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5.花火の後に

5.花火の後に


 良介と弘子は押上で電車を降りた。博子は京成へ乗り換えるため、良介は地上へ出るために。

「ねえ、ちょっと飲み直さない?お店ももう、落ち着いたでしょう」

 改札へ向かおうとする良介に弘子が声を掛けた。

「いいけど、終電までにはそんなに時間がないよ」

「だから、軽くネ…」

 良介と弘子は二人で改札をくぐり、地上に出た。既に人通りはかなり減っていた。

「時間がないから早く入ろう」

 良介は出口からすぐの『ロックボトム』というビールバーに弘子を連れてきた。そして、ウエスタン風のドアを開けて中に入った。アメリカンテイストの店内は常連客でにぎわっていた。空いているテーブル席に着いて、良介はコロナを、弘子はレモンビールを、おつまみに生ハムとフレッシュモッツァレラのバジリコサラダを注文した。

「幹事さん、お疲れ様」

「ありがとう」

 良介と弘子はお互いのビールボトルを合わせて乾杯した。


 上野でみんなと別れた小野寺と純は山手線に乗り換えて池袋まで来ていた。ここから、純は東武東上線に、小野寺は西武池袋線に乗り換える。

「小野寺さん、どこか気の利いたお店を知っているかしら?」

「ん?どうしたの?飲み足りない?なら、任せて。この辺りは庭みたいなものだから」

「能書きはいいから早く案内して!」

 小野寺は東口の鳥料理店『鳥造』に純を連れてきた。店内はそこそこ混み合っていたが、4人用のテーブル席に案内され、小野寺は常温の日本酒を、純は生ビールを、おつまみに手羽先ともも肉のたたきを注文した。

「ところで柳瀬さんって家はどこだっけ?」

「東松山」

「えっ?終電間に合わないんじゃないの?」

 そうは言いながらも、小野寺はある種の期待をしていた。つまり、終電に間に合わなければタクシーで帰るか泊まるかしかない。東松山までタクシーじゃいくらかかるかわからない。と、言う事は…。小野寺は思わず、口元が緩んでしまった。

「バーカ!実家が北池袋なの!小野寺さん、今、なんかいやらしいことを考えたでしょう?」

「い、いやらしいことって…。まさか」

 小野寺は自分の下心がすっかり見透かされていたことに狼狽えながら、酒のグラスを口に運んでごまかそうとした。

「いいわよ。一度くらい付き合ってあげても」

 そんな小野寺の目を見つめながら純が言った。

「えっ?」


 時計の針が既に12時を回っていた。

「ねえ、終電って何時なの?」

「11時50分くらいかしら」

「えっ?じゃあ、もう間に合わないんじゃない」

 良介はそう言って時計をはめた腕を弘子の前に出した。

「あら!本当だ」

 そう言いながら、弘子はあっけらかんと笑っている。ずいぶん酔っているようだ。良介は困った。こんな弘子を置いて帰るわけにもいかない。

「そろそろ帰ろうか?」

「どこに帰るの?私、もう電車がないのよ。日下部さんちに泊めてくれるの?奥さんに怒られない?」

「タクシーで送るから」

「本当?本当に送ってくれるの?変なところに連れて行ったりしない?」

「大丈夫だから」

 良介は弘子の手を取って店を出た。そのままタクシーを拾うと、弘子を詰め込み、自分も乗り込んだ。

「町屋まで」

 タクシーに乗ると、弘子は良介にもたれかかって眠ってしまった。良介の右手に自分の左手をしっかり絡めて。


 純は小野寺の手を引いて、ホテル街を歩いていた。

「ちょっと、マジ?」

「なにを今更、怖気付いているの?男でしょう?覚悟を決めなさいよ」

 そんなやり取りをしながら、純は手頃なホテルへ入って行った。エントランスで適当に部屋を選んで鍵を受け取った。部屋に着くと、小野寺は先にシャワーを浴びた。

「柳瀬さんがこんなにオープンな女性だとは知らなかったなあ…」

 小野寺がシャワーから出てきてベッドに向うと純は既に大鼾をかいて眠り込んでいた。

「オイオイ、マジか!それじゃあ、いったい誰がこいつを慰めてくれるんだい?」

 小野寺は既に思いっきり膨らんだ下半身を見つめてその場に立ちすくんだ。







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