表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/26

三番員、異常なし!

 翌日、良行は久し振りに残業していた。昼過ぎに松崎から連絡が入って、時間を稼ぐため、今日はしっかり仕事をしておくようにと大崎分団長からメッセージが入っていたからだ。

「三島っ、珍しいこともあるもんじゃのー。消防で忙しんじゃなかったんか?」

 主任が怪訝そうな顔をしながらも、少し嬉しそうに話しかけてくる。

「再来週、じゃったかの?」

 主任は主任なりに、良行のことを心配してくれていたらしい。この巨大な生き物のような工場では、一人の仕事の遅れは全員に降りかかってくる。早朝に作業を進める良行を見続けて、主任の意識も少しだけ変化してきたようだった。

 残業を終えて帰宅すると、良行はすぐに屯所へ向かった。

 訓練中止の知らせが入っていたにもかかわらず、14、5人の団員が屯所に集まっていた。大崎分団長はその中心にいて、さまざまな指示を飛ばしているようだった。

「ヨッちゃん、大谷救出作戦、まとまったで」

 松崎がニヤニヤしながら近付いてくると、その作戦の詳細を良行に教えてくれた。

「橋本班長の情報によれば、やっぱり大谷の仕事、そうとう大変な仕事らしい。そこで、来週の土日に、大谷を手助けして一気に仕事を片付ける作戦を立てたんじゃ。請け負った会社から、班長が了解を取り付けたそうじゃ」

 松崎は、その作戦を、さも自分が立案したように話し続ける。

「それと、もう一つ、大事なことが分かってのー。キーポイントは、サエちゃんじゃった」

「サエがどうかしたんか」

「関西の芸術家というのは、サエちゃんのいた大学の講師だったらしくて、おまえの知っている平野絵理さんの直接の師匠らしいんじゃ。それに、サエちゃんもその人物と師弟関係にあるそうじゃないか。これがどういう意味か分かるか?」

 そんなこと聞かれて、ワシに分かるか。それに、どうしてこいつが平野絵里の名前を知っとるんね。

 良行はそう言いたい気分を押さえて、松崎に説明を急かした。

「前置きはええから、先を話せや」

「そう、せくな。工期、もしかしたら何とかなるかもしれんのじゃ。施主の瀬戸町も芸術の町を目指しとるんで、仕上げを完璧にしたい。その辺りからサエちゃんの名前が出て、京都にいる親友の名前も分かって連絡を付けられたんじゃ。これがどういうことかと言うと、もし仮に、大谷の仕事を手助けする作戦が失敗しても、ある程度許容範囲があるっちゅうことじゃからな。これは、ワシの情報網から仕入れたネタじゃけ間違いない」

 松崎は得意げに説明する。

「ええから、早く説明しろ」

 良行は苛立ってくる。

 どうせ、おまえの情報網いうたら、新聞屋の今橋さんからの情報じゃろう。それぐらいは察しが付く。もしかしたら、陰で今橋さんも動いてくれとんのかもしれん。

「分かった分かった。つまり、工期は、その芸術家しだいというわけで、今、班長は京都から帰りょうる途中なんじゃ」

「それじゃ班長、大谷のために、京都まで行ったんか?」

 良行は思わず絶句してしまった。

「それで、うまくいったんか?」

「そりゃあ、橋本班長が帰り次第分かろうが」

 良行は松崎のその言葉を聞いてがっかりした。

「なんじゃあ、まだ分からんのか」

「ヨッちゃん、人の話は最後まで聞けよ」

 松崎は、まだ説明が終わっていないとばかりに話し続ける。

「もう一つ、問題があったじゃろう」

「付き添いか?」

「それっ。こっちの方は、消防団の嫁さん連中が助けてくれることになってなー。ノンちゃんも含めて、10人が代わる代わる特別体制で付き添いしてくれることになったんじゃ。今までの埴生分団なら考えられんことでぇ」

