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救世主症候群シリーズ解説文置き場  作者: 秋犬
【絶望ノワール2】救世主症候群・全容編【閲覧注意】
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謀略編あらすじと解説文

〇謀略編あらすじ


 ザミテスへの復讐を決意したティロの前に、ライラがトライト家へ女中として潜入したという話が舞い込む。ライラを通じてトライト家を壊す策を考えたティロは、標的をザミテスの妻であるリニアに絞ることにする。


 ライラから興奮剤を貰ったリニアはその効能にすっかりはまり、直接ティロから興奮剤を買い取るようになる。薬物の怖さをよく知っているティロはじわじわとリニアから理性と金銭を奪い取っていく。そんな中、ティロはトライト家でライラに前髪を切られて姉への思いを更に強めることになる。


 年が明けて全体稽古の日がやってきた。復讐が終わったら死ぬことしか考えていないティロは開き直って全力で試合に臨み、筆頭補佐のラディオまで撃破する。しかも三等でキアン姓の自分が目をつけられないよう、無効試合に持って行く判断力でラディオを戦慄させた。


 ティロは復讐の方針として「ザミテスを生き埋めにする」「リニアとノチアを殺す」「レリミアに当時のことを知ってもらう」ことを決め、手始めに邪魔なレリミアには消えていてもらおうと考えてライラと旅行に行かせることを思いつく。その頃、何故かザミテスに査察旅行についてきてもらえないかとティロは打診される。レリミアの反対もあり、ティロの査察旅行はなくなった。


 薬物に依存してティロの言いなりになったリニアは、方々から借金をしたり詐欺まがいの集金をしてまでティロに多額の金を渡していく。リニアの仕上がりに気を良くしたティロだったが、精神的ダメージは蓄積されていた。目に見える形でおかしくなっていくティロをリストロは心配するが、ティロの逆鱗に触れて激しく拒絶されてしまう。


 薬の量も増えてぼんやりすることが多くなったティロは、ついに勤務中に倒れてしまう。心配したラディオによって強制的に医局に担ぎ込まれ、痛み止めの過剰摂取がばれてしまう。これにより顧問部のクラドから謹慎三ヶ月と暗に退職を迫る勧告を言い渡され、ティロはいろんな意味で吹っ切れる。


 謹慎をいいことにティロはレリミアの旅行先のビスキへライラと行く計画を立てる。しかし、ラディオからビスキへの通行証をもらえないことを聞いて落胆する。この事態にティロはビスキへの旅行からクライオへ亡命する案を思いつく。道中でレリミアを誘拐し、ついでに酷い目に合わせる計画にライラは呆れる。


 ライラの尽力もあり、旅行予定日がやってきた。何も知らないレリミアはティロとライラとビスキを目指しているものだとばかり思っていた。しかし、ティロはレリミアを騙してクライオの国境付近まで連れてくる。愛の逃避行だと勘違いしているレリミアをティロは拘束する。こうして16年の恨みが募った復讐が始まった。



○キャラ動向


ティロ


 開き直って、完全に悪い奴になってしまいました。密売に恐喝が加わり、非常に狡猾ですが精神的に大変不安定な状態です。そして今回から復讐計画で忙しくなるので、自分会議が少なくなっていきます。ライラなど協力者と話すことも増えるので、わざわざ自分会議をする必要もないわけです。しかし、彼の中に常に「友達」は存在していますので再度重要な役割を持ってきます。



ライラ/セドナ


 トライト家の女中として潜り込んだライラ嬢。本当に何を考えているのかわからないのですが、彼女の真の思惑がわかるのはずっと先になります。


 六頭立ての馬車を運転するとは女性の身ではかなり大変だと思うのですが、彼女の過去を参照すれば出来なくもないかな……という理由で運転させることにしました。それにこの馬車は最高級の馬車なので、なんか運転しやすい機能が付いてるんだと思うんですよ……多分。



リニア


 謀略編において一番重要なのは「リニアの脅迫」です。ティロが目をつけた通り、元から不自然な状況に置かれた彼女はトライト家のねじれの象徴です。そんな彼女が目をつけられて、悪い男にのめり込んでいくのがこの作品のひとつの見所でもあります。嫌な見所だなあ。



レリミア


 謀略編においてはティロの髪を切らせたり誘拐されてみたりといろいろ大活躍します。しかし彼女がここまでふわふわしているのにも理由があって、それはリニアを見ていると何となくわかるのではないかと思います。この子も酷い家庭環境の末にできあがったふわふわガールです。



