始まったのです。

 なんと素晴らしい事でしょう。

 この子は命を産めるのです。


 ──生きているのです。


 そして私たちに生きることの素晴らしさ、普通である事の素晴らしさを教え続けているのです。

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