 松崎は自分の言葉に酔ったようにうっとりしている。

 この調子ぃが、と思ったとき、屯所のドアが開いた。完熟した橙のように顔色をほころばせた橋本班長が息を切らせて飛び込んできた。

「うまくいきました」

 橋本班長の大崎分団長への報告を聞いて、屯所へ詰めかけていた埴生分団の全員が歓喜の声を上げた。それぞれに肩を叩き合い、包容しながら喜びを分かち合っている。指導員講習会の成功が、やっとこれで完成したかのようだった。

 翌日、大谷が参加しての訓練は、先週までの訓練が戯れ事だったと思えるほど熾烈を極めた。仲野県指導員は、49秒の壁をさらに越えるべく、良行たちに激しいトレーニングを課した。

 まさか、ここまでするとは思わなかった。

 良行たちは、壮絶な訓練に絶句している。

 2重巻きホースを持った団員が、良行たちのスタートと共に一斉に動き出す。

「ちんたらするな。遅いことは、でんでん虫でもできる!」

 保さんは、陣頭指揮に立って、団本部に掛け合って揃えたもう一台の小型可搬式ポンプでのセッティングをしている。

 休憩時間を取る余裕などない。

「撤収!」がコールされると、その横にセットされたポンプ操法訓練セットを使って、すぐに訓練が開始される。この過酷な訓練が課されるようになった理由には、先の指導員講習会でのある事情が背景にあった。その背景とは、鏡庄分団の記録が、「節度」を記録に含めて計算した埴生分団の成績と同成績だった事だ。 

 エンドレスの阿鼻叫喚が埴生中学校グランドの夜空に轟いている。

しかも、大会までの二週間、「訓練後の絶対禁酒」という大酒飲みの揃った消防団にとっては過酷な条件まで付けている。それと同時に、訓練に常時参加してくるようになった石橋さんがビデオ係を受け持ち、その日の訓練を徹底的に分析するというプログラムまでも加わった。そのビデオに加えて、去年の全国大会を納めたビデオも持ち込まれ、イメージトレーニングが開始されたのだ。

「このビデオを見たら、節度だけぴしぴし決めて完璧にこなして45秒、というのが納得できょうが。資器材の善し悪しでタイムは決まるけど、おまえらにはそんな事を気にするより、一回でも多く走り込んで、操法を体に染みこませる必要がある」

 訓練中、仲野県指導員は、理由もなく何度でもやり直しを命じる。そのため、実放水のポン操訓練は、選手だけでなく、支援する団員たちにも苛酷な訓練を強いることになった。

 金曜日までの訓練は、埴生分団の全団員に地獄絵図そのままの鍛えを強いた。

 そして、問題の土曜日が来た。

 屯所前には、土曜日に休日を取った団員15名が早朝から詰めかけている。なぜかその中に、秋本冴子もいる。

 大崎分団長の訓辞が始まった。

「埴生分団の諸君、日頃お仕事のお疲れに加えて、連日の訓練、ご苦労様です。それにもかかわらず、今日はポン操要員の大谷君を手助けするため、このように集まって下さり、感謝の言葉もありません。これより、瀬戸町に向かい特別任務を開始します。今日の講師として、画家の秋本冴子さんをお呼びしてます。どうぞ、こちらへ来て、今日の作業の打ち合わせをして下さい」

 大崎分団長から呼び出された冴子は、現場の見取り図を団員の前に大きく広げた。

「この作業は、通常の方法では、今日集まってくださった皆さんをフル活動させても都合2日は掛かりますが、建設会社で設計士をしている三好さんが専門家の助言を聞いた結果、この作業を1日で終了させることができる工法が見つかりました。それでも、大谷さん一人では、おそらくこの作業を終了させるのに、突貫工事をしても2週間は掛かるでしょう。その準備作業を1日の作業で終えて、大谷さんが2週間以内に工事を終了できるようにするのが今日の作業の目的です」