ザミテス


 謀略編で彼の奇妙な行動と言えば、「何故ティロを査察旅行に連れて行こうとしたのか」というところです。それは事件編を読むとなんとなくわかると思うのですが、そうすると彼の人物像がかなり訳のわからないものになってくると思います。彼の真意は一体何なのかは、この後復讐時に明らかになります。


ノチア


 今章でもかなりふざけた根性を見せていますが、彼がこのように振る舞うのはレリミア同様「トライト家の次男坊の息子」であったところに原因があります。彼は彼で、かなり大変なんだろうと思います。



リストロ


 同室の先輩としてかなりティロを心配しますが、全て拒否された挙げ句最終的に悪意を持って「近寄るな」と断言されます。本作で数少ないティロを全うに扱おうとする人物なのですが、全うすぎてティロから警戒されてしまっています。イメージとしては人助けしたくてキラキラした福祉事務所のおばちゃんみたいな感じです。



ラディオ


 反乱編でティロについてシェールに話した経緯は大体この謀略編に固まっています。彼はリストロのように情を持っているわけでなく、ただ「こいつは使える」という観点でティロを評価しています。しかし、彼の人間不信の前には信頼が足りなかったようです。



○内容解説


《第1話》

「俺は死にたくて仕方なかったっていうのに、誰も俺を気にかけてくれなかったな」

→実際は上級騎士編で書かれているとおり、リストロが何かに気がついて声をかけてくれたりしていたのですがティロには全く届いていませんでした。これは彼が薄情というわけではなく、激しい希死念慮によって酷い視野狭窄に陥っていたためです。



「こんなどうしようもない俺でも拾ってくれたんだ」

→彼は予備隊に拾われた時から、追い込まれたときに優しくされると舞い上がってしまう傾向にあります。それはライラに限らずゼノスの時も顕著に出ていますが、シンダー連隊長の元にいたときも実は喜んで尻尾を振っていたわけです。



「どうしてこうも俺は不幸なんだろうな」

→さりげない台詞なのですが、自分が不幸であることをしっかり自覚していることが何だか面白くて、作者の中で彼の台詞ではかなり気に入っているもののひとつです。



「セドナ」

→ライラのトライト家ネーム。この赤毛の女性は現在「エリス」「ライラ」「セドナ」と三つの名前が確認されています。彼女の本名は、そして何故こんなことをしているのかというのはこの作品最大の謎になってきます。そしてティロを名乗るジェイドには彼女のことをどうこう言う資格がないので、今のところスルーされています。余談ですが、この彼女の名前にはある共通点があります。特にヒントになるわけではないのですが、この単語の並びを見てピンと来た方は宇宙がお好きだと思われます。このことを覚えておくと、終盤ちょっとエモいかもしれません。



「暗に泥棒扱いされたこと」

→説明くさくなるので本文で書きませんでしたが、リニアはライラの髪の色を見て「この辺りの人間ではない=どうせろくな育ちではない」と思ったようです。ひどい。



「ティロの懐事情」

→一般兵時代から基本的に給料日→睡眠薬買いだめ(ここで三分の一消える)→痛み止めで遊ぶ(ここで三分の二以上消える)→後は安い酒で誤魔化す(残りわずか)→を繰り返していました。夢も希望も一切ないので、貯金や投資なんかするわけがありません。今回面倒になってわかりやすいギャンブル依存は封印しました。彼は運が最低値なのでギャンブルには手を出しません。確実に安らぎを得られる薬の方が好みであります。ちなみに衣食住は軍隊であるため報奨外で保証されていました。どんなに辛いことがあってもティロがリィア軍にしがみついていたのはこの辺りの事情も大きな要因であります。その辺の決意は亡霊編の最後から一貫しています。



「人のこと言えないけど、あんた私のことどう思ってんのよ……」

→残念ながら、ティロはライラが言葉巧みに男のところを渡り歩いて生きてきたことを知っているので「何らかの詐欺を働く」ことに抵抗がないことを知っています。そしてそれは彼らと同じ境遇の人間なら、ある程度前提として盛り込まれていることでもあります。



「首に提げている小さな袋」

→現在この袋には緊急用の睡眠薬とせっかくだからもらっておいた興奮剤、そして縫い付けてあって容易に取り出せない自死用の毒薬(おそらく青酸カリのようなもの)が入っています。これはある意味で彼の「お守り」であります。「残月」ではこの袋に入っていた薬を服用することになっていますが、今回はこの袋の薬は使わせません。



