4話 牛乳
次の休日、メリーさんから電話がまたあった。メリーさんの声は割と元気だった。
「私、メリーさん。今は銭湯の前にいます。ほら、ここってパンツ一丁で牛乳を飲む場所なんでしょう」
メリーさんが恥ずかしそうに言ってくる。いや、ちょっと待って。そうなのか。
「私は銭湯へ行ったことがないため、パンツ一丁で牛乳を飲むかは分かりません」
つい、そのように答えてしまった。すると、メリーさんが動揺したような声を漏らした。
「申し訳ございません。私は変なことを言ってしまいました」
メリーさんの声が震えている。やばい。メリーさんを傷つけてしまった気がする。
「いえいえ。銭湯で牛乳を売っていることがあると、噂で聞いたことはあります。白い牛乳以外にも、コーヒー牛乳とか、フルーツ牛乳も置いてることがあるそうですよ」
あわてて言ってみる。すると、メリーさんの笑い声が微かに聞こえた。
「わあ。すごく素敵ですね。色んな味を楽しめるんですか。特にフルーツ牛乳の味が気になります。モモコさん、食レポしてくださいっ」
メリーさんがそんなことを言ってくる。やばい。私はフルーツ牛乳を飲んだことがない。
「大変申し訳ございません。私はフルーツ牛乳を飲んだことがありません。けれど、多分甘くておいしいんだと思います」
こんなことしか言えない。だってさあ。分からないものは分からないんだよ。
「ありがとうございます。モモコさんに無理をさせてしまい、申し訳ございません」
メリーさんが落ち込んだように言ってくる。ああもう。私はどう言えばいいんだ。
「私はイチゴミルクなら飲んだことがあります。あれ、めちゃくちゃおいしいんですよ。イチゴの甘酸っぱい爽やかさを、ミルクで割ってトロットロにしてあって、まろやかな味わいで最高なんですっ」
とりあえず、イチゴミルクの話題でごまかす。これでどうだ。
「イチゴミルクすごくおいしいそうですね。私も飲んでみたいです。飲めませんが憧れます」
メリーさんが寂しそうに言って、電話を切った。私はまずいことを言っちゃったかな。メリーさんとの会話が難しすぎるよ。一体どうしたらいいんだ。




