赤木は無宗教です宗教話じゃございません
──おや、お客様、赤木図書館にようこそいらっしゃいました。私は学芸員の古沸妖です。
しかし、よくまあここまで辿り着けましたのう。
なになに──人生に迷ってさまよっていたら、いつのまにか着いていた。
へっへっへっ…そうでございますか、ここに辿り着く多くのお客様が同じでございます。何の心配もいりませぬ。
──えっ、ここはどこだって? へっへっ…ご冗談をもう分かっているから辿り着いたんでしょう? ──でも始めての事で動揺してるって…なんでこんな森の中にどっしりと大きなゴシック様式の図書館があるのか? ──ですと…森は多くの生き物を育みます。われわれ人間だって例外じゃなく、森に大地に地球に宇宙に生かされているんですから赤木館主は森に抱かれるようにこの図書館を建てたんですな。
ゴシック様式に意味はありません。
所詮見栄えは単なる飾りですから、大切なのは中味じゃないでしょうかね?
来た人が驚いたらそれが嬉しい…それだけの事でこの重厚で城みたいな作りにしているだけでございます…へっ…ちょっとした洒落っ気ですな…。
お前は何で燕尾服など着ているのか? ですか?
そうですな、この図書館はあの世にある赤木館主のアカシックレコード(霊的な記憶庫)とつながっていて、私がそこから物語を呼び出す場所ですから、その学芸員が上品な格好をしていないと困りますがな。これでも人間の年齢にしたらもう千六百五十二歳にもなりますかね、でも、心は老いちゃいません、いませんよ、見た目はそれなりに──頭髪なるものは随分昔に無くした、ですがこの白いちょび髭は愛嬌で残してあります…へっへっへっ。
現世で、指導霊やら守護霊やらと呼ばれているあれですよ、しかーし私は学芸員。
さあ中に入りましょう…別に何ら怖いことなどありませぬ、怖がりは私だけでよろしい、こわいよう、コワイヨウ…古沸妖…ってね。
人生のほんの一休みをしていきなされ…