《第2話》

「軍隊の構造」

→この作品はとにかく話がごちゃごちゃしているので、軍隊の構造を簡略化することを目指しました。雑に「一般兵→ヒラ社員」「執行部→役付き」「上級騎士→エリート」「顧問部→お偉方」くらいでOKです。そういうわけで「総務部」の人は出てきません。きっと頑張ってるはずです。



「こいつは女だからよくわかんないか」

→たまにティロはとんでもない女性蔑視をすることがあります。そしてそれはいろいろ開き直った今後増えてきます。それは男社会で叩き潰されてきたということの他に、彼の生育歴に大いに関係がありますがそれがわかるのはずっと後です。



「やはり女はみな手に職をつけるべきなのよ」

→リニアの参加している婦人会は、基本的にPTAでお菓子を食べながらベルマークを数えている感じの会です。理念や活動方針などは立派ですが、内実はお茶会が中心となっています。実際は家計管理などをするがリニアの仕事でありますが、そういう仕事はやりたくないみたいです。



「末端の上級騎士から興奮剤が手に入りやすい」

→「こちらから言い寄る」のではなく「相手から出向くよう仕向ける」というのは詐欺において有効です。自分の意志で決定しているように見せかけることで、途中で話から降りられなくします。大変悪い誘いです。怖いですね。



「上級騎士内での不祥事」

→現在のリニアは「上級騎士筆頭の妻」がひとつの拠り所であるため、上級騎士隊がどうこうなってしまっては彼女の存在意義が揺らぐことになり、そのため死んでも不祥事を口外しないだろう、というのがティロの読みであります。秘密の共有は連帯感を持たせるのに良いですが、悪用されると非常に面倒ですね。



《第3話》


「鏡で自分の顔など何年もまともに見ていなかった」

→書くまでもないと思ったので本編には書きませんでしたが、髭を剃るときは顎に視線を集中させて顔全体をあくまでも見ないように急いでやっていたのでかなり適当な仕上がりになってました。おそらくそれ以外で鏡を見ることはなかったでしょう。



「王子様」

→正確には「王様の孫」なので「王子様」ではないのです。そこは幼少期に父親から散々叩き込まれたせいか、彼の中で結構重要な線引きになっています。



「私の知ってる人も自分の顔が嫌い」

→事件編を読んでいると、これは誰のことかわかると思います。姉を拗らせて自分の顔と距離をとりたい人とは違って、彼には更に深刻な容貌に関する悩みがあります。事件編では直接話題に出てきませんでしたが、第三部でその辺は詳しくやる予定です。



「どこかで見た顔だくらいは思ってるのかもしれない」

→ザミテスがティロの顔に反応していますが、事件編でも「どこかで見たことある顔」だと思っていることが判明しています。ちなみに、ティロの顔を見て「どこかであったことがある」という人物が他にもいます。探してみてください。



「姉さんも俺も母親似だとはよく言われていたけど、よくわかんないんだよな」

→細かいところなのですが、何故ティロはライラにはこれらを打ち明けているかというと「キアン姓」のニュアンスを彼女は知らないからです。



「どんな結果になろうとも、のうのうと生き延びているということはないと確信していた」

→既に何度も死にかけたり自死の域に達しているティロのことなので、思い通り暴れ回ったら自分のことは自分でケリをつけるつもりにはなっています。事件編でシェールに零していた例の台詞はかなり本気のものでした。



《第4話》

「煙草で気分が大きくなっているティロ」

→この世界の喫煙(葉)事情ですが、庶民感情としては令和の時代の日本で煙草を吸うくらいの感覚です。別に吸っていても悪いことではないけれど、健康に悪いし吸う必要もないから吸わないという人が多いくらいです。だけど人前で堂々と吸い始めた、ということはそれだけで距離を詰めているという証拠にもなるわけです。



「あいつは剣なんかより土でもいじっていた方が幸せな奴だろうさ」

→かなり酷い台詞なのですが、ザミテスとノチアという親子の間にはかなり屈折した感情があり、それはあの本家を含めたトライト家全体の問題だったりもします。そんなのは本来ティロの知ったことではないのですが、それも含めて面倒を見ろというザミテスの指示はかなり堪えたと思います。



