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モモコとメリーさんのおいしい電話  作者: ワタカナタ


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5/8

5話 コーヒー豆

 次の休日、メリーさんから電話がかかってきた。妙に落ち着いた声だった。


「私、メリーさん。今、コーヒー豆専門店の前にいます。イチゴミルクとかコーヒー牛乳に憧れたけれど、私は味わえないので、せめて目で楽しもうと思ったんです。コーヒー豆がいっぱい売られているところを見るの、なんだか楽しいですね。お上品な遊園地みたいです」


 メリーさんがそんなことを言ってきた。コーヒー豆って、何を語ればいいんだろう。分からない。


「コーヒー豆いいですね。私はコーヒー豆を挽いたことがないけれど、とっても楽しそうです。コーヒーミルって器具のハンドルを、手動でグルグル回すのはロマンがあって素敵です。挽く音がバリバリゴリゴリしていて、なんだか癒されますし。コーヒー豆を挽くと、香りがすごくいいそうですし。素敵ですね」


 こんな話でいいだろうか。無難に話せたと思うんだけど。


 正直言って、私はコーヒー豆を見ると、チョコレートみたいでめちゃくちゃおいしそうだと思ってしまう。いや、コーヒー豆が甘いはずもないのだけれど。


 でも、コーヒー豆って一応そのまま食べられるんだっけ。実際食べてみたら、すごく苦そうではある。苦味が好きな人は幸せになれるのかな。


 ただ、カフェインの摂りすぎには注意した方がよさそうだ。不眠以外にも色んな症状が出そうだから気をつけないと。


「手動コーヒーミル、すっごくロマンチックですねっ。電動コーヒーミルもかっこいいですよね。挽き目を調整する目盛りの印刷がクールだったり、挽く音がギュイーンっていうの最高ですっ」


 メリーさんが甘えたように言ってくる。まるでメリーさんが友達になってしまったかのような錯覚に陥ってしまう。


 いけない。メリーさんは人間ではない、とても怖い怪異なんだ。オカルト現象は油断した瞬間、命の危険が迫ってくる。


「はい。手動も電動も、どちらのコーヒーミルもいいところがありますよね」


 言葉自体は優しいものを選んだけれど、声色はかなり冷ためにした。だって、メリーさんに流されないよう、私は気をつけないと。


 私の空気の変わった感じを読み取ったのか、メリーさんは少し戸惑ったらしかった。メリーさんが緊張したように声を出し始める。


「はい。全部素敵です。コーヒー豆の挽き方も色々あって、極細挽きとかはものすごく細かいみたいですね。粗挽きは粒の形がはっきりしているみたいです。挽き方一つでも、苦味や渋味やコクなどが全然違うみたいで、何というか。こんなに話をしてしまって、すみません」


 メリーさんの声がどんどん小さくなっていって、電話が切られた。そう。これでいいんだ。だって、メリーさんは怖い怪異なんだから、追い払わないと。


 でも、なんか悲しかった。メリーさんとお話しするの、実は結構楽しかったんだよね。メリーさんからの電話がこなくなったら寂しいよ。

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