表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの常識がくつがえる「学芸員古沸妖の妄想宇宙論」  作者: 赤木 爽人
6.人はなぜ生きるか?
17/37

ある少女との出会い[4]

 館主はカメラを持つと構えた。

 もう一口お母さんがスプーンで食べさせる。

 シャッターを切る、だが2、3枚撮影したとこで辞めた。

 そして思った。ここまでの状況はビデオを見るであろう福祉に興味をもつ若者たちには必要ない。

 あまりにもリアルで過酷な状況だから。

 そうして、入り間際にお母さんが言った言葉の意味がわかった。

 女の子は生まれてからずっと一人でトイレに行くことも、体を洗うことも髪を洗う事もできない。

 ましてや絵本を読み聞かせても反応しないし、寝付かせることすらできない。

 またこの小柄なお母さんが一人でできる事も限られている。

 ──12歳とはいえ女の子の体つきはもう立派な大人の女性だったからですの。

 つまり、部屋の中で他人に見せられる介護の状況は食べる事くらいなんだと、館主は頭が真っ白になった。そして思った。


「生きるって何だ?」


 そんな、呆然としたままの館主にお母さんがこういった。

「たぶん私たちの写真は使われないでしょう、あまりにも生々しくてリアルですからね」


 ──心を見透かされた気がした。


 そして、お母さんは館主の顔を見て微笑むとこういった。

「だから今日はあなたが聞きたい事を聞いて下さい、疑問に思ったことやなんでもいいです。あなたの為の時間にして下さい」と…。


 館主はドキッとした。


 そしてお母さんは優しい眼差しで館主を見つめたのです。

 しばらく考えて館主は言った。──咄嗟に自分が発した言葉に、後々自分で驚いたそうです。


 その一言とは…

「お二人にとって生きるという事の意味を教えて下さい」──でした。

 初対面の人間の質問です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