「これ以上の関係になることをティロは恐れていた」

→結局ティロとライラの関係はどうなのか、というと現時点では「よくわからない」としか言い様がない微妙なものです。ライラ視点ではただ「心配している」としか出てきていませんが、ティロとしては今後も「可愛い、恋人に出来るならしたい」「でも俺には姉がいるし、彼女もそういうことは望んでいないと思う。どうせ俺死ぬし」というところをはっきりさせておきました。



「ただ死ぬよりも酷い目に合ってもらう」

→直接書けるわけもないのですが、ここでは完全に暴行を働いたということにしておいてください。完遂なのか未遂なのかについては、「今のナシ」というところから察してください。



「素直にすごいって思っている人の方が多いよ」

→確かにザミテスからの扱いは酷いのですが、基本的にティロは優しいのであまり悪い話は出てきません。「剣技がすごくて基本礼儀正しい人、ただしキアン姓でだらしがない」というのが周囲からの正しい評価です。



「うまくみんなと付き合えない」

→他に問題が山積みされているのであまり話題になりませんが、何度も酷い目にあったティロは他人を一切信用できなくなっています。それはライラも例外ではなく、今は彼女の好きにさせているだけであって最悪自分の元からいなくなっても構わないと思っています。だけど、仲良くする心地よさも知っているので本当はみんなと仲良くしたいんです。



「休暇って何すればいいんだ?」

→この時点でティロは自分が休暇という状況になることを想定していませんでした。ティロにとって今までの休暇は「勤務のない日」であり、余暇を楽しむという発想自体がありません。ちなみに剣豪小説(いわゆる漫画)は勤務中の暇な時間帯に読んでいるみたいです。



《第5話》

「全体稽古」

→ものすごーくざっくりしたイメージですが、普通に剣道の大会みたいなビジュアルを想定しています。大会本部があって、あちこちでトーナメントが行われて、試合結果が前に貼り出されて、みたいな……。



「必殺の初撃」

→コール村でゼノスに放った一撃です。剣技の公式な試合において、基本的に初手はまず相手の剣を互いに受けることが前提になっているためいきなり必殺技を繰り出すというのはルール違反ではないですが少々礼儀に欠けたものではあります。しかしエディアの公開稽古あたりでは「勝てばいいんだ、勝てば」の精神で一撃必殺を狙う試合も開催されており、その辺は流派の違いですねというところです。ちなみにこの初撃はティロのオリジナルの技なので技名はありません。もし技名がついても「最初のすごい攻撃」とか「とてもはやいやつ」とかになると思います。



「キアン姓ごときの俺」

→ものすごく微妙な話ですが、こういう場所なのでいくら実力主義でもある程度の忖度が必要になります。一等までならぶっ飛ばせても、流石に軽々と筆頭補佐はぶっ飛ばせない。そういうティロの内心ヒヤヒヤのシーンです。



「夜中に一人で散々鍛錬した必殺技」

→ここまで見てきてわかるとおり、この世界の剣技っていうのは結構権威主義的なところもあるので「今ある型をどれだけキレイに使うか」というところが大きいです。特に全体稽古という公式の場では「いかに型を魅せるか」というのも大事になってきます。そこにこういう無茶苦茶なことをしてくる奴がいると場が乱れるというか、何でもアリになってしまいます。ちなみに実戦あるのみの予備隊でも、こういうよくわからない型は指導者から怒られます。ある意味指導者がいないティロだから、のびのびと新しい型を開発出来たのかもしれません。



「帰りたい、かな」

→全容編で何度も繰り返されてきたティロの一番の願いです。彼はただ家に帰って安心してぐっすり寝たいだけなのです。



「それなら僕の本音も君に伝えておくよ」

→何故リストロがここまでティロの世話を焼いているかというと、単に彼がいい人だからです。もしかしたらジェイドがエディアでそのまま育っていたらリストロのように誰かを傷つけていたかもしれません。だから余計、ティロはリストロが好きではないのです。



「別に剣が好きでもなけりゃこんなの見たって面白くないんだよな」

→ティロによるロイヤルファミリーたちへの感想です。かつては自分が見る側だったので、こういうことを思うのだと思います。ただ事件編を読んでると、このティロの感想に違和感が出るはずです。これは仕様ですので、違和感を持ったままにしておいてください。ちなみに事件編をじっくり読むと、この違和感が別のところにも存在します。それが何を意味するのかは、後々の話になります。



