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3.席順

3.席順


 純は大江戸線の蔵前で浅草線に乗り換えた。駅も地上も既にかなりの人が居た。本所吾妻橋の駅に着いて電車を降りた。地上に出ると、すぐに良介を見つけることが出来た。

「良ちゃ…」

純は手を振って良介に声を掛けようとした。しかし、良介の隣には弘子が居た。そして、弘子が先に純に気が付いた。

「あっ!柳瀬さん、久しぶり」

弘子が手を振った。良介も気が付いて、微笑み掛けてきた。そして、軽く手を振った。

「遅くなってゴメン」

 純が到着したのは、まだ5時前だったのだけれど、わざとそういう言い方をした。

「大丈夫。まだ5時前だよ」

 弘子がそう言った。純は引き攣った笑みを返した。そこへ、小野寺と名取がやって来た。

「日下部さん、あそこの花の舞がもうやってますよ。なので、席を取っときました」

「おい、新人君、さも自分が手柄を立てたように言うんじゃない」

 勇んで報告をする名取を小野寺のこぶしが襲った。

「そんなことはどっちでもいいよ。じゃあ、行こうか」

 良介がそう言うと、みんな名取の後に続いた。純は良介の腕を引っ張り、自分の方に引き寄せた。

「ねえ、なんでみんな居るの?」

「えっ?」

「私、良ちゃんと二人っきりだと思っていたのに」

「どうせなら、みんな一緒の方が楽しいでしょう?」

「それはそうだけど…」

「さあ、行こう!」

 純は渋々良介の後をついて行った。


 店に着くと、良介の隣に弘子が当たり前のように座った。純は良介の向かいに座った。純の横には小野寺。その隣に名取が座った。いつもそんな配置になる。純は良介の隣に座りたいのに、いつも弘子に譲ってしまう。

「優ちゃんと修二は?」

 小野寺が良介に聞いた。

「二人とも現地に直行するって」

「ふーん…。ところで、お前たちって付き合っているのか?」

 そう言って、小野寺は良介と弘子の方を見た。

「えっ!私たちが?今更、おかしなことを言わないでよ。そんなことあるわけないじゃない」

「そうなのか?俺に言わせれば、お前たちは世の中の恋人たちのお手本みたいに見えるけどな。いつも、並んで座ってるし」

「そんなの偶然だよ」

「違うよ。私は日下部さんの横が好きだから、いつも隣に座るんだよ」

「そうなの?」

 小野寺の言う事を否定しようとする良介をよそに、弘子がケロッと言った。それには良介も驚いた。思わず顔がにやけた。すると、テーブルの下で正面から純のヒールを履いた足が飛んで来た。

「痛っ…」

 良介が純の方を見ると、純はそっぽを向いて知らん顔をしている。

「どうかしたの?」

 弘子が良介の方をうかがう。

「ん?なんでもない」

 良介は何が何だか解らないまま、店での時間を費やした。


 花火が始まる10分前。良介たちは瀧沢のビルにやって来た。良介は事務所を覗いて専務に挨拶をした。もう岡島社長も来ているのでと、屋上へ行くよう勧められた。

「なあ、エレベーターは無いのか?」

 小野寺が言う。

「そうね。この階段はちょっとキツイわね」

 弘子が息を切らしながら訴える。ビルは5階建て。エレベーターはついていない。そのうえ階段は勾配がきつく、屋上へ上がるのは一苦労だった。

「まあ、場所を提供してくれているんだから贅沢は言わない」

「それは分かったけど、もし、これで花火がちゃんと見えなかったら、俺は暴れるぞ!」

「それは判らないけれど、岡島社長は穴場だと自信満々だったぞ」

 少々、気が短いところが小野寺の欠点でもあるのだけれど、それが魅力でもある。

 屋上に着くと岡島社長が既に来ていた。一面にブルーシートが敷かれている。タライの中には氷が浮かべられていて、大量の缶ビールや缶チュウハイが浸かっていた。そして、焼き鳥や枝豆などのつまみも用意されていた。それを見た小野寺が目を輝かせた。

「いいじゃないか!」

 良介たちは靴を脱いでシートの上に座った。良介が座るとこれまた当たり前のように弘子がその横に座る。けれど、今度はその反対側に純が座った。純は居酒屋に居た時より機嫌が良くなっているように見えた。







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