 大谷によれば、アルバイト8人を雇って、工期ギリギリに間に合わせるため、3週間で仕上げる予定だったそうだが、トッちゃんの妊娠中毒症の付き添いで、致し方なく工期の遅れを覚悟していたようだ。

 大谷は、俊美が倒れたと報告を受けたときの気持ちが忘れられない。

「分団長…」

 言葉にならない声が、世界を支配していた。

「ワシは、どうなってもええんじゃ」

 能島周辺の海水浴場には、たいてい発泡スチロールを材料とした筏が用意されている。その筏に乗って、子どもたちは忍者の術の定番、水渡りの術をする遊びがある。走り出そうとした大谷の足は、巨大な入道雲を背景にして白波を立てて沈んでいく子どもたちの水渡りの術のように頼りない。

 橋本班長は、今の状態じゃったら、医者に任せときゃあええと言うとった。ワシは、その言葉を信じた。

 全身痙攣?

 嘘じゃろ?

 俊美の病院へたどり着くまで、我が身の不甲斐なさを呪った。

 でも、病室から出てきた俊美は、さばさばとした表情をして辺りを見回していた。こいつは、生命の危険を冒してまで、ワシの行くべき未来を祈ってくれとったんじゃ。

 そう思った瞬間、ワシは自分のことしか見えとらんかった自分を恥じた。

 救急車に乗って能島大橋を渡っていく時、俊美の手を握り続けていた。じっとりと汗ばんだその手を愛おしく感じるワシがいる。

 尾道で俊美の入院手続きをして洗面具を買ったとき、その真新しいプラスチックの洗面器にワシの顔が映っとった。眉をしかめて、深刻な顔をした情けない顔じゃった。売店からの帰り、心配そうな橋本班長とヨッちゃんに会うた。

 どうにもならん。

 諦めの気持ちだけがワシを俯かせる。橋本班長とヨッちゃんの気持ちは痛いほど分かっている。

 でも、どうせい言うんね。

 それからしばらくして、病院の仮眠室でうたた寝をしているときじゃった。橋本班長から電話があった。信じられん思いじゃった。橋本班長は、ワシの仕事の細部まで目配りしているらしく、必死に頼み込んでくる。

「大谷っ、もう一回だけ、ワシを信じてくれ」

 その声には偽りがなかった。

 しかし、この現実がワシのわがままを許してくれるんか?

 黙って病院の公衆電話に受話器をかけたとき、通路の向こうで俊美がワシの様子をじっと見とった。

「みっちゃん、それでええん?うちは大丈夫じゃけ、消防団のみんなの気持ちに応えてあげて」

 大きくなったお腹をさすって、俊美は精一杯の笑顔を見せてくれた。もし、あの笑顔を見てなかったら、どうなっとったじゃろう。それまでは、俊美のことしか考えられんかった。

 限界を超えて走りきっているヨッちゃん、機敏な動きに磨きをかけ続ける松崎、指揮者としての責任感を全うしようと奮闘する橋本班長。弱小分団から必死で脱皮を計ろうとしている大崎分団長や保さん。頼りないワシらを最後まで諦めずに教え続けてくれた仲野県指導員。ワシらの訓練をサポートし続けてくれた植野部長や野島班長、三好さん、石橋さん、智史さんたちの想い。

 ワシは、そのときに誓うた。

できる、絶対やらにゃあいけん。

 大谷は、冴子の指図を聞きながら、生まれてくる子どもに思いをはせていた。

今日の作業が成功すれば、大谷は目地を塗る作業だけに集中できるため、工期の期日に充分間に合うことになる。つまり、それは、大谷が大会に出場しても支障がない状態を作り出せるということを意味している。