「何故、ザミテスは全日程を同じように行くんだ?」

→これはトライト家関連の事件において重要なポイントです。しかもザミテスは付き人としてティロを一緒に連れて行こうとしていました。一体ザミテスが何をしたいのか、というのは後で本人が教えてくれるはずです。



《第6話》

「金銭管理が一切できていなかったリニア」

→剣士様の家に入るとなると、武家の女のように家のことは取り仕切らないといけません。しかしそのような素養もなく嫁がされたリニアにとって、上級騎士様の妻をやるには荷が重すぎました。



「長年この業界に潜っているティロ」

→本格的に自分で買うようになったのは一般兵になってからですが、ビスキで強盗している頃からそういう情報は集めていたみたいです。事件編を読んでいると、この後ティロが完全にこの業界に染まっていくことが書かれています。



「ティロはザミテスに無理矢理そういう店に連れて行かれていた」

→上級騎士編に入るエピソードなのですが、あんまりな話なのでカットされています。内容としては高級娼婦に同情したティロが「俺も似たようなもんだから」と何やらごにょごにょして、その後本当に身の上話を聞くだけというものです。話の雰囲気としては『万引き家族』のリフレ店のイメージです。もし完全版が出来るなら、是非しっかり書いておきたいエピソードです。



「楽しいか?」

→本来はリニアに一人遊びを命じて言う台詞なのですが、これだけでもティロが何だか楽しそうなのと流石にどうかということで一人遊びはカットされました。もし完全版を出すことがあれば、卑猥な言葉でリニアで遊ぶティロが見られるはず、です。



「俺はてめえみたいな借金女なんか趣味じゃねえんだよ」

→リニアを絶望に突き落とすためのお預け、という見方がこの場合正しいのですが、ティロは基本的に性交自体が嫌いです。その辺りの事情が上記の「そういう店」で詳しく語られる予定でした。しかし、じゃあ特務予備隊編のアレとかこの前のライラとのソレとは一体何なのか、というのは今後大問題になってきます。彼の性に対する問題は、姉煩い以前に実はかなり深刻なものになっています。



「これ以上下手に動けないとリストロが判断するほど、ティロは殺気を放っていた」

→特務予備隊編で「子連れの母熊」と表現されるくらい無自覚に殺気を放っていたティロなので、本気で威嚇のために威圧したら上級騎士とはいえかなり怖いと思います。



《第7話》

「俺も旅行に行く!」

→ティロは肉体的な面や知識などは年相応ですが、たまにひどく幼い言動をすることがあります。それは災禍にあった時から精神的に成長出来ていないからで、基本的に酷い目にあって育ってきた登場人物にはその傾向があります。予備隊でシャスタが最初の方で不適合を起こしていたみたいな話です。事件編でシャスタの来歴は明らかになっていますが、彼も不遇な人生を歩んでいます。その辺りはそのうち、どこかで話してくれると思います。



「反省部屋」

→実はプロット段階では自室で待機というゆるゆる処遇だったのでアレコレできた、という話だったのですが流石にそれはどうか、ということで反省部屋に入ってもらいました。ただ上級騎士を務める意識の中で「三階の窓から抜け出す」という選択肢がなかったのがラディオの敗因です。



「懲罰房行き」

→特務予備隊編では描写しなかったのですが、三日ほど穴の中に閉じ込められるということは衛生的にもかなり厳しいものがあります。それも込みでの罰ですので、どれだけこれが厳しいものだったのかは想像してみてください。



「予備隊出身を舐めるなよ」

→当初はそんなつもりじゃなかったけど、とっても便利すぎた予備隊設定。壁登り、山登り、隠密行動、変な知識量。予備隊様々です。



「やっすい恋愛小説」

→剣豪小説は片っ端から読んでいたと思うティロなので、たまには恋愛小説も読んでいたと思われます。そして「くだらねえ」って投げ捨てるまでがワンセットです。



「お前、本当はすごい奴なんだろう?」

→結構露悪に振る舞ってるつもりでも、根っこが良い育ちなのは隠しきれないところがあります。「こいつはちゃんとやればできる奴だ」というのがティロに関する周囲の相違ない見解で、彼を煙たがるのは椅子が少なくなると困る人たちです。



「今はお前の考えが一番だからな」

→ティロを尊重しているような台詞ですが、ラディオやリィア軍全体の見解としては「本人がいいって言うならいいよ」くらいの話です。本気でティロを重用しようとするなら「謹慎が終わったら見合いをするぞ、これは命令だ」くらいの勢いになるので、やっぱり基本的に扱いを面倒くさがっているところがあります。



