表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

Round.1

格ゲーの小説版的なものをかいてみたいと思います。

文才はありませんが、温かい目で見てくださると幸いです。

The King of Soul Fist Tournament。


最強の拳「拳魂ケンダマ」を持つ者だけが頂点に立つ、ということから呼ばれるこの大会は、世界を舞台に繰り広げられる一大異種格闘技イベントである。

とある巨大企業が主催するという噂が流れていたが、やがてそれは次第に現実味帯びたものとなっていた。

流派、格闘スタイル不問、ウェイトによる階級、年齢や男女の区別もなく、千差万別、多種多様な戦士達がしのぎを削る。

一人の戦士が優勝したその暁には富、名声、権力の全てが約束される。この呼び掛けに応じ、世界中から様々な格闘家たちが参戦に訪れた。

だが、ある者は強さのため、ある者は名声のため、ある者は復讐のため、ある者は野望のため。その裏では様々な思惑が、そこには渦巻いていた…。







韓国、某所。




酒場には、二人の男がたむろっていた。そして二人は安物のウイスキーを飲みながらテレビを見ていた。テレビには、アナウンサーが笑顔で報道の内容を伝えていた…



『今年もやってまいりました、The King of Soul Fist Tournament!今年もありとあらゆる強豪たちが己の技を駆使しながら拳魂という格闘界の頂点へと立つ!そのカウントダウンまで1ヶ月を切りました…』



だが、男の一人がこの報道内容を快く思わなかった。


「何が拳魂だ。よく言うぜ…」


「警部はこの大会が好きじゃないんでしたっけ」


二人は刑事だった。警部が酒をあおると、部下がなだめた。


「The King of Soul Fist Tournamentって言うとオリンピックよりも面白い、いまや世界最高峰のスポーツ大会ですよね。それの何がいけないんですかね?」


このご時勢、格闘技人気が高く、ゴールデンでも格闘技番組が1回は中継されているし、格闘家という職業も人気の高いものとなっている。ブームが来る前は格闘技はマイナーなものとなっていたが、それを危惧し、The King of Soul Fist Tournamentを開催してみたところ、思ったよりも人気が出た。このことにより、格闘人気はグンと伸び、ストリートファイトやアンダーグラウンド的な賭け試合までもがもはや娯楽の一つとなっていた。

そして今後開催されようとしている格闘技熱の象徴、集大成とも言うべき世界大会がこのThe King of Soul Fist Tournamentなのだ…


だが警部はため息をつくと、部下に聞かせるように言った。


「…何が拳魂だ。何が格闘技だ。結局スポーツで済ませても、所詮暴力の見せしめだろうが」


「そうですよね。全く、世界を何だと思ってんですかね」


「運営の連中はどうせ俺ら庶民のことを金のための道具としか思っちゃいねえよ」


やがて警部たちが飲み代を支払い、酒場から出ると、ある場面に遭遇した。


それは半裸でズボン一丁だけの男と、胴着を着た男たちが喧嘩しているところであった。そしてその喧嘩を、たくさんの野次馬が見ていた。

やがてズボンだけの男が勝ち抜く。配当金と思しき札が何枚も街頭に舞い上がった。

ズボンの男は胴着の男の顔面を思い切り踏みつけた。胴着の男の鼻が砕け、それを見ていた野次馬の中の女たちはいやそうな顔を浮かべていた。だがそれでも警察が来るなどのことはなかった。


「ほら見ろ、あいつの鼻が砕けたってんで女どもが悲鳴を上げやがる。だから俺はこういうスポーツと称した暴力沙汰は嫌いなんだよ…」


警部たちはストリートファイトを止めようとすることもなく、ただその場を後にしていった…


そのころ、赤いマントを羽織った男がストリートファイトを傍観していた…








同じころ、韓国某所のテコンドー道場。


この道場はものすごく寂れていて、壁や床は腐食し、天井から雨水が垂れていた。それを門下生が必死に直していた。

そこに道場の門が開かれた。


「ただいま」


道場の門からやってきたのは、水色のショートヘアに、テコンドー胴着を着た女だった。


「あ、ユンファの姉さん!」


「おはようございます!」


だがユンファは浮かない顔をしていた。


「……今日はお前たちに伝えなきゃならないことがあるんだ」


ユンファは固唾を呑んでこう言った。



「本日付でこの道場は廃業することとなった」


「ええ!?」


突然の廃業宣言に戸惑う門下生たち。


「…確かに今は格闘技ブームだよ。だがそれだけ競争率も高いんだ。うちの道場は私だけが優れた技をもってしても、結局はこのご時世、弱いものが滅んでいくんだな…私の所為でお前たちに迷惑をかけてすまなかった」


