あのときの俺は・・・
高校生による自画撮り映画には、『たまたま拾った拳銃』というテーマが良く顔を出す。
去年見た文化祭の映画もそうだったし、インターネットで見かけた自主映画に関する論評も確かそんな内容だった気がする。
大抵の主人公達は、その転がり込んできた暴力の象徴を警察に届けもせず、あたふたと動揺しながら弄り回し、挙句の果てにそれが契機となって大事件へとつながるという運命をたどるのだが、実際問題、そんな境遇に陥ってみれば、どうして登場人物達はあれほど気が動転しているのか、さっぱり理解できなかった。
えっ?つまりはどういうことだって?
そんなのはもう察しているだろう?
ようは、俺が物語の主人公みたいにたまたま拳銃を手に入れて、面倒くさいって理由からそれを警察に届け出もせずに未だ持ち続けてるって話だよ。 使うこともできない金属の塊なんて、押入れの奥に突っ込んでおけばそれでよし、他に問題も何も無い。これで、俺の日常が変わるなんてそんなことは万が一にもありえない。
あのときは、そんな風に思っていた。
そして、それは事実であったであろう。親父があんな死に方さえしなければ・・・・。
辺りに硝煙と怒声が響いている今、俺はあのときのその思い込みを苦笑をかみ殺して懐かしく感じているのだった。