2話 ミルクティー
次の休日も、メリーさんから電話がかかってきた。とても楽しそうな声だった。
「私、メリーさんです。今、自動販売機の前にいます」
どうやら、自分はメリーさんに懐かれてしまったらしい。困ったな。
メリーさんはとてもかわいいけれど、油断してはいけない。メリーさんが会いに来たら、私は殺される可能性が非常に高い。
「メリーさん、こんにちは。何か面白そうな飲み物はありましたか」
そのように聞いてみる。おいしそうな飲み物ではなく、面白そうな飲み物と言ったのは、味より見た目に注目させるためだ。
メリーさんが飲めなくて落ち込むのは、避けた方がいい。メリーさんが飲み物の見た目だけで楽しめるよう、会話を誘導すべきだ。
「色々ありますね。ミルクティーっていうのが、とってもおいしそうです。どんな味でしょうか」
メリーさんがミルクティーの味に興味を示している。まずい。このままだと、メリーさんが飲めなくて悲しいとか言い出しかねない。
「ミルクティーはまろかやな甘い味だと、私は思っています。紅茶とミルクが分離しがちだから、たくさん振らないと混ざらないことがありますね」
私は話術でどうにかしようと頑張った。メリーさんが気に病まないといいのだけれど。
「ミルクティーって二層に分かれちゃうんですか。じゃあ、シャカシャカシャカッて振らないといけませんね。すっごく楽しそうですっ」
メリーさんが楽しそうに言った。よかった。メリーさんの機嫌はよさそうだ。
「はい。たくさん振ることは、きっと楽しいですよ」
というわけで、適度に合わせた返事をしてみる。よし。これで何とかなるだろう。
「じゃあ、今からモモコさんの家へ行ってもいいですか。私はモモコさんと一緒に、ミルクティーのペットボトルを振りたいです」
突然、メリーさんがそんな話に持ってきた。いやいや。ちょっと待って。それは困る。
「私の家には、ミルクティーのペットボトルがないので。ご遠慮させていただきます」
冷や汗をかきながら返事する。これで乗り切れるだろうか。
「ミルクティーのペットボトル、私が持って行きますよ。大丈夫ですっ」
メリーさんがキラキラした声で言ってくる。やばい。メリーさんがめっちゃ乗り気だ。どうしよう。
「最近私はカフェイン飲料をなるべく飲まないようにしているんです。夜に眠れなくなってしまいますから。ですから、お気持ちだけいただきますね。ありがとうございます」
この断り方でいいだろうか。大丈夫かな。
電話の向こうで、メリーさんが悩ましげな息を漏らした。おっと。メリーさんの勢いが止まったかな。
「確かに、ミルクティーを飲む人が必要ですものね。モモコさんがミルクティーを飲まないなら、やめておいた方がいいですね。すみません。ありがとうございます」
メリーさんが切なそうな声を出して、電話を切った。メリーさんを傷つけたいわけではなかったのだけれど。困ったな。どうしよう。