「大まかに分けて、タイルの色分けをする班、下地を作って塗る班、下地の所へタイルを運ぶ運搬班の3つの班に分かれます。特に、下地を作って塗る班は、大谷さん本人の指導で慎重に作業を進めて下さい。色分け班と運搬班は私が指導しますから、それぞれの指示に従って下さい。打ち合わせは以上です」

 4台のワゴン車と大谷が材料を満載した大型トラックで埴生屯所を出発したのは、午前8時を過ぎていた。

 瀬戸町の美術館は町が力を入れていると言うだけあって、かなり凝った造りをしていた。問題の大谷が請け負ったタイルの壁面は、美術館の顔とも言えるロビー正面にあり、すでに足場を組んだ高さだけでも8メートルはある代物だった。長さは優に12メートルを超え、その規模はおそらく西日本一になるだろうと言われていた。

 その規模に圧倒された素人衆団の団員たちは、あっけにとられて壁面を見つめていた。

 これをやるんか?

 良行は、初めて見る壁面の広さに、他の団員と同じように圧倒されている。

 団長が集合をかけた。

「色分け班のチーフは向井保副分団長、秋本さんには保さんと呼んで頂ければいいと思います。運搬班のチーフは植野部長、植野さんでいいでしょう。下地を塗るチーフは野島班長、左官屋を本職としてしてますから期待できます。野島さんでいいでしょう。工法の指導は三好さん、全体の指揮は秋本さん、監督は大谷本人がします。団員諸君は、当初の予定通りそれぞれの持ち場へ散って作業を開始して下さい。以上、別れ!」

 消防団らしいのは、分団長に敬礼しているところぐらいで、団員はそれぞれ思い思いの作業服に身を包んでいる。

 良行は気恥ずかしさも手伝って、冴子の受け持つ色分け班、運搬班には所属せず、野島班長をチーフとする下地塗り班に所属した。土曜日の仕事を休めたのは、千里の父親であり良行の叔父が工場に手を回して、良行の代わりに作業する社員を派遣してくれたからで、この作戦には大勢の協力者が関わっている。

 大谷は、野島班長と現場での入念な打ち合わせをしている。タイル職人の使う道具は左官職人と似たようなものを使うが、この現場ではもっと大規模なものを使うことになっているらしい。良行は、直接下地を塗る作業をするのではなく、下地に使うモルタルを練ったり、それを運び込む作業をする予定になっている。

 冴子は、別の意味で、この作業に興味を持っていた。

 モザイク風に組み立てていく本格的なタイルの壁画。原画を描いた水谷一正画伯は、冴子と平野絵理の師匠であり、電話の打ち合わせで色遣いについては冴子に一任すると言ってくれた。水谷画伯にとっても、意外なところに期待していた画家の一人、秋本冴子がいたことに驚き、その才能を確認するためにもとこの仕事を冴子に任せてくれたのだった。

 責任重大。

 気合いを入れた冴子は、色分け班を自由自在に使って、使用するタイルの組み立てを指揮した。色遣い、細かいタッチについては、自ら大谷の指導を仰いで作業に当たった。その作業は、目地を埋める作業を計算に入れての緻密な作業だった。

 この大作の壁画に一人で挑んでいたなんて、大谷君、本当は芸術家の才能があるんだわ。

 冴子は、タイル貼りに熱中しながら、大谷の仕事ぶりに舌を巻いていた。

 昼近くになると、分団長の奥さんが指揮する炊き出し隊が美術館に到着した。ノンちゃんも参加している。運搬班でへとへとに疲れた松崎が、真っ先に炊き出し隊を見つけて大崎分団長に報告した。

