異世界の旅人より
いつからだろうか
自分が、自分ではないと
いつの間にかと、考えない
自分を認めることはせず
気がつけば暗闇の中にいた
価値を人から与えられようとする
現代的な思考のせいだろう
人から否定されることが
何よりも
生きることよりも
死ぬよりも、恐ろしいと
気がつけば足場が崩れていた
生まれ持った無駄に狭い視野で見た世界
会社と住処を移動するための
道路のアスファルトだけだった
唯一、立った場所だって
ベランダの手すりの上だった
ならば飛び立てばいいではないか
翼なら確かに生えていた
信頼し、空を飛べる翼があった
見上げれば
頑丈なロープですらも下がっていた
しかし、自ら飛び降りる
望遠鏡は地面に向かって固定されている
確実に成功する、悪役への紙切れ一枚の復讐と
必死で手を伸ばしてくれた人へ
自分の価値を証明せずにはいられない
現代的な思考も人を殺す
加速度数値を上げていく
空気で私が擦り切れる
その瞬間だけ私は輝く
他人のために私は...
人のために、生きた世界に私はいない
最初から、この世界に私はいなかったのだ
落ちた先は異世界
非現実的な世界への、旅立ちを求めるならば
現実という、足枷など足ごと切り落とす
傷つきたくない逃亡など
虹の先に辿り着いても
そこが現実となり潰される
何回生まれ変わろうとも
反則の能力を振るえども
救われない
報われない
幸福を求め生きるはずが
幸福になるのが恐ろしい
一般的に、幸せな
価値観にそって行動し
そこに自分などはいない
非現実を旅する私
現実を見下ろすように生きるあなた
何がどう違うのだろうか
フィクションは現実だ
あなたがいま、観測者だ
求めるべきは
現実的ではない 現実だ
価値観ではない 価値なのだ
人と比べることに意味はなく
比べて得たその幸福に呆れ返る
ノンフィクションにいないあなたが
いま異世界へと迷い込む
憧れ、渇望した世界で
何も知らずに生きていく
そしてその世界がどんな世界かを
思い浮かべて目を開く
知らなかった
この世界はこんなにも青かったと…