「せめてこれからどうすればいいか一緒に考えてやりたい」

→基本的にラディオは合理性を重んじるので、本来の器に不釣り合いな振る舞いを続けるティロに違和感を抱き続けています。ここで何とか教育し直すことができれば(業務的に)そばにいてほしいと思っています。ゼノスが剣士の直感でティロを見いだしたとすれば、ラディオは日頃の行いを見てティロが有用だと思っています。



《第8話》

「誰も知らないところへ行く」

→何故クライオなのかと言えば、リィア国内であれば最悪ティロのことを知っている一般兵と遭遇する可能性があります。しかしクライオへ行けばその心配はなくなります。どうせ通行証ナシで移動するなら国外へ出ても一緒、というのがティロの理屈です。ついでに亡命者を匿ってくれそうなツテもあるとくれば、渡りに船です。



「『トライト家のお嬢様はビスキで楽しんでいた』って証拠にもなるだろう」

→この辺りは全体的に「何故回りくどい計画を立てたのか」という問いの答えになってきます。いろんなことが積み重なって当初の計画に綻びが出たところを継ぎ接ぎした結果が、あの誘拐劇というわけです。だから事件編でどう思われていたかよくわからないのですが、ティロは内心「やべーなーこれからどうすっかなー」の連続だったわけです。その辺はこの後じっくり書かれることになります。



「全てはライラのせいだとティロは思っていた」

→この誘拐に始まる復讐劇、企画立案実行犯こそティロなのです。しかし、ライラがトライト家に入ってまでティロをかき立てたのが最大の理由なのでやっぱり基本的にはライラのせいです。



「ティロの薄い自負」

→彼はプライドが高いのか低いのかわからないところがありますが、基本的に誇り高い生まれなので普通の人よりプライドは高いです。しかしそのプライドは解体工場でプレスされてしまっているので質量はあるけど薄くなっているという面倒くさいことになっています。



「リニアからむしり取った金額は既にトライト家の財産分では収まらない額になっていた」

→これでトライト家はどうやって生活しているのかと言えば、リニアの借金で何とかやっています。ノチアも家の財政難に気がつき始めましたが、父がいないのでどうすればいいのかわからず、とりあえず父の帰りを待とうという方向性でいます。最悪ですね。



「シェール・アルフェッカ」

→全容編では初の、そして事件編以来の登場です。ティロ以上に挙動が怪しい人その2なのですが、彼がなんでセラスだけでなくオルドの精鋭たちに守られているのかというのはまた別のストーリーがあり、オルド攻略において亡くなったシェールの妹やセラスの死んだ兄さんたちが大いに関係してきます。セラスの兄さんは事件編のおまけifでちらっと出てきたので、覚えておいてもらえると嬉しいです。



「ビスキ復興同盟」

→ビスキにある反リィア組織。ビスキに関しては他の国よりかなり複雑で、長らく革命思想を元にした過激派たちと内戦状態にありましたが、そこに革命思想を狩るリィアがやってきて国家と過激派ごと駆逐したといういきさつがあります。つまり反リィア組織の人は元のビスキ国家の残党ということになります。



「素敵な王子様」

→ちなみにリィア国の王子様はこのとき16歳のセイムと12歳のフォルスですので、15歳のレリミアとどうにかなってもおかしくない年頃です。彼女も少しこの2人を意識していたかもしれません。



「赤毛の若い女が立派な馬車など買うことができない」

→リニアの対応から、まずこの辺りでは赤毛の人物に対する信用がありません。しかも若い女です。なんでここでシャイアがライラの頼み事をホイホイ聞くのか、というのもライラという人物を見ていく大事な視点であります。



「それじゃあ、領収書にサインを」

→リニアからむしり取られた金をティロがライラに預け、その金を「ザミテス・トライト」名義で使うという変な金の動きがあります。資金洗浄もかくやという感じです。



「孤児院の建設のためのカンパ」

→婦人会での慈善事業、ということになっていますがその金はどこへ消えたのかというのは事件編で明らかになっている通りです。特にこれが決定打となり、トライト家の本家の人たちは積極的にザミテスたちの行方を探れませんでした。ザミテスが帰ってきたら被害者ヅラが出来ないので。



