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救世主症候群シリーズ解説文置き場  作者: 秋犬
【絶望ノワール2】救世主症候群・全容編【閲覧注意】
10/14

亡霊編あらすじと解説文

〇亡霊編あらすじ


 エディアを出た少年は誰にも頼ることなく、ビスキに流れ着いて何とか生き抜いていた。ナイフを手に入れた少年は強盗を繰り返し、奪った鞄に入っていた煙草を吸って苦痛を和らげ、頭の中の「友達」に話しかけることで孤独を和らげていた。


 少年は煙草を求めて強盗を繰り返していたが、ある日強盗に失敗して逃げる途中に足を痛め、逃走には成功したがその場から動けなくなってしまう。更に雨も降り始め、飢えと寒さに苦しめられる。雨が上がってようやく動き始めた少年を不審がった警備隊員に声をかけられ、追い詰められた少年はナイフで警備隊員を攻撃する。


 取り押さえられた少年は警備隊の詰所に連れて行かれ、今までの強盗について取り調べを受ける。少年の追い詰められた状況を見た監察官により、少年は静養が必要と判断されて病院送りになる。その途中で声が出ないことや閉所恐怖症の発作、不眠による精神的摩耗により自分が相当惨めであることを少年は再確認し、絶望に陥る。


 少年は特務予備隊に引き取られることになり、少年はビスキからリィアの首都へ身柄を輸送される。予備隊で久しぶりに剣を握った少年は声を取り戻し、再び生きる気力が沸いてくる。


 予備隊で32番と呼ばれた少年は陰湿ないじめを受けるが、懲罰房を恐れて騒ぎを起こさなかった。しかしロッカーに閉じ込められるいじめを受け、閉所恐怖症の発作で倒れてしまう。何度も繰り返されるいじめに我慢の限界を超えた少年は懲罰房を覚悟でいじめっ子に反撃する。結果として騒ぎを起こしたことに間違いはないが、閉所恐怖症という事情などを考慮されて3日間の食事抜きの謹慎に変更される。


 命拾いをしたと思った少年の元に、初めて剣技の手合わせをした少年がやってくる。彼はシャスタと名乗り、少年に名前を尋ねる。苦し紛れに彼は「ティロ」と名乗り、予備隊での彼の生活が始まることになる。



○キャラ動向


(ジェイド)/ティロ(9)

 実は彼、例の件以降地の文でも名前で呼んでもらっていません。警備隊員に捕まるまで、彼はずっと存在をなかったことにされて生きてきました。つまりこの章はほとんどティロは「名無し」に近い存在です。なお、有明編でも書きましたが基本的に解説では「ティロ」と言えば彼を指すことになります。エディアの災禍で亡くなった彼を指す場合は「元ティロ」などわかるように明記されます。そしてこれ以降しばらく彼は地の文でも「ティロ」と呼ばれていくことになります。


 この頃から煙草欲しさに悪いことをやっていたようです。何故彼が盗みをするようになったのかについては現時点では「徹底的に人目を避けるため」というのが彼の中での答えですが、他にも理由があるみたいです。それが明らかになるのはおそらくずっと後です。


 そしてようやく予備隊に放り込まれていじめられて「ティロ」と名乗ることを決めます。事件編ではかなりさらっと流されたのですが、彼の心境を知るとかなり切実な事情がありました。利き手に関しては彼にとってこれから大事なことになってきます。



テレス・コビア監察官

 全容編で名前は出てきませんが、事件編では野良犬状態で威嚇モードに入っているティロを間近に見たとして話が聞けます。ティロ視点では彼の名前どころではないので完全に「男1」になってしまいました。



クロノ・キアン教官

 特務予備隊の教官にして、ある意味ティロの保護者のような人物。合理的に物事を考えて規律を重んじますが、基本的に慈愛に溢れています。事件編から読んでいる方ならわかると思うのですが、彼女はキアン姓ということで典型的な予備隊っ子です。リオの例もある通り、特務には女性がまあまあいます。取り調べなんかも女性であるだけでかなり有利に運ぶことがあるらしいですが……?



