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◇6

 それからというものの、私は一足先に荷物をまとめて執事さんと一緒に首都にあるオデール大公家の邸宅に向かうこととなった。荷物、と言っても大きなケース一つくらいの量。


 執事さん達が服やら何やらと向こうの邸宅で用意してくれるみたい。ウェディングドレスと一緒に作ってくれるみたいで、着いたらすぐに採寸するらしい。


 もう何が何やらでよく分からず言われるがままである。一体この後どうなるのやら。


 お父様は、今回持ってきてくださった食糧を領民達に配ったりとで処理してから、私達を追いかけるように首都に来て、結婚式に出席するらしい。



「申し訳ございません、ウェディングドレスはこちらでデザインを選んでしまいまして……」


「あ、別にいいですよ。私が選ぶと田舎くさいものになってしまいますし」


「ありがとうございます。ですが奥様、貴方様はこれから大公家の夫人となられる方です。田舎出身だから、などという言葉はお使いにならないようお願いいたします。大公夫人として堂々といてください」


「あ、はい、すみません」


「使用人に敬語など必要ありませんよ」


「……うん」



 私、やっていけるのかしら。


 なんて思いつつ、長い旅路を進んでいったのだった。



「……ここ、なの?」


「えぇ。むしろ素朴な宿で申し訳ありません、奥様」


「あ、いや、大丈夫……」



 いや、私が大丈夫じゃないから。今日泊まる宿です、と言われて馬車を降りたら……何このセレブ級のホテルは。いや、そもそもこの異世界にこんな高級ホテルがあること自体が驚きだわ。


 当然私に用意された部屋は高級感ありありのスイート級。ここ、私使っていいの? 本当にいいの? あとで実家に請求されない? 大丈夫?



「……やば」


「奥様」


「……まぁ、なんて美味しそうなのかしら」



 目の前に並べられた、とっても美味しそうな料理達。光ってるよ、輝いてるよ。ごめんなさい、お父様、レオ。一人だけこんなにいい思いさせてもらって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


 ……うまぁ。やばい、すっごく美味しい。幸せ~♡


 もしかして、これからこんなに美味しいものずっと食べれるってこと? え、まじ? そんなの幸せすぎるっ!


 私の旦那様がどんな人か分からないけれど、こんなに美味しいものが食べられるなら文句なしねっ!


 ……え、何このお肉。すっごく分厚い。え、これ食べていいの? 高級肉でしょこれ。切った時のこの肉汁! うわぁ、美味し~♡


 あぁ、なんて素敵なお料理達なの……今はこの幸せを噛みしめよう、うん。



 そうして何度か宿を挟んでようやく首都に、そしてオデール大公邸に無事到着することが出来た。


 とりあえず、顎が外れるかと思った。



「……やば」



 繊細で大きな門、その先に広がる素敵なお庭、そしてその奥に見えた、煌びやかで、かつ存在感抜群の大きな邸宅。


 私、ここで暮らすの?



「ようこそいらっしゃいました、奥様」



 両脇に並ぶ、使用人達。私に頭を下げてくるけれど、ただいま私の頭の中は混乱中です。これ、どうしたらいい?



「……これから、よろしくお願いします」



 と、しか言えなかった。敬語は使うなと言われたけれど、無理だった。



「奥様、まずは採寸ですよ。こちらにどうぞ」


「あ、うん」



 邸宅に入り、されるがままに部屋に移動させられる。部屋に入ると、そこには……白いドレスがあった。これは、ウェディングドレスというやつか。


 いや、豪華すぎでは?



「いかがでしょうか、奥様」


「私には、十分すぎると、思う……」



 うん、こんなもの着られるなんて、一生なかったはずなのに。これ着ていいの? 一体いくらしたの? めっちゃ上等の生地じゃないこれ。しかもなんか色々と付いてるし。まじ?


 そのまま、あーれーとお人形さんのようにいいようにされて採寸終了となった。



「あらまぁ、奥様はだいぶ細くいらっしゃいますね」


「……」


「少し肌が焼かれているようですから、メイクの時に対処しましょうか」


「水色の髪がとても素敵ですわ。この髪飾りがとてもぴったりかと思います。いかがですか?」


「……任せるわ」


「かしこまりました」



 も、もう私は分からない。限界です。


 なんて事がありつつ、礼儀作法チェックに今回の結婚式の手順を叩き込まれたりと色々とやる事が満載だった。



「とても素敵ですわ。これなら礼儀作法の指導は必要ありませんね」



 ……そりゃあ、頑張りましたから。スペシャリストのばぁやに叩き込まれたからね。舐められたらそこで終わりですよ、お嬢様。と言われてだいぶ頑張ったもの。これは努力と涙と恐怖の賜物なのだから。私、頑張った。


 結婚式の方は、思ったよりもこぢんまりとしたもので招待客も絞ってのものらしい。とは言え、教会はすごいところらしいけど。ほら、この国の王族達の結婚式でしか使わない所らしい。


 あんれまぁ……とは思ったけれど、そういえば私の旦那様は国王陛下の甥でしたね。わぁ……すごっ。



「……ここ、で、寝ていいの?」


「えぇ。旦那様と一緒にお使いになるお部屋ですから」


「……とっても素敵なお部屋ね」


「気に入ってくださって光栄です」



 おっきなベッドがある寝室。ソファーにローテーブルもあるけれど、本当にいいの?


 あ、やばい、飛び乗りたくなってきた。何このおっきなベッド。


 でも、旦那様ってまだ帰ってきてないんだよね。結婚式当日に到着するらしいから、まだ顔は合わせられないって事だよね。


 ……じゃあ、このベッド私が一人で使っちゃっていいのよね。……よっしゃあ!



「せーのっ!」



 大きくジャンプして、思いっきりベッドにダイブした。


 ん~~~! すっごくふわふわ! 最高!


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