「集まれ!」

 大崎分団長の命令は絶対だった。仕事に熱中していた冴子は、舌を鳴らして、仕方なく従うしかなかった。

「これより1時まで休憩。以上、別れ!」

 良行は、まだ作業に熱中していたい冴子と一緒に昼食を取った。冴子は、しきりに大谷の仕事ぶりに感心している。

「日本の職人て、世界一って聞いてたけど、大谷君てすごいね。彼、芸術家よ」

 目をキラキラさせた冴子は、昼食を食べ終わっても興奮を隠さない。

「サエ、それじゃあ、いつか大谷にタイル画を頼んでみたらえかろうが」

 良行が冗談めかして提案すると、冴子は夢みるような瞳で頷いている。良行は冴子の居場所がここにあるのだと実感した。

 昼からの作業は順調に続いた。文句を言う団員は誰一人いない。全員が一丸となって仲間を守るために汗を流している。

 モルタルを練っている良行の所へ、運搬班の松崎がやってきた。

「おまえ、すごい彼女を持ったもんよ。何でも水谷一正画伯って、日本画壇の大家らしゅうて、サエちゃんはその大家に目をかけられとる新進の画家じゃてな。その内、名前が変わって、三島画伯って呼ばれるようになったら、おまえ鼻が高いよな」

 良行には考えてもいないことだった。

 三島画伯じゃと?

 良行は、松崎にからかわれているとしか思えなかった。

「そんな事、考えたこともないで」

 良行は素っ気なく松崎に言い返した。

 松崎が作業に帰っていくとき、まだ春先の冷たい水でモルタルを練り上げていた良行は、スクリューの付いた工具を一心に回しながら、自分の存在について考えた。

 ただの職工見習い。半人前。やっと口をきいてもらえるようになった存在。

 自分の存在がひどく小さく見えてくる。

 サエとオレと、どこが違うんじゃ。

 練り上げたモルタルの堅さを確かめてもらうために、大谷を呼んだ。大谷はモルタルの中に指を突っ込んで感触を確かめている。

「これぐらいでええ」

 背中を見せて立ち去ろうとする大谷に、良行は問いかけた。

「おまえは芸術家か?」

 立ち止まった大谷は、怪訝そうな顔をして答えた。

「職人じゃけど」

 その時、主任の言った言葉が頭に浮かんだ。

 厚さ30ミリの鉄板に、半径80センチの円を描く。その円をガスで切り抜いて、その回りに15個のボルトを締め込めるように直径3センチの穴を開け、さらにそこに曲げの加工が加わる。

「誤差が出るのに気付いたか?」

 人の一生に明確な答えなんてあるわけがなかろう。誤差に気付いとりゃあ、それでえんじゃ。

 良行は、ふいに笑えてくる自分が好きになった。

 作業は、慣れないことも手伝って予定を超過し、夜を徹して続けられることになった。

 真夜中には、集中力を切らさないため、大崎分団長から栄養ドリンクの差し入れがあった。良行は、睡魔に襲われながら、まるでゾンビのようにモルタルを練りこむ作業にだけ集中していく。練り込まれていくモルタルがあざ笑っていた宮地の顔に重なって、際限なく続く作業に気迫を籠もらせていくようだった。

 美術館の正面玄関が明るくなってきた頃、突然、「集合!」の号令がかかった。団員の誰もが歓喜に輝いた眼をしている。

目地塗りを残して完成したタイルの壁画を見た団員たちは、自分たちには考えられないような大きな力があることを実感していた。その圧倒的な壁画の前では、人は誰もが小さな存在だった。しかし、それを作り上げた人間が自分たちだと分かったとき、その小さな存在の中に無限の可能性を秘めた人という存在の大きさを実感させられるのだった。

 大谷は感涙して、参加してくれた団員一人一人に、心を込めて握手して回っている。

「ありがとう」

 良行は大谷の握手に力を込めて応えた。それ以上の言葉はいらなかった。

 参加した団員は、屯所に帰り着いて、仲野県指導員から言い渡された禁を破っての打ち上げをした。誰もが美酒に酔っている。良行は、その打ち上げが済んで、冴子を自宅へ送り届けているとき、

「サエ、いつか必ず大谷に、自分の作品を使ったタイル画を描いてもらえ」と真顔で勧めている自分に気付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