29番/シャスタ(9)

 事件編では何が何だかよくわからない奴でしたが、全容編では何故彼がティロにあそこまで執着したのかというのもじっくり書かれます。何故ならこれはあらすじにある通り「友達」の話だからです。


 これは裏話ですが、最初彼はただの幼馴染み枠でどちらかというとリオの方が出番が多かったくらいです。しかし、いろいろキャラが二転三転していくうちに「こいつはかなりヘビーな奴なのでは」ということでとことん変な奴になりました。



○内容解説


《第1話》


「空白期間、どうやってビスキに行ったの? 友達2って何!?」

→実はティロがどうやってビスキへ渡ったのかについてはここでは明らかになりません。この件に関しては徹底的に話したくないようです。そして説明なしでいきなり登場した「友達2」なのですが、彼の正体や何故登場することになったのかについてもおそらく話したがらないと思われるので、彼の気持ちが落ち着くのを待ちましょう。ただ、「友達1」のモデルが明らかに彼であるように、「友達2」にもモデルが存在します。それは剣都編を読めば大体わかると思います。



「いつの間にティロは盗みを覚えていたの? 左腕はいつ治ったの?」

→剣都編でのティロを見ていると、何故こんなところまで落ちぶれているのか繋がらないと思います。彼が盗みを覚えるに至った経緯もまだ明らかになりません。また、亡霊編の冒頭は彼の腕がある程度動くようになってからの話になります。その間一体どこで何をしていたのかというのは事件編でも少し触れていましたが、彼曰く筆舌に尽くしがたい何かがあるようです。現段階ではいろいろ想像してみてください。



「煙草・痛み止め・睡眠薬」

→繰り返し出てきますが、この作品で単に「煙草」と出てきたらそれはこっちの世界ではリネン製の何かです。ぶっちゃけ大麻です。痛み止めはアヘンから生成したモルヒネみたいな奴です。煙草や痛み止め、多量のアルコールなどは下層の人間の逃げ先と上流階級では忌避されます。唯一アヘンから生成されているけど睡眠薬だけ薬として使用が黙認されている、という感じです。



「着火器」

→要はライターです。この道具はこれから先頻繁に登場します。一応仕組みとしては現代で我々が使っているものとさほど変わりがないので、燃料が必要です。



「革命家」

→この煙草屋の主人は革命思想の組織との何らかの繋がりがあったようです。簡単に言えばテロ組織の連絡要員です。引っ立てられても仕方ないことはやっています。



「特務隊員」

→事件編ではあまり特務の働きぶりが出てこなかったのですが、具体的にこんなことをやっていました。次章ではもっと具体的なことが出てきます。



「自分会議」

→頭の中で自分に話しかけて自分で答えるというかなり不気味な光景なのですが、これはティロがこの状態に折り合いをつけるまでずっと続きます。非常にみっともない行為だということは彼もわかっているのですが、何重にも存在を全否定されて崩壊寸前の精神を保つために彼はしばしば自分会議を開くことになります。何故わざわざ声に出しているのかというと、あくまでも会話が目的なので「友達」に答えるために彼は発声しています。今後、この自分会議は定期的に開催されていく予定です。



《第2話》


「何を言っているかわからない」

→これから殺されるかもしれないという極限状態のため、完全に心を閉ざしているティロが目の前の人の話をまともに聞いているとは思えないというのと、単に空腹と睡眠不足でふらふらで何を言っているのか聞き取れないという状況です。これは作者の体験談ですが、マジで体調不良になっているときは他人が何を言っているのかよくわかりません。「今からね! 移動するからね!」と耳元ではっきり言われてやっと救急車に乗せられます。そのくらい彼は追い詰められているということです。



「3日ぶりの食事」

→事件編では手が止まったのを許可を求めていたのではとテレスは想像していますが、ティロとしてはかなり切実な心境でした。とりあえず睡眠(気絶)と空腹が何とかなったため、以降彼の聴覚と思考は幾分かまともになります。



「放っておいてください」

→事件編で「几帳面な字」というのがありましたが、ここでティロはただの野良犬ではなくしっかり教育を受けていたというのが暗示されています。ちなみに後で出てきますが、彼にしっかり字を教えたのは姉でした。



「睡眠薬」

→ここは事件編と照らし合わせてわかることですが、テレス監察官はティロの異様に追い詰められた状況や医務室での落ち着きのなさなどから、煙草欲しさに売り場の近くで強盗を繰り返していたことを見抜いていたようでした。しかし、予備隊に放り込まれたことで煙草とは縁が切れると思ったんでしょう。実際に予備隊にいる間は絶対煙草は貰えないのでそういう欲求からは大分遠ざかったようでした。



