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清鈴神社のお狐さま⁉︎_3


 ――キーンコーンカーンコーン――キーンコーンカーンコーン。

 ――キーンコーンカーンコーン――キーンコーンカーンコーン。


「……いいかー! 気を付けて帰るんだぞー! それぞれ宿題忘れないようにな!」

「「「「はーい!!」」」」


 クラスメイト達の声が教室に響く。


「あしか! 帰ろ!」

「うん!」

「――あっ、ナナ! あしかちゃんと一緒に帰るの?」

「ココとみっちゃんも、一緒に帰って良いかなぁ?」

「どうする? あしか」

「そりゃあ、もちろん! えっと、春山さんと、笹元さん!」

「アタシのことは、みんなみっちゃんって呼んでるから、あしかちゃんもそう呼んでよ!」

「ココはココって呼ばれてるの。ココって呼んでほしいな~?」


 二人の少女が、私とナナに声をかけてきた。一人は笹元みよ。このクラスの学級委員長だ。なんとなくクールな大人っぽい女の子に見える。もう一人は春山ここの。おっとりとした女の子で、ニコニコと優しい笑顔が眩しい。

 帰り支度をして、下駄箱へと向かう。初日から友達と帰れるのは、この上なく嬉しいことだった。


「ところで、あしかちゃんはどこに住んでるの? アタシ二丁目!」

「私? 私は一丁目の端っこ!」

「そうなんだ~。じゃあ、ココと同じ方向だね。ココ、あっちゃんと一緒に朝学校行きたいな~?」

「良いよ! みんな近いよね? あ、ナナって昔のまんま?」

「場所は引っ越したんだよね~。かろうじて学区内なんだけど。清鈴神社-せいりんじんじゃ-の近くだよ」

「清鈴神社?」

「あれ、あしか知らない? 結構おっきな神社で、【お狐さま】が祀ってあるんだよね! 隣のクラスの【時嶋ハルト】のおうちなんだよ」

「へえ。なんか、覚えがあるようなないような……?」

「毎年夏祭りやってて、屋台も出るんだから! 今年もあるんじゃないかな」


(お狐さまに夏祭りか……。――あれ? もしかして――)


 昔、狐の格好をした男の子を見かけた場所。名前は憶えていなかったが、その神社なのかもしれない。


「ナナ、その神社って、遠いの?」

「んー、20分くらいかな? 学校からウチまで20分くらいだし。あしかの家のほうまで行って、そこから15分くらい?」

「ねぇ! 私そこ行きたい!」

「え? い、良いけど……。今日?」

「できれば早く! お願い、案内して!」

「わ、わかった……」


 私の勢いに押されて、驚いた顔でナナは頷いた。


「清鈴神社行くの? アタシも行って良い?」

「ココも行きます!」

「みんなで行こう!」


 ナナの案内で、私は清鈴神社へと向かった。どうやら私がこの町に住んでいた時から、夏祭りを行っていたらしい。神社の名前は憶えていなかったが、子どもの頃通った時はさほど遠い道のりではなかった気がしている。保育園の帰り道に通った気がするが、保育園は学区外にあってナナの今住んでいる家から近い場所だった。


(可能性、高いんじゃない……?)


 期待に胸を躍らせる。もしかしたら、あの時の男の子に遭えるかもしれない。一瞬、神社の息子の時嶋ハルト君があの時の男の子だったのかとも思ったが、年齢が違う。あの時見た男の子は、少なくとも今の自分くらいの年齢に見えた。私と同年齢の時嶋君であれば、もっと小さいはずだ。


 私は浮足立った気持ちを隠しながら、いたって普通を装って歩みを進めていた。


 それから、20分後――


「着いたよ!」

「――ここが、清鈴神社……」


 自分の家を通り過ぎ、みっちゃんとココの家も通り過ぎて、私は清鈴神社へと辿り着いた。若葉の生い茂る神社は、たくさんの葉っぱが日差しに照らされて地面に陰を作っている。気持ちの良い、青々とした風。緑の匂いが鼻をつき、夏に足を踏み入れかけた季節を教えてくれている。

 奥に見える大きな境内は、古いものの綺麗に手入れされている印象だった。


「――あれ? 丸屋さん?」

「――ぅ、あっ! ととと、時嶋、くん……!?」

「今日も手を合わせに来てくれたの? きっと、ウチのお狐さまも喜ぶよ。ありがとう」

「べ、べ別にっ。あしかが来たいっていうから、今日は来ただけだし……」

「今日はお友達がいるんだね。こんにちは」

「こんにちは! 隣のクラスの時嶋君だよね! C組の笹元です! よろしく」

「同じくC組の春山です~」

「小森あしかです。今日転校してきて、ナナと同じクラスになったの。昔この町には住んでいたんだけど、あんまり覚えていないことも多くて。よろしくね」

「あしか、ちゃん……? あ、うん。こちらこそよろしく。D組の時嶋ハルトです。面白いものはないかもしれないけど、歴史はあるから、色々と見ていってね。……それじゃあ、僕は家の手伝いがあるから、これで」


 そういえば、ナナが『隣のクラスの時嶋ハルトのおうちなんだよ』と言っていたっけ。この眼鏡をかけた男の子が、ナナの言っていた時嶋君なんだろう。ペコリと頭を下げて、彼は行ってしまった。

 どうしようかな、そう思って辺りを見回すと、ところどころ立て看板が立っていることに気が付いた。


(何かの説明かな? 本当に、色々由緒があるんだ……)

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