「懐状況のよくわからないトライト家の娘が豪華な旅行に行くということが許しがたい」

→使用人の給料が未払いなのに娘は観光地へ旅行に行くって、なかなか人を舐めたことになっています。これはティロの想定の範囲外でしたが、結果としてトライト家の信用

が落ちた結果ザミテスの捜索が本格的に行われなかったことの遠因になります。



「もしかしたら強い敵が出てくるかもしれないからな」

→いきなり変なことを言い始めていますが、基本的に剣豪小説思考なので新しい場所に行く=強い敵が出てくるという思考回路になっています。中身は本当に子供です。



《第9話》

「じゃあ、行ってきます。姉さん」

→事件編において彼の第一声がこれなのですが、この言葉に纏わる背景が加わると重いというか、何とも気持ちの悪いものだということがわかると思います。決意とかそういうのではなく、彼は常に鏡の中の自分の姿に姉を重ねた末での発言です。



「この認識票を捨てる時」

→果たしてそんな日は来るのだろうかということですが、一応彼はこの後事件編で明らかになっている通り「レキ・ラブル」という偽名になる予定です。その辺りで「ティロ・キアン」とどう折り合いをつけるのかはその時に明らかになります。また、事件編で最後に登場する「彼」は既に「レキ・ラブル」を名乗っていません。便宜上は「ジェイド」と呼称されていますが、精神面では「亡霊編」の極限状態の名無しに戻っています。



「祈る、とは随分子供じみたこと」

→この世界は宗教的な神の存在が一度消えていて、一般的に残っているのは七夕の短冊に願い事を書くくらいの「祈り」です。ここでレリミアが「お祈りしていたんだ」というのはティロにとっては「サンタさんにプレゼントをお願いしたんだ」くらいの感覚です。ちなみにティロは予備隊時代に一生懸命背が伸びるよう願っていましたが、特に期待した結果が出なかったので「祈り」の効果はないと思っています。



「私も手綱くらいとれますよ」

→6頭立ての馬車の運転が出来るのか、といえば多分ライラは出来るんじゃないかと思います。そういう男と一緒に過ごしたことがあったのでしょう。



「もう乗り物の話はやめてくれ!」

→地下恐怖症よりまだマシですが、乗り物全般もティロはかなり苦手意識を持っています。閉所恐怖症を拗らせているので狭い客車が大嫌い、というのもありますがそれ以外にも深刻な理由があります。これに関しては相当根深い問題になっているので、まだ明らかになりません。



「いつか機会があったら、ティロ本人を探し出したいとは思っていた」

→本物のティロ・カルディアについては有明編で明らかになっている通りです。そんな機会が巡ってくるのかと言えば、一応全容編でジェイドは『残月』を回避して再び皆の前に現れるようになるので、セラスたちと改めてティロの墓参りに行くというイベントも起こるかもしれません。



「今でも自分が生きているかどうか本気でわかならい」

→これはジェイド/ティロという人物の根底に流れる感情です。未だに彼の根本は「カラン家の次期当主」で、その魂は死んでいるけれど身体は別人として生き続けているという不思議な感覚の中で生きています。このズレが全ての拗らせの根源でもあります。



「レリミアを殺すことは計画の中に入っていなかった」

→事件編では「レリミアにナイフを渡すことによってその場の人間の命を好きにさせる」というやり方をとっています。この原則は全容編でも変わりません。その代わり、ザミテスの供述が追加されますので結末はかなり違ったものになってきます。



「だってティロ、優しいじゃない」

→レリミア本人もうまく言えないのですが、ティロは客観的に見れば本当に優しい奴です。それはリストロも指摘していますが、わかっていないのは本人ばかりです。この天然の人垂らし要素があるから、ある意味彼は苦労しています。



「名前で呼ぶな、ということは身近な人にはよく頼み込んでいた」

→そもそも自分の名前ではないのであまり呼ばれたくないし、他に思い浮かばなかったからという雑な理由であるのも本来のティロに大変申し訳ないという思いがあるようです。彼の困難の一因にはこの変な自意識が存在しています。



「16年だ」

→事件編とこの全容編において、かなり意味の変わってくる言葉のひとつだと思います。具体的にザミテスが何をしたのかはまだ明らかになっていませんが、少なくともティロの何らかの根幹に関わる部分をザミテスが毀損していることは間違いのないことです。それは生き埋めにしたことの他にもうひとつありますが、それは今後の復讐で明らかになることです。


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