「声が出せない」

→実際に強いショックを受けると失声症と言って一時的に声が出なくなることがあります。また、特定の場面のみで声が出せなくなる場面緘黙というものもあり、ティロは自身の正体が露見することを非常に恐れていたために大人に対してだけ声が出せなくなっていました。しかし、自身のアイデンティティのひとつである剣が復活したことにより声を取り戻すことができた、というわけです。



《第3話》


「乗り物に乗れない」

→周囲も本人もこれは閉所恐怖症の一環だと思っているのですが、あくまでもこの時点でティロの恐怖症の対象は「地下」です。乗り物に乗れないのは何故かというのは、そのうち明らかになるかもしれません。



「強制入院」

→これは裏話ですが、当初はこのまま詰所から予備隊に直行していましたがここまで肉体的にも精神的にも追い詰められていたら医療的な措置が必要なのでは、という作者判断での措置です。ついでにティロの心の整理も兼ねています。足の捻挫はもちろん、おそらく慢性的な栄養失調に加えて睡眠不足による精神的な摩耗がかなりありました。この時点で保護した側は「腹一杯になって十分休めれば心を開くかもしれない」という算段もあったことでしょう。



「死ぬより酷い目に合わせる」

→この台詞、事件編でもとある場面で登場します。ちなみに特務の人たちはこの台詞が大好きです。そしてリオがティロを見つけたらどうする? という場面でもかなり残酷なことを言っています。彼らは根底に「死ぬより酷い目に合わせる」ということを刷り込まれているのです……。



《第4話》


「面談室」

→何故ここが3階にあるのかと言えば、大体ここを使用するのはろくでもない騒ぎの後なので、安易な逃亡を防ぐためです。ある種の予備生は3階まで簡単に壁を登ってきたりするのですが……。



「鼠みたいな仕事」

→要はリィア軍のスパイなので鼠です。そしてスパイなので事件編でもさらっと出てきましたが摘発はもちろん、拷問や処刑もやります。第1話で出てきた特務の「お前の名前を叫んでいたぞ」という言葉は、拷問の末の告発です。



「父さんの型」

→事件編でゼノスが「エディアの型と言われれば自信がない」というようなことを言っていましたが、厳密に言えばティロが修めているのはエディアの型というよりデイノ・カラン直伝のカラン家の型でした。もちろんエディアの型もやればできるのですが、この父の型は少々特殊なようです。



「俺、剣がないとやっぱりダメなんだな」

→ここも事件編でさらっと流されていたのですが、ティロにとって声を取り戻せたのは非常に大きな出来事でした。ひとつ自分を構成しているものと再会できたことはとてつもない安心を彼に与えたようでした。



「うちに帰りたいな」

→元々彼には立派な家があったので、これから先もずっと家に帰りたいと願っています。そう言えば事件編では散々「帰らない!」と騒いでいる人もいましたね……。



《第5話》


「ロッカー事件」

→実はこのロッカー事件、事件編でも触れられたとおりに予備隊内でも非常に問題になって、それから教官の監視の目が増えたという顛末に繋がっています。それと、実はティロの存在自体が予備隊に大きな影響を与えているのですが、それはこれからのお楽しみです。



「ほぼ刑務所」

→探求編でも触れていた通り、予備隊は実質触法少年の溜まり場です。基本的に何かやらかしているか素行が悪すぎるかでここにぶち込まれています。具体的にどんな子供がいるのかというのは次章で触れる予定です。



「元から背が低い」

→エディアにいる頃は多少背が低くてもカラン家の威信があったのと、成長期に伸びるだろうという余裕があったのでそれほど問題にはなりませんでした。ただ予備隊に入れられた場合、明らかに身長が低いのはネックになって目をつけられる要因になります。そして事件編でたまに「小柄」と評された通り客観的に見れば「言われてみれば背が低いね」くらいに何とか成長するのですが、彼自身は身長以外にも見た目に関してかなりコンプレックスを抱えています。



「やられる前にやる」

→剣都編では「相手が動くより先にもっと速く動く」と言っていました。以降彼の大原則になります。



「シャスタ予備隊入って数か月で壁登りできるのすごくね?」

→事件編で少し明らかになっているのですが、彼の壁登りの技術は予備隊で身につけたものではありません。そして剣技も予備隊に入る前に随分とやっていました。そんなに詳しくもありませんが、その辺はとりあえず事件編を読んでください。




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