マイ・スイートハート
傭兵の国盗り物語に出て来るヒロインの心境を載せてみました。
深夜に咲く可憐な花のヒロインですが、もう一人の心境でもあります。
因みにマイ・スイートハートとは男性の側からなのですが、敢えて女性に言わせますのを御理解下さい。
私の愛しい恋人。
貴男の黒い瞳が私を鋭い矢の如く射抜くと私は、もう立っていられない。
貴男の黒い髪は漆黒の闇のようで私を覆い隠してくれる。
貴男の腕は私の華奢な身体を折りそう。
でも、私はそれを望んでいる。
貴男の黒真珠で射抜かれたい。
貴男の黒髪で覆い隠されたい。
貴男の腕で折られたい。
嗚呼、私はいけない女なのかしら?
貴男は私の気持ちを分かっているのかしら?
分かっているのに、敢えて私を突き放すというのなら酷い方だわ。
でも、そんな貴男を私は愛している。
例え、貴男は私を愛していなくても、私は愛しているの。
そう・・・・貴男は私の恋人。
マイ・スイートハート。
私の恋人。
私の意中の人。
貴男と出会った日の事は今も私の胸で輝いているわ。
その日は月が雲に隠れて見えない夜。
そんな日に貴男と初めて出会った。
貴男は黒い闇に同化しているほどに暗い表情をしていた。
怖かった。
でも、私は貴男を一目見て心を奪われたわ。
罪な人。
一目で私の心を奪い取るんだから。
私を見た貴男は黒真珠を細めた。
まるで吸血鬼に見られたように動かなかった。
身体が小刻みに震えるのに貴男から眼を一時も離せなかった。
貴男が一歩、近づいて来る事に身体の震えが強くなると同時に鼓動が速くなる。
キスできる距離まで近づいた貴男は私を上から見下ろす。
そして、太い手を伸ばして来た。
雲が去り顔が見えた。
とても恐持ての顔だけど哀しそうな顔・・・・・・
今にも泣きそうな顔で見ていられない。
私は貴男を抱きしめた。
お願いだから哀しそうな顔は止めて。
切なくなるの。
だから、泣かないで。
貴男を抱き締めると貴男の鼓動が聞こえてくる。
温かくて、心地良い鼓動の音。
身体からは煙草の香りがする。
貴男は臭いが付くと言ったけど構わない。
貴男の香りが付くなら男を追い払えるから。
私の恋人。
私の意中の人。
マイ・スイートハート。
ねぇ、貴男は何処に居るの?
何時も私に一言も言わないで貴男は何処かに行ってしまう。
私は貴男に付いて行きたい。
それが駄目なら、せめていつ帰って来るのかを教えて欲しいの。
貴男が帰って来るまで、私は待ち続けるから。
ねぇ、貴男は何処に居るの?
マイ・スイートハート。
ある日、突然に私の前から貴男は消えてしまった。
今でも覚えているわ。
家に行ったら貴男は居なかった。
手紙が一通あっただけ・・・・・・
手紙を開く手は震えていたわ。
だって、怖かったのよ。
でも、意を決して読んでみたわ。
ただ、一言。
『マイ・スイートハート』
罪な人。
憎い人。
酷い男。
今頃になってから、自分の気持ちを伝えて来るんだから・・・・・・・・・
しかも手紙で。
貴男が居なくなってから、私は抜け殻となったわ。
身も心も狂いそうなほど貴男に会いたかった。
貴男に会いたい。
もう一度、会いたい。
会いたいのに、貴男の場所は分からない。
嗚呼、どうして貴男みたいな酷い男を好きになったのかしら?
でも、後悔はしていないわ。
私の辞書に後悔なんて言葉は書かれていないの。
知ってる?
女は諦めが悪いのよ。
だから、私は諦めないわ。
何時か、必ず貴男と再会する積りよ。
もう一度、貴男と出会ったら、今度はもう逃がさないわ。
何処までも・・・何処までも・・・何処までも追い掛けて、追い掛けて、捕まえてみせるわ。
捕まえたら、もう離さない。
永遠に離さないわ。
ねぇ、貴男もそうして・・・・・・・
私を抱き締めたら、その腕を離さないで・・・・・・・
ずっと、ずっと・・・・・・・
永遠に、永遠に・・・・・・・
お願い・・・・
お願いだから・・・・・・
もう私を置いて行ったりしないで・・・・・・
私の意中の人。
私の好きな人。
私の愛する人。
私の恋人。
私の愛人。
私の太陽。
私の月。
私の永遠の愛して止まない恋人。
マイ・スイートハート。