ある少女との出会い[3]
お母さんは女の子の正面に回り込むと、お盆にのせているお粥らしき食事を手に持ち座り込んだそうです。
「こちらへどうぞ、時間ぴったりに食事をさせて下さいとお医者様に言われてるので、食事を始めますね。いいですよ、食事のシーンを撮影して頂いて」
と言って微笑むお母さん。
鞄からカメラを取り出し、お母さんの後ろに回り込むと女の子を見た。
──そして、驚いたのです
背格好は普通の12歳の女の子で、頭もある、口も、鼻も、耳も、眉毛も、両耳も、両目も、可愛いらしくカットされた髪の毛も、両手もある、両足も、胴体も、首も、でも手足はだらんと投げ出されたまま──全く動かない。
首は、背もたれにあずけ曲がったまま。
胴体も座っているというより、入れられている。
目も口も動かない、体の温もりは見て取れる、でも全く生気がない。
どうしたんだ生きているのか? ──不謹慎にもそう思ったそうです
そんな館主を察してお母さんが話し始めた。
「この子は先天性の水頭症で頭の中に水が溜まり、お腹にいる時に脳が上手く発達しなかったらしく、体を何一つ動かせないし一人じゃなにもできません。
勿論話せませんし、見えているのか聞こえているのかも全くわからないし、何も反応できないんです。お医者様がいうには、生きているのが、
──奇跡──
らしいです、この頃ようやく流動食が飲み込めるようになったので家に連れ帰ったんです」
そういうとお母さんは半開きになっている娘の口へとお粥らしき流動食をスプーンで入れて流し込む、と、口の中へと入っていく。