「そんな…姉さんは何も悪くないです!」


「そうですよ、俺達は姉さんと一緒にやってきたじゃないっすか!」


門弟たちはユンファをかばうように言った。



その直後、黒いスーツを着た男たちがやってきた。


「ルゥ・ユンファさん。約束の金はもってきやしたかい?」


彼らは借金取りだった。だがこの道場は寂れている。とても金があるなんて到底思えない。ユンファは怒鳴り返す。


「…見ての通りだ。金なら無いって言ってるだろう!?」


「ほほう、さいですかぁ…」


借金取りのリーダーはくくくと笑うと、取り巻きの男たちに指を鳴らして合図を送った。


「なら、始末しろ」


合図とともに取り巻きたちは拳銃を手にユンファの門弟を撃った。いくら門弟たちがテコンドーで鍛えられても、一発の弾丸ならダメージは免れない。その凶弾は門弟を血祭りに上げていく。


「やめろ!」


ユンファが自分の技を仕掛けてきた。


「旋風一閃脚!」


前方に低く山なりに跳び、振り向きつつカカト落としを繰り出し、取り巻きを蹴り飛ばす。

次の取り巻きを蹴り飛ばそうとしたが、それはリーダーの銃に阻まれる。


「あんた金が無いって言ってましたよね?なら用済みってことじゃないですかい。世の中は力が強いほうが勝つ。格闘も、暴力も、全てにおいてですよ?もしあんたが余計なことするってんなら…オメェも殺しちゃうよ、クソアマ」


「クッ……!」





するとそのとき、銃を持った取り巻きの悲鳴が上がった。


「ぐはぁ!?」


取り巻きは後頭部を殴られたようで、そのまま倒れた。借金取りの目の前に、一人の男がやってきた。


「何だお前は!?」


男の容姿は黒い髪に白い鉢巻をし、赤い炎の刺繍がされた黒服の青年だった…。


「…道場破りにしてはずいぶん無骨な真似をしてくれるな」


青年の登場に動揺する一同。


「てめぇには関係ねえ。……やれ!!」


借金取りのリーダーの一人が合図すると、同時に仲間が青年に襲い掛かってきた!


「フン、力ずくは嫌いじゃないぜ!」


青年は借金取りのグループを蹴散らしていく。あるものを蹴り飛ばし、あるものを殴り飛ばし、あるものをたたきつけた。

そのときユンファが青年の動きにあることに気がついた。


(その身のこなし…空手か何かなのか?)


確かのその体さばきはただの喧嘩にしてはぜんぜん見えなかった。武道家らしく無駄の無い動きは、やがて借金取りを蹴散らしていく。


やがて青年はリーダーの胸倉をつかんだ。彼はリーダーにこう告げた。


「お前に聞きたいことがある。この男を知っているか?」


青年が取り出したのは一枚の色あせた写真。男性のようだ…。


「し、知らない!知りません!すみません!」


「そうか…なら行け」


青年はリーダーを話す。リーダーはしゃがれた声で悲鳴を上げ、逃げた。

そのときユンファが声をかけてきた。


「ごめん、助けてくれて…」


「礼はいらん」


青年はそっけなく返事をした。ユンファは一息つくと、こう言った。


「お前、見たところ道場破りって顔じゃないな。私はルゥ・ユンファ。お前は?」


「…リョウマ」


青年はそう名乗った。ユンファはリョウマに声をかける。


「リョウマ、か。じゃぁ一度戦ってみないか?」


「それなら問題はない」


「え?」


きょとんとするユンファ。


「お前も出るんだろ?The King of Soul Fist Tournamentに」


「え…」


「俺もその大会に出場する気だ。また会場で会おう」


「ああ…」


そういってリョウマはテコンドー道場から去っていった…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