プロローグ
むかしむかし。
小さな森のはずれに、兄のザザ……ザッと妹のザザッ……が住んでいました。
ある冬の夜。
妹は窓の外を見ながら、きらきら光る星を指さして言いました。
「ねえ、お兄ちゃん。あの星の向こうに、幸せのザザッ……ザザッがいるのかな?」
兄が首をかしげていると――
こんこん、とドアが鳴りました。
扉を開けると、そこには小さな妖精が立っていて、やさしく微笑んでいました。
「ザザ……ザッ、ザザッ……。幸せのザザッ……ザザッを探す旅に出てみませんか?」
ザザッ……は少しドキドキしながらも、ザザ……ザッの手をぎゅっと握りました。
こうして二人の、不思議な冒険がはじまったのです。
――ミチルは、夢を見ていた。
ときどき見る、同じ夢。
とても遠いところで聞いた言葉を、夢を通して思い出していた。
まだ生まれる前。
あたたかくて暗い、やさしい場所にいたころ。
やわらかな声が、そっと語りかけていました。
「幸せを、探しなさい」
その声は、まだ覚えている。
しかし――
「しあ……わせ……を……」
ザザッ……
声にノイズが混じる。
「さ……が……し……な……」
ザザッ……ザ……
言葉が崩れていく。
思い出そうとするほど、音が遠ざかっていく。
(忘れちゃ……だめ)
ミチルは夢の中で、強く思った。
「幸せ、探さなきゃ」
小さくつぶやく。
「そーちゃんと……紗羅と……ミチルの三人で……」
その言葉は、静かな夢の中へ溶けていった。




