0・prologue
あらすじでは重いダークな感じがしますが、ゆるーく書いていきます。
ダークな感じはパッと見です。パッと見。
*
「おーい! いっくん! 起きてよ! 視えたんだってば!」
少女の声が少年の耳に響いた。
高い、声だ。しかも、透き通るような美声。声だけで、彼女の虜になる人も珍しくないだろう。少年は睡魔と格闘しながら、そう思った。
「うぅー。りょーかーい……じゃ、あと5分寝かして……く……れ……」
少年の中の睡魔が勢いを取り戻し、少年を再び、夢の中へと引きずり込もうとする。
あ、もう無理。寝ます。少年がそう思った矢先に、ある考えが浮かんだ。
その考えは睡魔の勢いを弱めさせて、少年の口を開かせた。
「――おき……起きるから……パンチラ……お願いしまーす」
少年は、そう言うと、幸せそうな表情を浮かべて、彼女の行動を待った。
「……いい加減にしなさい!!」
「ぐへっ!!」
少女が少年の腕を取り、体を捻る。
少年の体が寝ていたベッドから少し浮き、次の瞬間には床に叩きつけられていた。
ドン! と大きな音がして、少年は悲鳴を上げた。
「痛い!! ッ~~~~……痛ぇな! 楓!!」
背中を抑えながら、少年は目の前に突っ立っている少女に目を合わせる。
「痛い、じゃなくて、遅い!!」
楓と呼ばれた少女は、艶やかな楓色の長い髪を頭の後ろで束ねていた。
俗に言う、ポニーテールという髪型だ。
顔は、驚くほど整った顔立ちで、可愛らしさと共に凛とした雰囲気も兼ね備えていた。
鼻筋はピシッと通り、怒りの色を見せる眼は少年をキッ! と睨みつけている。桜色の唇が、今はへの字に曲げられている。
背は160センチに満たないが、胸は大きく膨らんでおり、Eカップはくだらないだろう。
少女の名は、卯月楓。17歳。
セーラー服を身に纏っていた。
そして、床に仰向けに倒れている少年の名は夢藤樹。
17歳。
ここまでは、普通だ。
しかし、これからは普通じゃない。
身長143センチ、体重36キログラム。
まるで、小学生のような体格をしている。
病気、というわけではない。
だが、成長が遅い、というわけでもなかった。
髪の色は群青色。これも染めているわけではない。
髪型は、無造作で、寝癖なのか癖毛なのかわからないが、アホ毛が前髪からピョンと上に向かって突き出ていた。
顔も小学生のような顔で、小学生男子特有の可愛らしさというものが滲み出ている。
その顔は、今、とても幸せそうだ。
「あ――楓。朝っぱらから、お疲れ様です。今日はピンク……か」
床に仰向けになっている樹には、見えたのだ。スカートの中が。
樹は、右手を頭の横において、楓に敬礼する。
「がっ!!」
楓は、そんな樹の顔面を白いニーソックスを履いた足で踏みつけた。
「もう!! こんなことしてる場合じゃないでしょ! 見つけたの」
「み、見つけた……そうか……で? 誰だった?」
樹は、鼻を抑えながら訊き返す。
「うん。クラスの子」
楓は、スカートを抑えながら、その場から数歩後退りして、言った。
「そうか……じゃ、俺も学校に行かなきゃな」
樹は起き上がると、急いで支度を始めた。
毎週土日のどっちかに更新していきたいと思います……できればですが……