パン対決、再び!~炎のモニカ、パン屋ユウトに挑む~
「ユウトォォォォォォ!!」
朝のパン屋ユウトに、火山のような声が響き渡った。
「……ん? なんの騒ぎ……?」
ユウトが窓の外を覗くと、広場の真ん中に、派手な赤いマントを翻した女が仁王立ちしていた。
「……モニカか」
先日のパン祭りで、チリまみれのパンで審査員を撃沈させた張本人、炎のパン職人モニカ・フレア。
「聞いたわよ! あんた、太陽のパンで優勝したんですって! 悔しさで三日三晩、パンに火を吹かせ続けたわ!」
「いや、それ焦げてるだけじゃ……」
「というわけで! リベンジマッチよ、ユウト! パン屋同士、真の焼き腕を決める戦いを、ここに!」
「……なんでうちの前で叫ぶんだろう」
ユウトがぼやく横で、ミレナが手を叩く。
「やろうよ、パン対決! パン屋ユウト、負けるわけにいかないよ!」
「乗り気なの!? てか、対決って何するんだ……?」
そこへ、しゃべる石窯・グラムが静かに口を開いた。
「ふむ……面白そうじゃないか。俺の火加減を、真に試す時が来たようだ」
「ノってる!?」
「ま、受けて立つよ。パン屋だし」
ユウトはやれやれと肩をすくめ、エプロンの紐を締め直した。
「じゃあ条件は?」
「テーマ食材を決めて、それでパンを焼く。制限時間は昼まで。審査は、食べた人の笑顔の数で勝負よ!」
「ざっくりしてるけど、いいよ。で、テーマは?」
「これよ!」
モニカが取り出したのは——なんと、大きなかごいっぱいのサツマイモ。
「テーマはいもよ! 甘さとほくほく感、それでこそ勝負パンの素材!」
「……秋を感じるな」
ユウトは頷き、にっこり笑った。
「よし、勝負だ」
====
「よーし、まずは蒸かし芋っと……それをこねた生地に混ぜて、優しい甘みのほくほくロールだね!」
ユウトは淡々と準備を進めていく。
一方その頃モニカは——
「刻んで! 炒めて! カラメリゼして! 唐辛子と合わせて! 超刺激系いもファイヤーブレッド!!」
「うわ、また辛そうな……!」
「炎こそ我が命!! 芋だって爆発できるんだから!!」
セレスティアが遠巻きに見守る中、ミレナはノリノリで実況を始めていた。
「さあ始まりました! 芋を制する者は秋を制す! しっとり甘い派か、刺激で突き抜ける派か! 今回の勝者は誰だ〜〜!?」
「誰に実況頼んだんだよ!」
====
そして昼。
広場に並べられた二つのパン。
ユウトの「芋ロール」と、モニカの「ファイヤースイート・バズーカ」。
「いただきまーす!」
村の人々が次々と試食する。
「うわ〜、やさしい甘さ……おばあちゃんの味って感じ……」
「しみじみ美味しい……」
ユウトのパンに、笑顔がぽつぽつ広がっていく。
一方モニカの方は——
「ひいぃぃぃぃ!? 辛い!? でも、あと引く!? なんだこの味わい!? 芋って爆発するの!?」
混乱と衝撃と、なぜか笑いが起きる。
「クセになるなこれ!」
「これが……炎のモニカか……!」
気がつけば、笑顔——というか、驚きと興奮の混ざった表情が広がっていた。
====
そして、審査結果。
ユウト:21人の笑顔。
モニカ:22人の衝撃笑顔。
「……負けた?」
「ふっふっふ。勝負は情熱と唐辛子よ!!」
モニカが高笑いすると、ユウトは苦笑した。
「まあ、楽しかったからいいけどさ」
「……うん。これが、パン対決か……」
セレスティアがしみじみとつぶやいた。
その時、グラムがぽつりとつぶやいた。
「……俺の火加減、最高だったけどな」
「うん、それは間違いないよ」
====
その日の夕方。
モニカは再び風のように去っていった。
「また挑みに来るわよ、ユウト! その時までに、もっと旨いパン、焼いときなさいよね!!」
「こっちもレシピ磨いておくよ」
「まったく、あの人……」
ミレナが笑い、セレスティアがうなずく。
「でも、モニカさんのパン、なんか元気出ました……」
「パンって、味だけじゃなくて気持ちも焼き込まれてるのかもな」
ユウトのその言葉に、グラムが小さく火をゆらめかせた。
「……パンってのは、そういうもんだ」
こうしてまた、パン屋ユウトにはいつもの穏やかな日常が戻る——