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SLEEPER  作者: 黒野蝶
1/3

0・prologue

あらすじでは重いダークな感じがしますが、ゆるーく書いていきます。

ダークな感じはパッと見です。パッと見。

 *


「おーい! いっくん! 起きてよ! 視えた(・・・)んだってば!」

 少女の声が少年の耳に響いた。

 高い、声だ。しかも、透き通るような美声。声だけで、彼女の虜になる人も珍しくないだろう。少年は睡魔と格闘しながら、そう思った。

「うぅー。りょーかーい……じゃ、あと5分寝かして……く……れ……」

 少年の中の睡魔が勢いを取り戻し、少年を再び、夢の中へと引きずり込もうとする。

 あ、もう無理。寝ます。少年がそう思った矢先に、ある考えが浮かんだ。

 その考えは睡魔の勢いを弱めさせて、少年の口を開かせた。

「――おき……起きるから……パンチラ……お願いしまーす」

 少年は、そう言うと、幸せそうな表情を浮かべて、彼女の行動を待った。

「……いい加減にしなさい!!」

「ぐへっ!!」

 少女が少年の腕を取り、体を捻る。

 少年の体が寝ていたベッドから少し浮き、次の瞬間には床に叩きつけられていた。

 ドン! と大きな音がして、少年は悲鳴を上げた。

「痛い!! ッ~~~~……痛ぇな! (かえで)!!」

 背中を抑えながら、少年は目の前に突っ立っている少女に目を合わせる。

「痛い、じゃなくて、遅い!!」

 楓と呼ばれた少女は、艶やかな楓色の長い髪を頭の後ろで束ねていた。

 俗に言う、ポニーテールという髪型だ。

 顔は、驚くほど整った顔立ちで、可愛らしさと共に凛とした雰囲気も兼ね備えていた。

 鼻筋はピシッと通り、怒りの色を見せる眼は少年をキッ! と睨みつけている。桜色の唇が、今はへの字に曲げられている。

 背は160センチに満たないが、胸は大きく膨らんでおり、Eカップはくだらないだろう。

 少女の名は、卯月うつきかえで)。17歳。

 セーラー服を身に纏っていた。

 そして、床に仰向けに倒れている少年の名は夢藤(むとう)(いつき)

 17歳。

 ここまでは、普通(・・・)だ。

 しかし、これからは普通じゃない。

 身長143センチ・・・・・・・・体重36キログラム(・・・・・・・・・)

 まるで、小学生のような体格をしている。

 病気、というわけではない。

 だが、成長が遅い、というわけでもなかった。

 髪の色は群青色。これも染めているわけではない。

 髪型は、無造作で、寝癖なのか癖毛なのかわからないが、アホ毛が前髪からピョンと上に向かって突き出ていた。

 顔も小学生のような顔で、小学生男子特有の可愛らしさというものが滲み出ている。

 その顔は、今、とても幸せそうだ。

「あ――楓。朝っぱらから、お疲れ様です。今日はピンク……か」

 床に仰向けになっている樹には、見えたのだ。スカートの中が。

樹は、右手を頭の横において、楓に敬礼する。

「がっ!!」

 楓は、そんな樹の顔面を白いニーソックスを履いた足で踏みつけた。

「もう!! こんなことしてる場合じゃないでしょ! 見つけたの」

「み、見つけた……そうか……で? 誰だった?」

 樹は、鼻を抑えながら訊き返す。

「うん。クラスの子」

楓は、スカートを抑えながら、その場から数歩後退りして、言った。

「そうか……じゃ、俺も学校に行かなきゃな」

 樹は起き上がると、急いで支度を始めた。


毎週土日のどっちかに更新していきたいと思います……できればですが……

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