3話 しりとり
次の休日、メリーさんから電話がまたあった。すごく切羽詰まった声をしていた。
「私、メリーさん。今、公園の前にいるんです。公園内で子ども達が遊んでいて、うらやましいんですよ。私もあんな風に生きたいと思います。ねえ、モモコさん一緒に楽しみましょうよ。私はもう耐えられません」
メリーさんがそんなことを言ってきた。まずいな。このままだと、メリーさんが私の家に来てしまう。
「メリーさん。落ち着いてください。とりあえず、今から一緒にしりとりで遊びましょう。では、私がしりとりと言います。ですので、メリーさんは『り』から始まる言葉を言ってください」
私はそのように言ってみた。すると、メリーさんは戸惑ったようだった。
「しりとりですか。『り』何があるでしょうか。リンゴでどうですか。甘酸っぱくておいしいらしいですねっ」
メリーさんが嬉しそうに言ってくる。よし。メリーさんの気持ちが少し上向きになったようだ。
「はい。ではゴリラでどうでしょうか。ゴリラはリンゴをよく食べるそうですね」
そのように言ってみる。私は食べ物ネタばかり言っているけれど、大丈夫だろうか。メリーさんが食べられないから落ち込まないだろうか。
まあでも、このメリーさんは食に興味がありそうな気もしてきた。だから、ある意味正解ではあるのかな。
「わあ、いいですね。『ら』ですから、ラッパでどうでしょうか。そういえば、ラッパっぽいお花のエンジェルストランペットって、毒をいっぱい含んでいるらしいですね。間違って食べたら危なそうです」
メリーさんがはしゃいだように言ってきた。もしかして、メリーさんは私の毒殺とか狙っていないよな、不安になってきたんだけど。
「じゃあ、『ぱ』だからパンツにします」
私は話の流れを断ち切ろうとした。すると、メリーさんが悲鳴のような声を上げた。
「モモコさんったら、恥ずかしいじゃないですかっ。パンとかにしましょうよ、おいしいやつがいいですっ」
メリーさんがそんなことを言ってくる。いやいや。なんでだよ。
「パンだったら『ん』で終わってしまいますよ。それにパンツと言っても、ズボンという意味かもしれないじゃないですか」
私はそのように反論してみた。すると、メリーさんが奇妙なうめき声を上げ始めた。
「確かにそうなんですけれど。私ちょっと照れてしまって。すみませんーっ」
メリーさんがそう言って、通話を切った。もしかして、メリーさんは意外と恥ずかしがり屋なのだろうか。
まあ、メリーさんはわざわざ電話してからやって来るくらい、奥ゆかしい怪異だから。恥じらいが強いのかな。よく分からない。地味に気になる。




